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Month: 9月 2016

タニタはこうして世界一になった

タニタはこうして世界一になった」読了。ハカルスと同じ「健康をはかる」をテーマに掲げている企業としてタニタは大先輩であり、ぜひ読みたかった一冊。

今でこそ健康機器メーカーの代名詞のような存在のタニタも、少し前までは健康を害するタバコのライターを製造していたのは実はあまり知られていないです。

あの有名なタニタ食堂も、自社で立ち上げた健康管理施設(ベストウェイトセンター)の赤字が続いたため閉鎖することになり、同施設に配置した多数の管理栄養士・健康運動指導士・医師を自社の食堂に仕方なく「配置換え」して、社員向けに食事を通じた健康管理サービスを提供したじめたのがきっかけ。

タニタの売れ筋ナンバーワンの製品であるデジタル体組成計ですら、アナログ体重計が利益の大半を稼いでいたことから社員から猛反発を受け、当時社長だった谷田大輔氏が15年もの時間をかけて社員を説得した結果、やっと出来上がったものと本書に記されています。

このような生い立ちをみると、やはりタニタでさえベンチャー企業の生き様そのもので、あらゆることを実際にやってみて仮説検証を繰り返す中で、今の事業の形態に落ち着いたのだと分かります。

ひるがえって、現代のスタートアップはどうかと見ると、ネットに情報が溢れかえっているせいか、スタートアップで働いている社員ですら「あ、それうまくいかないと思いますよ」と、しれっと言ってのける人が稀にいたりします。

うまくいかないと思う理由を聞いてみると、過去に〇〇という会社がトライしてダメだったからだとか、それまで働いていた会社での自身の経験をあれこれ持ち出してダメだと言う。とにかく、うまくいかない理由に関する情報量が異様に多い。

本やネットで得た知識だけでものを語る人のことを英語で book smart と呼びますが、なんだか最近はスタートアップの中の人でさえ、book smartな人が増えている気がするのは自分だけでしょうか。

もしろん、何も考えずにただ行動に移すのはアホ以外のなにものでもなく、経営者である自分の周りをイエスマンだけで固めるのもNG。

自分と異なる価値観や意見を持つ人に耳を傾けるのは大切ですが、やる前から「それ意味ないっす」という雰囲気はいかがなものかと思う。どうしてスタートアップで働いているのか、思わず聞きたくなってしまう人も中にはいたりします。

自分の会社にはそういう人はいてほしくないし、そういった企業カルチャーにならないように常日頃から情報発信して、あるべきマインドセットはメンバー全員に伝えています。

自分は、スタートアップにおいては全ての決定事項は仮説であって、市場で検証されない限りは何も正しくなく、かつ間違いでもない、と考えています。

この前提に立つと、うまく行く or 行かないを社内で延々と議論するのは、ただの時間の浪費であって、そんなことに時間を使うくらいだったら、ある程度の方向性とやり方が見えた段階で、さっさと実行に移したほうが良いという考え方に自然となります。

いわゆるシリコンバレーで言うところの “fail fast, fail often.” (できるだけ早くに失敗しろ、そして何回も失敗しろ)の考え方に近いかもしれません。

実際ハカルスでも設立からの2年間で、色々なものを作っては出して、そこから学んで方向修正をするというサイクルをもう相当回数やってます。このサイクルを norm (通常状態) であると受け止められる人でないと、本来スタートアップでは働けないのではないでしょうか。

うまくいかない理由を述べるのはOKですが、それ以上に「だけど、こうすればうまくいく可能性があります」といった意見が自然と出てくるような企業カルチャーがベストですね。

本書の後半では、まさにこういった肯定的な自己否定の企業カルチャーをいかにして作り出すかについても書かれています。

もし、社内に book smart な人がいれば、本書をそっと差し出してみてはどうでしょうか。

スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』読了。

自然に触れることで人間らしい生き方を取り戻す、という同社の考え方は、分野は違えど、食を通じた健康な生き方を提唱するハカルスと通じるところがあると感じていて、前から読みたかった一冊。

