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Month: 12月 2014

Hack U x 京都大学 2014 レポート

Yahoo! JAPAN と教育機関が共同開催している、学生のためのモノづくりイベント Hack U (ハックユー)。Hack U は単なるハッカソンではなく、現役の Yahoo! JAPAN エンジニアから様々な技術指導を受けられる点がユニークで、学生は最先端の技術に触れながら、それぞれの作品を作ります。

11月から12月にかけて京都大学で開催された「Hack U x 京都大学」では、当初からイベントに関わらせて頂き、最終日には審査員を務めさせて頂きました。今回はそのレポートを書きたいと思います。

まず、11月21日に京大の吉田キャンパス内にあるファブリケーション施設(モノ作りのための作業スペース)で初回の説明会が開催されました。学園祭の時期と重なったため、学生の参加人数が心配されましたが、2回目の説明会では会場がほぼ満席になる盛況ぶり。Yahoo! JAPAN 大阪支社の方から、過去の Hack U 事例や参加条件などについて説明がありました。

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初回の説明会、京大デザインスクールと Yahoo! JAPAN による共同開催

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2階まで吹き抜けた開放感のある京大ファブリケーション施設、3D プリンターやレーザーカッターなどを常備する

続いて、12月6日のチュートリアル。Yahoo! JAPAN が提供する各種 WebAPI の説明や、それらの WebAPI を使った実装事例などを同社のエンジニアが解説。参加者の学生も、ここで一気にハッカーモードに切り替わり、熱心に最新技術の使い方について聞き入っていました。

Hack U では、必ずしも Yahoo! JAPAN の WebAPI を使用する必要はありませんが、こうやって現場の開発者から指導を受けながら使い方をマスターできる点は、やはりこのハッカソンの特徴かと思います。ちなみに、最終日の発表会では実際に Yahoo! の地図 API を使っていたチームが幾つかありました。

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WebAPI の基本概念について、参加者の大半は情報学系の学生なので、ここは楽勝

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WebAPI の実装事例として最近同社がリリースしたカーナビアプリを紹介

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実装事例の紹介だけでなく、WebAPI を実際に使ったライブコーディングも披露された

チュートリアルが終わると、各チームは開発期間に突入。与えられた時間は12月6日〜20日までの2週間。ハッカソンとしてはちょうど良い長さの開発期間だと思います。この期間中は、各チームは Yahoo! JAPAN 大阪支社を自由に訪問することができ、WebAPI の使い方などの技術指導をエンジニアから直接受けることができます。

あとで聞いた話では、Yahoo! 地図 API のテストを行うために、Yahoo! JAPAN 大阪支社のビルの周りを相当ウロウロしていたチームもあったとのこと。こういった距離感で現場のエンジニアと一緒にモノ作りができる仕組みは、本当に素晴らしいと思います。

そして迎えた12月20日の発表会。最終的に13チームが残りました。場所は京都リサーチパーク内にある京大デザインスクールのワークスペースにて。こちらの施設は、よりソフトウェアとコラボレーションに寄った場所で、オープンな空間でディスカッションしながらモノ作りが行えるようになっています。

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京都リサーチパーク内にある京大デザインスクール、Hack U x 京都大学もバッチリ宣伝

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京都市内が一望できる京都リサーチパークからの眺め

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大学というよりは、IT ベンチャーのオフィスそのものの雰囲気

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ディスカッションのためのスペースも充実

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五山送り火の時は、ここから全て一望できるという好環境、海外からの留学生にも人気がでそう

発表会の当日は Yahoo! JAPAN 執行役員 CMO (兼 YJキャピタル パートナー) の村上さんも参加され、京大の教授陣らも含めて合計6人で審査させて頂きました。それでは各チームの作品を一気に紹介しましょう。

1チーム目:bowmore (バウモア) 『ノリッパ 〜「ノれる」スリッパ〜』
加速度センサーつきのスリッパでリズムを刻み、エンジニアの運動不足を解消

スリッパに取り付けられた加速度センサーで足の動きを検知、音楽にあわせてビートを刻むことでビジュアライザが反応し、心地よい視覚効果と共にエンジニアが運動不足を解消できるという。実際にハードウェアが動作するところも披露。

