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Year: 2014

Hack U x 京都大学 2014 レポート

Yahoo! JAPAN と教育機関が共同開催している、学生のためのモノづくりイベント Hack U (ハックユー)。Hack U は単なるハッカソンではなく、現役の Yahoo! JAPAN エンジニアから様々な技術指導を受けられる点がユニークで、学生は最先端の技術に触れながら、それぞれの作品を作ります。

11月から12月にかけて京都大学で開催された「Hack U x 京都大学」では、当初からイベントに関わらせて頂き、最終日には審査員を務めさせて頂きました。今回はそのレポートを書きたいと思います。

まず、11月21日に京大の吉田キャンパス内にあるファブリケーション施設(モノ作りのための作業スペース)で初回の説明会が開催されました。学園祭の時期と重なったため、学生の参加人数が心配されましたが、2回目の説明会では会場がほぼ満席になる盛況ぶり。Yahoo! JAPAN 大阪支社の方から、過去の Hack U 事例や参加条件などについて説明がありました。

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初回の説明会、京大デザインスクールと Yahoo! JAPAN による共同開催

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2階まで吹き抜けた開放感のある京大ファブリケーション施設、3D プリンターやレーザーカッターなどを常備する

続いて、12月6日のチュートリアル。Yahoo! JAPAN が提供する各種 WebAPI の説明や、それらの WebAPI を使った実装事例などを同社のエンジニアが解説。参加者の学生も、ここで一気にハッカーモードに切り替わり、熱心に最新技術の使い方について聞き入っていました。

Hack U では、必ずしも Yahoo! JAPAN の WebAPI を使用する必要はありませんが、こうやって現場の開発者から指導を受けながら使い方をマスターできる点は、やはりこのハッカソンの特徴かと思います。ちなみに、最終日の発表会では実際に Yahoo! の地図 API を使っていたチームが幾つかありました。

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WebAPI の基本概念について、参加者の大半は情報学系の学生なので、ここは楽勝

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WebAPI の実装事例として最近同社がリリースしたカーナビアプリを紹介

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実装事例の紹介だけでなく、WebAPI を実際に使ったライブコーディングも披露された

チュートリアルが終わると、各チームは開発期間に突入。与えられた時間は12月6日〜20日までの2週間。ハッカソンとしてはちょうど良い長さの開発期間だと思います。この期間中は、各チームは Yahoo! JAPAN 大阪支社を自由に訪問することができ、WebAPI の使い方などの技術指導をエンジニアから直接受けることができます。

あとで聞いた話では、Yahoo! 地図 API のテストを行うために、Yahoo! JAPAN 大阪支社のビルの周りを相当ウロウロしていたチームもあったとのこと。こういった距離感で現場のエンジニアと一緒にモノ作りができる仕組みは、本当に素晴らしいと思います。

そして迎えた12月20日の発表会。最終的に13チームが残りました。場所は京都リサーチパーク内にある京大デザインスクールのワークスペースにて。こちらの施設は、よりソフトウェアとコラボレーションに寄った場所で、オープンな空間でディスカッションしながらモノ作りが行えるようになっています。

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京都リサーチパーク内にある京大デザインスクール、Hack U x 京都大学もバッチリ宣伝

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京都市内が一望できる京都リサーチパークからの眺め

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大学というよりは、IT ベンチャーのオフィスそのものの雰囲気

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ディスカッションのためのスペースも充実

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五山送り火の時は、ここから全て一望できるという好環境、海外からの留学生にも人気がでそう

発表会の当日は Yahoo! JAPAN 執行役員 CMO (兼 YJキャピタル パートナー) の村上さんも参加され、京大の教授陣らも含めて合計6人で審査させて頂きました。それでは各チームの作品を一気に紹介しましょう。

1チーム目:bowmore (バウモア) 『ノリッパ 〜「ノれる」スリッパ〜』
加速度センサーつきのスリッパでリズムを刻み、エンジニアの運動不足を解消

スリッパに取り付けられた加速度センサーで足の動きを検知、音楽にあわせてビートを刻むことでビジュアライザが反応し、心地よい視覚効果と共にエンジニアが運動不足を解消できるという。実際にハードウェアが動作するところも披露。

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マイコンが組み込まれたセンサーをテープで固定した「ノれる」スリッパ、題して「ノリッパ」

2チーム目:最適化数理分野研究室 『こみゅりょ君』
イベントで「独りぼっち」にならないための相手探しツール

人が集まる場所で話し相手がないという状況を解決するために作られたツール。興味のあるキーワードなどを指定することで、相手を見つけやすくする。チーム名が「最適化数理分野研究室」ということで、さぞ高度なアルゴリズムを使っているのかと思いきや、そうでもないということで会場は爆笑。

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キーワード指定による相手探し以外にも、Twitter API 経由で話題を提供してくれる機能も

3チーム目:くわがた 『やる気ボタン』
モチベーションを上げるためにボタン1発で気合を入れてくれるアプリ

楽器の練習を続けるためにはモチベーションの維持が大変だという課題を解決。スマホのアプリを起動してタップすると、気合を入れてくれる YouTube 動画が再生されるという仕組み。動画はユーザーが自由に設定できるが、デフォルトは松岡修造氏。お約束だ。