前半は、同社のモノ作りに対する姿勢や、ファンを巻き込んだマーケティング・販売の仕組みの話がメイン。

後半は、同社の内容からは少し外れて、人間が人間らしく生きるための考え方や行動についての話。

「好きなことだけを仕事にする」と聞くと、一見アウトドア好きには天国のような職場に聞こえるが、当然ながら、それをビジネスとして成立させるための相当な企業努力がその裏にある、という部分もしっかり書かれています。

本書で自分が一番興味を持ったのが、下記の部分。

経営者である私が一番多く「お金」を使える立場にある。

これは、会社が作る全ての製品やサービスは、経営者が設定した品質や機能を決して超えることはない、という文脈の中で出てきた一文。

分かりやすく言うと、社員が勝手に自分の想像を超えるような素晴らしい製品やサービスを作るということは、よほどのことがない限りあり得ないですよ、という意味。

経営者は社員よりもたくさんお金を使って、他社の製品を購入して使ったり、外の世界での体験を通じて常に学び、自社の製品やサービスがあるべき品質や機能を「明確に」決定して、社員に伝える必要がある。だから、社長は会社で一番高い給料をもらっているのだ、という考え方。

これ、自分も賛成するところが多いです。

残念ながら、自分は会社で一番高い給料をもらっている身分ではないですが、それでも他社の有料サービスには自腹でお金を払って加入して、それぞれのサービスを納得するまでとことん使い倒すようにしてます。そのうえで、自社のサービスがどういうものであるべきかを決めるようにしています。

これは決して、「A社がこうだから、うちはこうしよう」という消去法的な考え方ではなく、「ユーザーの不満や課題はどこにあるのか」という点を他社サービスを含む業界全体の枠組みで見て、自社がいまこのタイミングでユーザーに提供すべきものは何かを見極めるためです。

あと、本書で何回も提案されている、キャンプに出かけることで人間本来の生活サイクルに戻ることができ、その結果、物事に対する重要な判断を迷いなく下すことができる、という部分は、凄く納得ができました。

自分はキャンプをすることは少ないですが、週末に山奥などに出かけた後の方が、アタマがすっきりしているというか、長期的な視点に立って物事を考えやすくなっている気がしていました。

外で2泊するとより自然な生活サイクルに戻る、ということなので、ぜひ今度トライしてみたいと思います。

アウトドアやキャンプに興味がなくとも、経営者にはオススメの一冊だと思いました。

テック起業家は10回これを観た方がいい

スタートアップあるあるが満載のテレビドラマSilicon Valley。自分の周りでも観てる人けっこう多いです。自分は日本版Huluで観てます。

最新エピソード「箱にはペア入り」(原題:Two in Box)の内容が、自分の個人的な経験にモロ重なりだったので、ちょっと書いておこうかと。

ネタバレしない程度にエピソードの概要を説明すると、投資を受けたVCからの要請で送られてきた経験豊富なプロ経営者によって、創業者はCEOの座を奪われCTOに降格。

新たなプロ経営者によって、スタートアップの方向性が「フリーミアム万歳〜!利益は後からついてくるさ♪」的なものから、「いやいや利益を出すなら営業体制の強化とB2Bへのシフトでしょ」という方へと急速に変わっていく、という話。リアルの世界でも、まぁよくある話です。

自分が『これだ!』と思ったのは、次のシーン。ビジネスライクなカルチャーに変わっていくスタートアップにあれこれ文句を言い始める創業者(元CEO/現CTO)に対して、経験豊富なプロ経営者が言います。

『この会社のプロダクトは何だと思う?それは株だ。株価を上げるものがプロダクトなんだ。』

1人のエンジニアとしてキャリアをスタートして、CTO→CEOとキャリアを重ねてきた自分の意見も、実は全く同じです。少なくともVCからの資金を得ている間は、という前提ですが。

