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Category: 人工知能

2018年はディープラーニングの光と影が明確になる年

テック業界の2017年は、振り返るとディープラーニング(AI)、仮想通貨(ICO)、宇宙、量子コンピューターあたりが大賑わいの年だったんじゃないでしょうか。

2018年は、表題の通り、ディープラーニング(以下、DL)の光と影が明確になる年だと、個人的に予想してます。最近、会社のブログでも同様の記事を投稿したんやけど、業界の専門誌はもちろん、日経新聞などの一般向けメディアでも既にDLの「影」の部分へのフォーカスが始まってます。

仮想通貨、宇宙、量子コンピューターに関しては、人間の欲望と、分からないものに対する憧れがある限り、まだまだ伸びると思いますが、残念ながらDLについては、いよいよハイプの限界に達したというか、ようやくDLが万能ではないということに、企業や経営者が気づき出しました。

そもそも、DLはデータ解析・予測の手法の1つに過ぎず、それ自体がフォーカスされることに前から違和感があったんやけど、今年は「○○社が、XXの用途でディープラーニング(AI)を採用」と、DLを採用したことだけでニュースになってしまうような1年やった気がします。

よくよく考えると、なんでもかんでもウェブ化するだけでメディアに取り上げられていたWeb1.0の時と同じ臭いが、いまのDL周辺にはするわけです。「○○社、ドッグフードをインターネット経由で販売する画期的なビジネスを立ち上げ」みたいな記事の見出し、昔ありましたなぁ。懐かしい。

DLの最大の課題は、なぜそのような結果になるのか、DLを設計した本人ですら説明できないところです。つまり、DLが出した結果が、人間にとって解釈不可能であることが問題の原因です。

現在は、この課題を意図的に隠している、もしくは顧客に説明しないベンダーがDLを企業に提案してしまっているため、最終的にビジネスの現場にDLが定着しないケースが頻発しています。

このようなDLの導入失敗事例は、2018年、もっとたくさん出てくると思います。一方で、それらの失敗事例がメディアで広まるにつれて、企業側にも「本当にこの課題解決にはDLが最適なのか?」を自問自答するような流れが生まれてくると考えてます。

DLという技術だけ、予測モデルの精度だけをウリにしているベンチャーは、これから凄い勢いで淘汰されていくはず。企業の経営者の観点からすれば、自社のデータを使ってコストダウンや売上アップを達成できれば、その手法はなんでもよいわけです。

むしろ、企業が必要としているのは、目の前の課題を解決するための最適な手法を提案してくれて、ビジネスの現場に導入した後、成果がでるところまでをナビゲートしてくれるパートナーやと思うんですね。

これから伸びるAIベンチャーは、企業が持ち込んできた課題に対して、「それをAIで解決することが、本当に御社のビジネスにとってプライオリティが高いことですか?」と、半ばダメ出しに近い意見を出せるところではないでしょうか。

ちなみに、これをAIベンチャーの立場で言うのは、なかなか簡単なことではないです。目の前の案件を失注することになりますんで。

AIによって業務の効率化を希望する企業に対して、その業務を自社でやる必要がありますか、アウトソースでもよくないですか、と提案してもいいわけです。いくら企業が望む課題をAIで解決したところで、ビジネス上でのインパクトがなければ、遅かれ早かれ、導入したものは使われなくなります。

いまは、データサイエンティストと呼ばれる職種の給料がえらい金額になってますが、これは世の中が「手法」を作れる人に対して、高い価値を見出してしまっている結果やと思います。ただし、手法しか顧客に提案できない人は、要するに仕様書通りにコードを書くことしかできないプログラマと同じなので、これから市場価値は急速に下がると思います。

本当にこれから価値が上がる人材というのは、データを読み解く力があるビジネスマンであることは間違いないです。企業がもつデータをばっと見渡して、ビジネス上で最もインパクトのある課題を抽出し、データでもってその課題を解決する。しかも、導入したものを定着させるには、導入される側の部署なり担当者に納得して使ってもらわないといけない。これって、もう人間力の世界です。

実は、データサイエンティストって、人間力という意味では、完全に反対側の世界にいる人が多いです。分かりやすくいいましょう。パソコンの前にばっかり座っている人では、これからのAIビジネス、もしくはデータサイエンスビジネスをドライブすることは、できません。

課題を見つけ、解決策を定着させるには、顧客に出向いて徹底的にヒアリングして、現場を理解する以外に方法はないです。なので、AIやデータサイエンスが差し迫ってくる未来が不安でしょうがないオジサン世代、安心してください。逆に、必要なのは、あなたのようなオジサン世代のアナログな「人間力」ですから。

Image by Marco Verch from Flickr

a16z Podcast: AI, from ‘Toy’ Problems to Production

この”end of theory(セオリーなんか、いらんよ)”アプローチ、けっこう好きです。一部の企業にとっては、正しい結果がどうであるべきかという「セオリー」は今後不要になると思います。

言い換えれば、将来、AIを導入する時は常に教師なし学習で初めて、AIによって特徴をあぶり出させて、アルゴリズムが教えてくれ課題の中から解決すべきものを決める、という順番。