完全にネタ系のアプリだが、プログラミングの知識が全く無い2人によって、たった2週間で作られたアプリとしては評価したい。

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ボタン1発で松岡修造氏のアツすぎる応援メッセージが動画で流れる

4チーム目:ELEPHANT 『buta』
GPS と連動した家計簿アプリ

出先でお金を払った際に、その金額と内容だけでなく GPS による位置情報も一緒に記録してくれるアプリ。これにより、いつ、どこで、いくら使ったかが視覚的に分かるという。GPS と連動した家計簿アプリは他にもあるが、場所に応じて入力内容をリコメンド(支援)してくれるアプリはこれまでに無かったとのこと。

アプリの完成度が非常に高く、Yahoo! JAPAN の地図 API も完全に実装済み。今回のアプリでなくとも、簡単なアプリであればサクッと作れてしまいそうなチームとして、審査員からも高い評価を得ていました。

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自分の行動パターンが可視化される新しい家計簿アプリ

5チーム目:白湯(さゆ) 『やさしいクリスマス』
カップルのイチャイチャを見えなくするクリスマス専用 AR メガネ

今回のチームの中で「才能の無駄遣い」という言葉が最もしっくりくるチーム。エプソンのスマートグラス製品 MOVERIO と顔認識技術を組み合わせ、街中でカップルらしき2人組を見つけるとリアルタイムでサンタクロースの画像に差し替える。クリスマスを安全に過ごしたい非リア充向けのソリューションだ。

人が3人並んだ映像のうち、右側の2人をカップルと認識して、リアルタイムにサンタクロースの画像に差し替えるデモが実際に披露された。ちなみに現在のバージョンでは、性別までは判別できないため、男が2人でいても「カップル」と認識されるという。Yahoo! JAPAN の村上さんからは、「ぶっちゃけ、人が多い街中では歩けないのでは?」という、もっともらしい意見が出された。

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内容はともかく実装力は高いチーム、流行りのスマートグラスで挑戦

6チーム目:NAGA’+’MINE 『京都大学学生のための熱意ある講義出席管理システム』
出席した講義ではなく「休んだ」講義を管理して単位を落とさなくするツール

すごい時間割 など、講義の出席を管理するツールはすでに存在するが、これは逆に出席しなかった講義を管理するツール。講義を休みすぎて単位を落としかけたという学生本人による、切実なニーズとソリューションを披露。大学の教授からは「もっと出席を促すような作りにしてはどうか」という意見も。優秀すぎて講義に出て来ない学生が多い(?)、京大ならではの事情か。

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Zealous lEcture-attendance maNagement system for KYoto University student から文字をとって、Zenkyu (全休?) と名付けられた疑惑のツール

7チーム目:NEXT VANGUARD 『ARound グルメ』
AR を使って周囲の飲食店の情報をその場でゲット

ぐるなび API を使用して、近隣の飲食店の住所を入手し、スマホカメラを通じて映し出される現実世界に飲食店の情報を投影するアプリ。仕組みとしては一昔前のセカイカメラと同じだが、飲食店のコチコミ情報なども一緒に表示される点が新しいという。ARToolKit を使うことで、こういった AR (拡張現実) アプリも今では比較的簡単に作れるとのこと。

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現実世界に投影された飲食店の情報をデモで披露

8チーム目:8 x 9 = 72 『VicNi』
自分の代わりに「オナラ」をしてくれる身代わり端末

大昔の日本には、身分のある人がオラナをした瞬間に、身代わりとなってオナラをしてくれる比丘尼(びくに)という職務があった。それを現在のテクノロジーで再現しようという試み。硫黄系化合物を検出するセンサーデバイスを使い、匂いを察知すると無線通信で身代わりとなる人の端末からオナラの音が出るという仕組み。

端末の設定により「連帯責任モード」など、様々なシチュエーションにも対応できるとのこと。まさに日本の現代社会を考慮した設計になっている。ちなみに、ベースの端末は Arduino、無線通信は ZigBee、匂いセンサーは TGS2450ということで、結構本格的な実装になっている。デモでは、2台の端末が色々なモードで動作する様子が披露された。

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現代のテクノロジーで比丘尼(びくに)に蘇らせる野心的なプロジェクト

9チーム目:チームチンパン 『大盛り注意報』
AR マーカーで食べ物の大きさを実物大で表示、食べ過ぎを防ぐアプリ

二郎系ラーメンなど、世の中にはそのサイズを知らずに注文すると後で痛い目にあう食べ物が多々存在する。それを AR マーカーを使うことで、スマホ上に実物大の大きさを表示して、事前に食べ物のボリュームを知ろうというアプリ。

表示される食べ物は、実はちゃんと 3D になっていて、スマホカメラをかざす角度を変えると食べ物の見える位置が変わるようになっている。これには、写真から 3D モデルを作ることができる、Autodesk 社の 123D Catch というアプリを使っているとのこと。AR マーカーなしで、それこそ食券機にカメラをかざすだけで食べ物の大きさが分かれば、かなり便利そう。