会社は株主のものか、それとも従業員のものか、という議論は今でもしょっちゅうされてますが、今回はそういう話ではなくて、VCから資金提供を受けている間のスタートアップにおけるプロダクトの定義とは何ぞや、という話です。

ちなみに、どんな企業においてもプロダクト(またはサービス)は必ず顧客が抱える何かしらの課題を解決する必要があります。

これが出来ていない企業は、どれだけ資金調達に成功しても最終的に立ち行かなくなるのは、過去のスタートアップの歴史が証明済みです。

ただし、VCから資金提供を受けているスタートアップにおいては、企業存続の是非が次の資金調達ラウンドを達成することが出来るかどうかにかかっていることが多く、そのためプロダクトの定義が「株価を上げるもの=次の資金調達ラウンドの達成に貢献するもの」ということになります。

わざわざ言うまでもないですが、会社の資金が尽きれば、どんなに優れたプロダクトも作り続けることができません。なので、self-sustainable(自社の利益だけで事業を継続できる)状態でない限り、プロダクトの定義は上記の通りである必要があります。

この考え方、自分がCTOをやっている頃はなかなか理解できないというか、ぶっちゃけ受け入れ拒否に近い状態でした。まさに、ドラマのSilicon Valleyで言うところのCTOに降格させられた創業者と同じロジックです。

実際に、あの頃は「うちはテクノロジー・ドリブンだ。営業はプロダクト自身がやってくれる。」というアホなセリフを自分は連発していた記憶があります。

当時の自分の考え方が正しかったかどうかは売上を見れば一目瞭然で、ちゃんとした営業をしないプロダクトなど売れるはずもなく、自分の給料もまともに払えない日々が続いていました。

そんななか、経営方針の転換とチーム構成の見直しを経て、営業体制の強化とB2Bへのシフトを行ったところ、みるみると売上が立ち、方向転換後の翌年度末には数億円の売上を出すスタートアップになっていました。

プロダクトの作り方も、今で言うところの PMF (Product-Market Fit) 重視で、自分自身が顧客の所に足を運んで提案やヒアリングを行い、得られたフィードバックをプロダクトに反映させることで、それぞれの顧客が抱える課題を順番に解決する、という形に切り替えました。

稀に disruptive (破壊的イノベーション) という言葉を履き違えて、顧客や営業というものを一切見ないで突き進もうとする、経験の浅い起業家に出会うことがありますが、自分自身の経験に照らし合わせても、そういう考え方を持っている人に外部から何を言っても腹の底では理解してもらえないので、なるだけ早くに失敗してそこから学んでくれることを願いつつ、最近はそっと見守るようにしています。

人間、やっぱり自分自身で失敗を経験しないと、事の真意がわからず、行動を正せません。ただし、見守るだけではスタートアップのエコシステムには何も貢献しないので、自分自身の失敗経験や成長過程をブログや講演などで共有することで、若い起業家の成長を促す手助けになればとはいつも思ってますが。

最後に。上記のような考え方はVCからの資金調達に頼らず、自己利益と銀行融資だけで事業運営と成長を考えている起業家には、おそらく当てはまらない、というか参考にすべきではないと一言添えておきます。

VCからの資金を一切入れずに上場するスタートアップは当然存在しますし、シカゴの37signals(現Basecamp)のように上記の考え方を真っ向から否定しつつも、素晴らしいプロダクトを送り出しているスタートアップもあります。

結局は起業家の人生観や価値観に依存するわけですが、VCからの資金調達を考えているにも関わらず、相反する考え方を持つことはくれぐれも避けたほうが良いと考えます。その先に待つものはSilicon Valleyのエピソードの世界そのままです。