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マイコンが組み込まれたセンサーをテープで固定した「ノれる」スリッパ、題して「ノリッパ」

2チーム目:最適化数理分野研究室 『こみゅりょ君』
イベントで「独りぼっち」にならないための相手探しツール

人が集まる場所で話し相手がないという状況を解決するために作られたツール。興味のあるキーワードなどを指定することで、相手を見つけやすくする。チーム名が「最適化数理分野研究室」ということで、さぞ高度なアルゴリズムを使っているのかと思いきや、そうでもないということで会場は爆笑。

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キーワード指定による相手探し以外にも、Twitter API 経由で話題を提供してくれる機能も

3チーム目:くわがた 『やる気ボタン』
モチベーションを上げるためにボタン1発で気合を入れてくれるアプリ

楽器の練習を続けるためにはモチベーションの維持が大変だという課題を解決。スマホのアプリを起動してタップすると、気合を入れてくれる YouTube 動画が再生されるという仕組み。動画はユーザーが自由に設定できるが、デフォルトは松岡修造氏。お約束だ。

完全にネタ系のアプリだが、プログラミングの知識が全く無い2人によって、たった2週間で作られたアプリとしては評価したい。

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ボタン1発で松岡修造氏のアツすぎる応援メッセージが動画で流れる

4チーム目:ELEPHANT 『buta』
GPS と連動した家計簿アプリ

出先でお金を払った際に、その金額と内容だけでなく GPS による位置情報も一緒に記録してくれるアプリ。これにより、いつ、どこで、いくら使ったかが視覚的に分かるという。GPS と連動した家計簿アプリは他にもあるが、場所に応じて入力内容をリコメンド(支援)してくれるアプリはこれまでに無かったとのこと。

アプリの完成度が非常に高く、Yahoo! JAPAN の地図 API も完全に実装済み。今回のアプリでなくとも、簡単なアプリであればサクッと作れてしまいそうなチームとして、審査員からも高い評価を得ていました。

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自分の行動パターンが可視化される新しい家計簿アプリ

5チーム目:白湯(さゆ) 『やさしいクリスマス』
カップルのイチャイチャを見えなくするクリスマス専用 AR メガネ

今回のチームの中で「才能の無駄遣い」という言葉が最もしっくりくるチーム。エプソンのスマートグラス製品 MOVERIO と顔認識技術を組み合わせ、街中でカップルらしき2人組を見つけるとリアルタイムでサンタクロースの画像に差し替える。クリスマスを安全に過ごしたい非リア充向けのソリューションだ。

人が3人並んだ映像のうち、右側の2人をカップルと認識して、リアルタイムにサンタクロースの画像に差し替えるデモが実際に披露された。ちなみに現在のバージョンでは、性別までは判別できないため、男が2人でいても「カップル」と認識されるという。Yahoo! JAPAN の村上さんからは、「ぶっちゃけ、人が多い街中では歩けないのでは?」という、もっともらしい意見が出された。

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内容はともかく実装力は高いチーム、流行りのスマートグラスで挑戦

6チーム目:NAGA’+’MINE 『京都大学学生のための熱意ある講義出席管理システム』
出席した講義ではなく「休んだ」講義を管理して単位を落とさなくするツール

すごい時間割 など、講義の出席を管理するツールはすでに存在するが、これは逆に出席しなかった講義を管理するツール。講義を休みすぎて単位を落としかけたという学生本人による、切実なニーズとソリューションを披露。大学の教授からは「もっと出席を促すような作りにしてはどうか」という意見も。優秀すぎて講義に出て来ない学生が多い(?)、京大ならではの事情か。

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Zealous lEcture-attendance maNagement system for KYoto University student から文字をとって、Zenkyu (全休?) と名付けられた疑惑のツール