さらに、TensorFlowのようなテクノロジーが誰でも使えるようになった昨今、AIをどのように実装するか、どういった解析手法を使うかは、もはや重要でない。ポッドキャストでも言ってるけど、TensorFlowのような出来合いのテクノロジーを使うことで、わずか数日で2~3人のデータサイエンティストが本物のAIビジネスを立ち上げることだって今はできる。

それよりも重要なのは、ROI(投資利益率)という観点から、どのビジネス課題について取り組むべきかを決めるということ。どんなに最新の手法を使おうとも、解決しようとしてる課題が企業にとってビジネス的にあまりインパクトの無いものであれば、結果的にそのプロジェクトは「失敗」という扱いを受ける。要するに、どうでも良い課題をがんばって解決しようとしている状態。

なので、自分の結論としては、AI技術がコモディティ化するにつれて、技術にしか強みがないスタートアップは市場から撤退することになるはず。逆に、顧客に対して、どの課題を解決すべきかを正しく伝え、かつROIに貢献できるスタートアップは、間違いなく残る。そして、往々にしてそれは顧客がAIでやりたいことを否定することにもなる。

それをやるために必要な人材は、データサイエンティストでもなければ、ソフトウェア開発者でもない。必要なのは、教師なし学習を使いこなし、顧客を正しい方向に導ける、全く新しいタイプのビジネスマンやと思う。

あと、AI技術そのものではなく、ある分野についての深い知識が差別化ポイントだという点にも同意。つまり、医用画像のような特定領域にとことん強いスターとアップだけが生き残る。これは、教師なし学習だけでなく、教師あり学習にも当てはまると思う。

お寿司の種類を認識して値段を自動計算するAI、韓国に先を越される

ハカルスのチーフ科学アドバイザーを勤める東北大学の大関先生から、ちょっと面白うそうなネタを頂いたので。

Sushi Dish : Object detection and classification from real images
sushi-dish

上記の論文を要約すると、ディープラーニングの一種であるCNNを使って9割近い精度でお寿司の皿の画像認識をやっちまいましたぜ、という話。

画像認識におけるCNNの事例は、星の数ほどあるんやけど、今回は「お寿司」という日本の国民食を、「韓国の」ソウル大学のチームが、さらりと「ハックした」という意味で興味深いと思ってます。

こういう事例が出るたびに、「日本のAI技術者の教育は世界から遅れている」とか、「政府はもっとAIに投資すべき」とか、「モノ作りで負けてAIでまた負ける」とかいった雲の上から仙人のような口調で語りかけるブックスマートな評論家がたくさん現れはるんやけど、すんません、そういう話はどうでもええです。

自分が残念やなぁと思うのは、よその国のリアルな課題解決をテクノロジーを使ってやろうとしている学生が日本には圧倒的に少ないこと。

日本の学生の間では、から揚げを乗せるロボットを作るのがえらい流行ってるようやけど、その課題を解決することによって得られる経済メリットはどれほどのもんやねん、と思うことが多々あります。

もちろん、「から揚げ」というのは柔らかいオブジェクトの代表格で、形も1個1個異なるということで研究テーマとしてオモロイというのは分かるんですけどね。

お寿司の皿をカウントするという行為は、もやは日本の回転寿司だけで行われている行為ではなく、それこそ韓国やアメリカ、世界中の寿司屋で毎日毎日繰り返し行われている行為。

上記の論文にも書かれている通り、人間のカウントミスによる顧客側と店舗側の経済ロスは合算すると相当な金額になるはずで、これをAIで自動化することによる人件費削減は、世界レベルで「オー、サンキュー、メーン!」と賞賛の嵐をノリノリで受けるに等しい偉業だと思うわけです。

京懐石並みに見た目が完璧なキムチの盛り付けを、画像認識で自動的にやってくれる「キムチロボ」を作って、英語で論文を出してもええわけです、日本の学生が。

ポテトチップスの袋の中身を全く同じ容量にするハカリを作っている業界シェア・ナンバーワンのイシダ(本社:京都市左京区)という会社がありますが、こういう企業さんとコラボしても、ええわけです。

ちなみに、キムチの盛り付けもお寿司の皿のカウントと同じくらい、韓国では毎日繰り返されている行為で、これのミスカウントによる経済ロスとフードロスは相当なものだと勝手に確信しております。キムチ、美味しいですよね。

要するに、もっと発想を広げましょう、ということが言いたいわけですな。

先進国でなくとも、アフリカや東南アジアの一部の新興国では、毎日繰り替えなさいといけない労働集約型の作業が山のようにあるわけで、これらをAIやロボットで自動化するということを、先進国に住んでいる日本の学生がやらんで、どないすんねんと思うわけです。

アフリカや東南アジアの学生は、手元にあるコンピューターはスマホかChromebookがせいぜいで、CNNがバリバリ動かせるマシンもなければ、満足なレイテンシーでアクセスできるクラウドも(まだ)無いわけです。

世界にはまだまだ解決すべき課題がたくさんあります。日本の学生さん、やるなら今でしょ。