シンガポールのスタートアップ・アクセラレータの先駆けJFDIがプログラム終了を発表、多国籍企業とのオープンイノベーション創出にピボット

Coworkify立ち上げのころ、JFDIに入りたくてシンガポールを訪問する度にBLK79に足を運んでいたのが今となっては懐かしい。

プログラム終了の理由は英語ブログに色々と書かれているけど、個人的にはTechStarsからのノルマというか、US方式のやり方がだんだんと合わなくなってきたのが1番の理由ではないかと思ってます。

TechStarsに限らず、有名なアクセラレーターのフランチャイズをUSから仕入れたところは、だいたい同じような悩みを抱えていると聞くので、今後もこの手のピボットは出てくるかも。

Fireside Chat by Tom Foley SilverEgg

東証マザーズでのIPOが決まったばかりのAIベンチャーSilverEggのCEOトーマス・フォーリーさん。

外国人として日本に来て、大阪に本社を置き、東京に営業拠点を持ち、7億円の資金を集めながら事業を途中に完全にリセットする必要があった話など。

500 Startupsの最後のセッションにふさわしいリアルな話でした。

花開くか大学発ベンチャー(上)大手企業、連携急ぐ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO06911530V00C16A9TJC000/

今朝の日経新聞から。

「アカデミア知財の事業化」はハカルス設立当初からのミッションの1つなので、大学との連携は今でも積極的に進めさせてもらっています。

一方で、大学発ベンチャーを語る時によく聞かれるのが、記事にも書かれている「技術と経営の両方に精通した人材が不可欠だ」という論評。

これ、大学発ベンチャーに限った話ではなく、いわゆるベンチャー全般に言えることで、AIやIoTなどのテクノロジーがあらゆる業種で当たり前のように使われる近い将来では、技術と経営の両方が分かる人間でないと自社の差別化が相当に困難になると考えてます。

なので、議論すべきポイントは「不可欠だ」などといったレベルではなく、どうやってそのようなスキルと経験を持った人材を育成するか、もしくは外から連れてくるか、という点をそろそろ「具体的に」詰めていかないとイカンですね。

個人的には、技術・経営に加えて英語(もしくは中国語)が分かる人材でないと、これからのベンチャー経営は難しいと思ってます。

おもしろおかしく 人間本位の経営


ずっと読もうと思っていた、堀場雅夫さんの著書「おもしろおかしく」読了。

京都人らしいというか、好き嫌いがハッキリした表現は、典型的な京都企業の経営者そのもの。他人に流されず自分流を貫くその経営スタイルは、同じ京都企業の端くれとして大変参考になります。

How Pokemon Go Works

ポケモンGOの生い立ちに関する、これほど詳しい説明は今まで聞いたことがないかも。

ジムでのバトルの源流となったゲームボーイ時代の通信ケーブルを使ったポケモンの対戦、Google Earthの開発チームがIngressを作るに至るまでの話など。それぞれの会社の歴史が奇跡的に合流して生まれたポケモンGO、面白い。

米国テック一強時代は終わり、米中二強時代が始まった

http://rebrightpartners.com/ja/2016/09/01/china-startup-fundraising/

リブライトパートナーズ蛯原さんのブログ記事。かなり興味深いです。

いま、500 Startupsのアクセラレーションプログラムに参加している手前、多少言いにくい部分もあるのですが、アメリカの大学で教育を受けた自分でさえ、最近は「西一辺倒」の考え方・価値観に疑問を頂くことがあります。

500 Startupsでも、コテコテの western education / western culture / western way を叩きこまれますが、実際問題、シリコンバレーのスタートアップですら、ある一定のビジネス規模になると、売上の半分以上を米国以外で稼ぐようになることは多いです。

そうなると、本来は「東一辺倒」の考え方・価値観の方が、今の時代にあっているのでは?と思ったりもします。

特に中国とインドは、これから間違いなくテック系スタートアップの主戦場になるので、自分はメンターにあれこれ言われても、東洋人としての自分の考え方・価値観は割りと貫くようにしたりしてます。