7チーム目:NEXT VANGUARD 『ARound グルメ』
AR を使って周囲の飲食店の情報をその場でゲット

ぐるなび API を使用して、近隣の飲食店の住所を入手し、スマホカメラを通じて映し出される現実世界に飲食店の情報を投影するアプリ。仕組みとしては一昔前のセカイカメラと同じだが、飲食店のコチコミ情報なども一緒に表示される点が新しいという。ARToolKit を使うことで、こういった AR (拡張現実) アプリも今では比較的簡単に作れるとのこと。

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現実世界に投影された飲食店の情報をデモで披露

8チーム目:8 x 9 = 72 『VicNi』
自分の代わりに「オナラ」をしてくれる身代わり端末

大昔の日本には、身分のある人がオラナをした瞬間に、身代わりとなってオナラをしてくれる比丘尼(びくに)という職務があった。それを現在のテクノロジーで再現しようという試み。硫黄系化合物を検出するセンサーデバイスを使い、匂いを察知すると無線通信で身代わりとなる人の端末からオナラの音が出るという仕組み。

端末の設定により「連帯責任モード」など、様々なシチュエーションにも対応できるとのこと。まさに日本の現代社会を考慮した設計になっている。ちなみに、ベースの端末は Arduino、無線通信は ZigBee、匂いセンサーは TGS2450ということで、結構本格的な実装になっている。デモでは、2台の端末が色々なモードで動作する様子が披露された。

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現代のテクノロジーで比丘尼(びくに)に蘇らせる野心的なプロジェクト

9チーム目:チームチンパン 『大盛り注意報』
AR マーカーで食べ物の大きさを実物大で表示、食べ過ぎを防ぐアプリ

二郎系ラーメンなど、世の中にはそのサイズを知らずに注文すると後で痛い目にあう食べ物が多々存在する。それを AR マーカーを使うことで、スマホ上に実物大の大きさを表示して、事前に食べ物のボリュームを知ろうというアプリ。

表示される食べ物は、実はちゃんと 3D になっていて、スマホカメラをかざす角度を変えると食べ物の見える位置が変わるようになっている。これには、写真から 3D モデルを作ることができる、Autodesk 社の 123D Catch というアプリを使っているとのこと。AR マーカーなしで、それこそ食券機にカメラをかざすだけで食べ物の大きさが分かれば、かなり便利そう。

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スマホ上で食べ物をスムーズに 3D 表示するためにポリゴン数には気を遣ったとのコメント

10チーム目:Makers 『Telepresence Robot「Branch」』
外出先でスマホを操作して、自分の代わりに荷物を受け取ってくれるロボット

結果から先に言えば、今回のハッカソンで優勝を勝ち取ったチーム。出先で宅配便などが受け取れないときに、自分の代わりにサインをして荷物を受け取ってくれるロボット。何はともあれ、まずは実際にロボットが動作する様子を動画でご覧頂きたい。


スマホからの遠隔操作によってロボットがサインをするところ、「山田」という文字を書いている


荷物を受け取ったあとは自分で移動することもできる

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ロボットのベース部分、ありものの組み合わせっぽいが、ちゃんと動作している

ちなみに、このロボットを作ったコアメンバーの2人はすでに就職先が決まっており、それぞれ大手自動車メーカーの T 社と H 社とのこと。さすが京大生。スマホで操作するところが今風。ソフトウェアとロボティクスの融合という観点でも完成度が高く、審査員ほぼ全員が最優秀賞の票を投じました。

11チーム目:きょうも研究やすみます 『KineticBooklog』
自分が読んだ本を記録するログを作る

文字だけでなく、様々な視覚要素と一緒に自分が読んだ本を記録するアプリ。世の中にはすでに様々なブックログ系アプリが存在するが、そういったものと今後どう差別化するのかがポイントになりそう。

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きょうも研究やすみます、という意味深なチーム名

 12チーム目:ラ王 『ひまじろう』
ヒマな人同士をマッチングさせる出会い系アプリ

大学生が参加するハッカソン、Startup Weekend、ビジネスコンテストで必ずといってよいほど出てくる「ヒマな人同士をマッチングさせる」サービス。今回もやはり出てきたという感じ。これだけ何度も登場するということは、よほどのニーズがあるに違いない。ユーザーである学生に徹底的にヒアリングして、今度こそデファクトスタンダードの地位を獲得して欲しい。

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学生向けのイベントで審査員をさせて頂いて、これまで何度も聞いたアイデア、またもや登場

13チーム目:おにぐんそー 『熱血教師系指導アプリ「それでいいのか君の勉強!」』
統計学を用いて勉強時間の効率化を実現

センター試験と2次試験において、限りある勉強時間をどのような科目に割り振るか、それを統計学の視点で最適化してくれるサービス。チームメンバーには京大思修館 の現役生が2名含まれる。プレゼンがとても上手く、聞いていて納得感があった。

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「いつやるか?今でしょ」ではないが、某予備校の先生かと思うほど納得感のあるプレゼン

以上、13チームの紹介でした。

ハッカソンは、いわゆるビジネスコンテストではないため、事業性の面での判断は行われないのが普通。どちらかと言えば、お祭り的な要素の方が強い。なので、参加者が作りたいモノを作るのが基本。そういったフリーな条件にも関わらず、センサーデバイスやスマートグラス、ロボットを使用した作品が多かったのは、やはり時代の流れでしょうか。

イベント終了後に参加者の学生さんと話す機会がありましたが、就職が決まっている人は、やはり関東が勤務地という人がメインでした。これだけの作品を自力で作れる高い能力があるにも関わらず、京大生が関東の会社のための人材供給源になってしまっている感は正直否めませんでした。せっかく京都で学んだ彼らが、就職のために県外に出てしまう現実をここでも目の当たりに。

自分は、いわゆる学生ベンチャーには若干悲観的で、少なくとも数年は社会人経験を積んで起業家としての視野を広げてからスタートアップすることをお勧めしています。今回の参加者の学生さんの中にも就職後に将来起業を考えている人が数名いましたが、たとえ就職先が関東であっても、いつか京都に戻って起業してもらいたいと思っています。それに必要なものは成功事例とサポート体制。彼らが戻ってくるまでには、絶対に環境を改善させます。

最後に、年末の忙しいなかイベントを運営された京大関係者のみなさま、Yahoo! JAPAN 社員のみなさま、お疲れさまでした。審査員に呼んで頂いて、ありがとうございました。来年も楽しみにしています!

京都スタートアップカレッジ2014:2ヶ月間の育成プログラムを終えて

昨日は審査員として 京都スタートアップカレッジ2014 の卒業式 DEMO DAY に参加しました。

京都スタートアップカレッジは、ASTEM (京都高度技術研究所)と京都市が主催している、いわゆる行政によるハンズオン型の起業家育成プログラム。今年が初めての開催となり、10月にオープニングイベントがザ・リッツ・カールトン京都で行われました。

本プログラムでは、チームビルディングからプロダクト開発、ファイナンスなどのコンセプトを2ヶ月かけて学び、最後に DEMO DAY (ピッチイベント) という形で成果を披露します。本格的なアクセラレーターではないため、あくまで入門編的な位置づけになっていますが、自分は今回メンター兼審査員という形でプログラムに携わりました。

行政にありがちな助成金による起業促進ではなく、京都ローカルな起業家や投資家を講師として招いて、できるだけ「実践的な」トレーニングを提供しようとしているところが、特筆すべき点かと思います。さらに、上位チームには創業支援金として数十万円が支給されるほか、京都市内で登記した場合は登記費用の半分を行政が負担するなど、実際の起業を前提とした資金援助の方法もユニークなところ。

それでは、さっそく昨日の DEMO DAY に登壇した6チームを紹介しましょう。

1社目:トノムラ
『男性のトレイ使用時の尿飛沫を「泡」で抑えるプロダクト』

通常の男性は1回のトレイ使用でおよそ1,000滴の尿が飛沫する。これまでこういった尿飛沫を抑えるために便器の底にシート状のマットを敷いたり、泡を発生させる装置を便器に追加したりなどしていたが、家庭用の座るタイプの男女共用の便器では、こういったものが使えなかった。

そこで、高価な泡発生機を使わずに手軽に同じ効果を得ようと開発されたのが今回のプロダクト。「今からデモを行います!」と聞いた瞬間に、まさかパンツを下ろして本当にデモをするのではないかと一瞬ヒヤリとしたものの、事前に用意されていたジョウロによるデモでした。

1回=1袋の使い切りタイプで、用をたす前に便器の中に投入すると水と反応して泡が発生するという仕組み。泡が発生した状態で用を足すと、飛沫量が激減されるというデモが披露されました。

500 Startups の Dave McClure の言葉を借りるならば、アンセクシー (unsexy = クールではない) プロダクトに分類されるかと思いますが、審査員からは家庭用だけでなく、ホテルや共用施設などのトイレでもニーズがあるのではないかという意見も出ていました。

本プログラムに参加する前は PowerPoint という言葉すら知らなかったという彼ですが、たった2ヶ月で working prototype を披露したのは目覚ましい成長率ではないか、という声も審査員からあがっていました。

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同社の経営理念「世の中に存在しない全く新しいものを作ること」

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開発したプロダクトを使ってのデモ(ちなみにパンツは履いたまま)

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1袋あたり7円程度で製造可能、日用品として十分に価格競争力があるとアピール

2社目:Sleep Innovation
『抱きかかえ枕ではなく「抱きかかえられ枕」で睡眠にイノベーションを』

奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST) の学生チーム。カラダ全体を包み込むような大型の枕を使い、内蔵されたセンサーデバイスで枕の中にいる生身の人間を動きを計測。それをクラウドにアップしてデータ解析を行い、睡眠を改善するための様々なフィードバックを行うというプロダクト。

実際にユーザーに製品を使ってもらい、その感想を動画で紹介するなど、プレゼン自体のレベルもかなり高かったです。枕の中のセンサーデバイスは Arduino ベース。チームメンバーも、ソフトウェア・ハードウェア・データ解析の専門家で構成されていため、プロダクトの完成度も非常に高い印象を受けました。

自分もこの枕をカラダに巻きつけてみましたが、そのズッシリとした重さとフワフワの感触が、いかにも安眠を誘発しそうでした。唯一のネックは、現時点でおそらく5万円かかるという製造コスト。ただし、製造分野に詳しいプロがチームに加われば、改善されるかと思いました。

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奈良先端科学技術大学院大学から、わざわざ京都まで通ったチームメンバー

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枕の中に内蔵されている Arduino ベースのセンサーデバイス

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ソフトウェア・ハードウェア・データ解析というバランスの良いチーム構成

3社目:テレコメ
『米国発 tvtag の日本版:テレビを観ながらアプリでお喋り』

スマホのアプリを立ち上げて、いま放送されているテレビ番組の名前をタップすると、Twitter 風のマイクロメッセージングの画面が現れて、同じテレビ番組を観ているユーザー同士で会話ができるというサービス。

米国では tvtag (元 GetGlue) という同種のサービスが立ち上がっており、すでに exit している実績もある。ただし、ビッグデータやデータ販売に詳しい起業家審査員からは、「データ販売は売上として考えないほうが良い、本当に微々たるもの、基本的に自社で有効活用する前提で」といった指摘も。こういった実体験に基づいたフィードバックが得られるのも、本プログラムの特徴かと思いました。

自分個人の感想としては、過去に頓智ドットの「コレミタ」や、その他の IT 企業が何度もチャレンジしている分野だけに、なぜ今回このサービスがうまく行くのかが分かりませんでした。さらに、こういったメディア企業を相手にするサービスは、東京でやった方がよほど効率的で、京都でやるアドバンテージがほとんどない類のサービスだと感じました。

一方で、営業畑とエンジニアというチーム構成は非常にバランスが良いため、ぜひ別のアイデアで勝負してもらえばと期待しています。ここで諦めずにトライ!

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放送局ではネガティブな Twitter コメントは画面に表示することができない、とズバリ指摘

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マネタイズの部分では審査員から幾つかの課題が突きつけられるシーンも

4社目:IROTORI
『手作りアイテムをソーシャルギフトで大切な人に送る』

手作りアイテムの EC サイトで先行している Etsy に、Giftee のようなソーシャルギフトの仕組みを適用したサービス。利用者は発注時に、クリエイターにカスタムオーダーを依頼し、クリエイターはその指示に従って1品ものの「オーダーメイド品」を製作。完成後に商品が友人・家族・恋人に届くという流れ。

このチームは、リッチな表現ができる Etsy としてスタートし、クリエイターが動画などのリッチメディアを自分の商品ページに掲載できる機能をウリに他サービスとの差別化を行うことを狙っていた。しかし、途中からモデルを変えて、現在の形に至った。

個人的には、「自分が1度も観ていない商品を大切な人に送るのか?」という問いがどうしても解けず、なかなか先が見ずらいサービスの印象を受けました。しかし、一方で自分も今まさに妻の手作りアイテムを売る手伝いをしている手前、手作り品とソーシャルギフトの組み合わせの可能性については、かなり興味があります。

今後はぜひ市場のフィードバックを受けて、どんどん改善して欲しいチームだと思いました。

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あなたの思いを色あせさせない、ただ1つのオーダーメイド EC がコンセプト

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クリエイターは利用者とメッセージでやりとりしながら製作を行う

5社目:データ科学
『高齢者のための買い物代行サービス』

今回の参加者の中でも稀な、同分野で既に起業しているチーム。高齢者を介護するヘルパー人材は年々深刻な人材不足に見舞われており、介護人材の確保はもはや国全体の問題となりつつある。一方で介護の現場では、ヘルパーの資格を必要としない作業も多く、そういった作業をクラウドソーシングで仕事の「担い手」をマッチングすることで解決しようとするサービス。

代表はデータ解析の専門家であるため、将来的にはマッチングデータの解析を行うことで、高齢者のニーズを見出すことが狙いとのこと。

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高齢者にターゲットを限定した買い物代行サービス

6社目:Speech Conductor
『音声認識で原稿の「ちょっと先」を機械が読み上げて教えてくれるプレゼン支援ツール』

京都大学教授からの支援を受けて、独自の音声認識技術を確立。この技術を使って、プレゼンターが話す内容をリアルタイムに解析して、いまどこを読み上げているのかを判別。その読み上げている箇所の少し先の文章を機械が音声で読み上げて、プレゼンターのイヤホンにフィードバックしてくれるツール。

予め読み上げる内容が決まっているプレゼン形式、例えば決算説明会、イベントでの商品説明などで威力を発揮する。さらに、英語のネイティブスピーカーではない日本人の教授が学会などで英文を読み上げる際にも、機械が先に英語の文章を読み上げてくれるため、その音声を追従することでスムーズに英語プレゼンができるという。

イヤホンは市販の Bluetooth ヘッドセットが使えるため、特に専用のものは必要ないこともメリット。自分の場合、プレゼンは基本的に全てアドリブですが、決まった文章を読み上げるタイプのプレゼンでは有効なツールだと思いました。

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プレゼンのサポートツール Speech Conductor、略して「スピコン」

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京都大学の知財についても紹介

以上、6チームの紹介でした。本プログラムは来年も開催されることがほぼ決まっているようなので、アナウンスされた際はぜひチャレンジされてはどうでしょうか?

運営者の視点で見た場合、こういった取り組みはとにかく続けることが大切だと思っています。プログラムを継続することで運営側の事業プロデュース力やメンタリングスキルも向上し、卒業者の数も増え、数名は資金調達や何かしらの exit に到達する可能性も出てきます。

また、いつも自分が FI 関西でも言っている通り、「あらゆるフェーズの起業家を受け入れられる」仕組みがあることが、成功するスタートアップ・エコシステムには必要だと考えています。人によっては Startup Weekend が最適な場合もあれば、今回のようなプログラムが最適な場合もあると思います。ベストは、もちろんシリコンバレーのように exit 経験のある起業家が、投資家やアクセラレーターになるまでの完結したエコシステムが関西に出来上がることです。

ということで、参加者のみんさん、卒業おめでとうございます!

「ビジネスプランコンテストにワシを呼ぶな」発言について

日本のスタートアップ界隈の方はすでにご存知かと思いますが、MOVIDA JAPAN の孫泰蔵さんの Facebook 投稿が若干話題になっています。

いつかは誰か著名な方が一石を投じるだろうと思っていましたが、自分も 120% このスタンスを支持します。

自分のようなしょーもない立場の人間でも、関西にいるからというだけで、ビジネスプランコンテストやピッチ大会の審査員依頼を受けることが、最近めっぽう増えてきました。

自分も泰蔵さんと同じスタンスで、プロダクトやサービスが見れないイベントへの審査員要請は「一切全て」お断りさせて頂いています。

逆にハッカソンや Startup Weekend など、何かしらのモノが出来上がることが前提となるイベントには喜んで参加させて頂いています。最近では、さらに一歩進んでハードウェア・スタートアップの作業場となる、ファブラボ的な場所の常駐メンター(Mentor in Residence)などを依頼されることもありますが、こちらも大変ウェルカムです。

残念ながら、近ごろは関西でも「なんちゃらピッチ大会」や「なんちゃらビジコン」という名前で、ただでさえ数少ないスタートアップや起業家を何度も同じ舞台に立たせてピッチさせて、それをもってして「自分はベンチャー育成をやっている」とおっしゃる方がかなり増えてきた印象を受けます。

一昔前であれば、VC やメディアの前でプレゼンする機会は大変貴重でしたが、今は逆に起業家やスタートアップが VC やメディアを選ぶ時代なので、ただアイデアや事業計画を披露するだけの場所は、もはや登壇する側の人間の貴重な時間を無駄にする以外の何物でもないのではと個人的に思い始めています。

今は突出したトラクションや技術、チームがあれば、自ずと VC や支援者が寄ってくるのが現実です。逆に、トラクションや中身がない状態でやたらピッチ大会やメディア(クラウドファンディングのサイト含む)に出ている起業家やスタートアップがいるとすれば、それは物凄い勢いで自身のレピュテーションを下げることになるかと思います。それくらい VC・メディアの世界は狭いです。

もちろん、シリコンバレーにもビジコンやピッチ大会は未だに多く存在していますし、大学や MBA のような座学中心の世界では、まだまだこの手のことは数多く行われている現状もあります。しかし、プロダクトやサービスがないものに幾らコメントしたところで、コメントを受けた側の方も「では再来年に起業したら、頂いたフィードバックを実行しようと思います」といったレベルにしかならないではないでしょうか。

一方で、ビジコンやピッチ大会は全く不要かと言えばそうでもなく、実際に京都の某大学内で開催されたビジコンで優勝して、そのアイデアで学生起業し、まもなく年商が5,000万円を超えることろまで会社を成長させた起業家と、つい先日話をする機会がありました。なので、ビジコンやピッチ大会からも、こういった起業家は産まれる可能性はありますが、彼のように本当に起業して、サポートなしで自力でここまで成長させられる人間はほとんどいません。

もう1つ。プロダクトやサービスがあるチームに対してコメントするにも、3分〜5分程度のデモやピッチを聞いただけでは、どんなに優れた VC や連続起業家でも核心を突いたコメントはできないと考えています。最終的にジャッジを下すのは、B2C であれば消費者、B2B であれば企業という「顧客」しかあり得ません。

最後にもう1つ。ハッカソン、Startup Weekend、アクセラレーターの運営者も、これからは日本においてもシリコンバレーのように、どんどん競争環境の中に置かれていくと思います。与えられた仕組みや時間のなかで、起業させる、プロダクト&サービスをリリースさせる、MVP を完成させる、といったアウトプットが出せない運営者は、徐々に周囲から支援が受けにくくなってくると思われます。これには、いま立ち上がり始めている大学などの教育機関での起業家育成プロフラムも含まれます。

優れた運営者や支援プログラムが出てくれば、起業家やスタートアップがそちを選ぶのは当たり前のことなので、支援する側も相当気合を入れて結果を出していかないと、誰も人が集まらない状況になってしまうのではないでしょうか。

以上、自分のケツを叩く意図も含めて書きました。