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スマホ上で食べ物をスムーズに 3D 表示するためにポリゴン数には気を遣ったとのコメント

10チーム目:Makers 『Telepresence Robot「Branch」』
外出先でスマホを操作して、自分の代わりに荷物を受け取ってくれるロボット

結果から先に言えば、今回のハッカソンで優勝を勝ち取ったチーム。出先で宅配便などが受け取れないときに、自分の代わりにサインをして荷物を受け取ってくれるロボット。何はともあれ、まずは実際にロボットが動作する様子を動画でご覧頂きたい。


スマホからの遠隔操作によってロボットがサインをするところ、「山田」という文字を書いている


荷物を受け取ったあとは自分で移動することもできる

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ロボットのベース部分、ありものの組み合わせっぽいが、ちゃんと動作している

ちなみに、このロボットを作ったコアメンバーの2人はすでに就職先が決まっており、それぞれ大手自動車メーカーの T 社と H 社とのこと。さすが京大生。スマホで操作するところが今風。ソフトウェアとロボティクスの融合という観点でも完成度が高く、審査員ほぼ全員が最優秀賞の票を投じました。

11チーム目:きょうも研究やすみます 『KineticBooklog』
自分が読んだ本を記録するログを作る

文字だけでなく、様々な視覚要素と一緒に自分が読んだ本を記録するアプリ。世の中にはすでに様々なブックログ系アプリが存在するが、そういったものと今後どう差別化するのかがポイントになりそう。

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きょうも研究やすみます、という意味深なチーム名

 12チーム目:ラ王 『ひまじろう』
ヒマな人同士をマッチングさせる出会い系アプリ

大学生が参加するハッカソン、Startup Weekend、ビジネスコンテストで必ずといってよいほど出てくる「ヒマな人同士をマッチングさせる」サービス。今回もやはり出てきたという感じ。これだけ何度も登場するということは、よほどのニーズがあるに違いない。ユーザーである学生に徹底的にヒアリングして、今度こそデファクトスタンダードの地位を獲得して欲しい。

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学生向けのイベントで審査員をさせて頂いて、これまで何度も聞いたアイデア、またもや登場

13チーム目:おにぐんそー 『熱血教師系指導アプリ「それでいいのか君の勉強!」』
統計学を用いて勉強時間の効率化を実現

センター試験と2次試験において、限りある勉強時間をどのような科目に割り振るか、それを統計学の視点で最適化してくれるサービス。チームメンバーには京大思修館 の現役生が2名含まれる。プレゼンがとても上手く、聞いていて納得感があった。

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「いつやるか?今でしょ」ではないが、某予備校の先生かと思うほど納得感のあるプレゼン

以上、13チームの紹介でした。

ハッカソンは、いわゆるビジネスコンテストではないため、事業性の面での判断は行われないのが普通。どちらかと言えば、お祭り的な要素の方が強い。なので、参加者が作りたいモノを作るのが基本。そういったフリーな条件にも関わらず、センサーデバイスやスマートグラス、ロボットを使用した作品が多かったのは、やはり時代の流れでしょうか。

イベント終了後に参加者の学生さんと話す機会がありましたが、就職が決まっている人は、やはり関東が勤務地という人がメインでした。これだけの作品を自力で作れる高い能力があるにも関わらず、京大生が関東の会社のための人材供給源になってしまっている感は正直否めませんでした。せっかく京都で学んだ彼らが、就職のために県外に出てしまう現実をここでも目の当たりに。

自分は、いわゆる学生ベンチャーには若干悲観的で、少なくとも数年は社会人経験を積んで起業家としての視野を広げてからスタートアップすることをお勧めしています。今回の参加者の学生さんの中にも就職後に将来起業を考えている人が数名いましたが、たとえ就職先が関東であっても、いつか京都に戻って起業してもらいたいと思っています。それに必要なものは成功事例とサポート体制。彼らが戻ってくるまでには、絶対に環境を改善させます。

最後に、年末の忙しいなかイベントを運営された京大関係者のみなさま、Yahoo! JAPAN 社員のみなさま、お疲れさまでした。審査員に呼んで頂いて、ありがとうございました。来年も楽しみにしています!

京都スタートアップカレッジ2014:2ヶ月間の育成プログラムを終えて

昨日は審査員として 京都スタートアップカレッジ2014 の卒業式 DEMO DAY に参加しました。

京都スタートアップカレッジは、ASTEM (京都高度技術研究所)と京都市が主催している、いわゆる行政によるハンズオン型の起業家育成プログラム。今年が初めての開催となり、10月にオープニングイベントがザ・リッツ・カールトン京都で行われました。

本プログラムでは、チームビルディングからプロダクト開発、ファイナンスなどのコンセプトを2ヶ月かけて学び、最後に DEMO DAY (ピッチイベント) という形で成果を披露します。本格的なアクセラレーターではないため、あくまで入門編的な位置づけになっていますが、自分は今回メンター兼審査員という形でプログラムに携わりました。

行政にありがちな助成金による起業促進ではなく、京都ローカルな起業家や投資家を講師として招いて、できるだけ「実践的な」トレーニングを提供しようとしているところが、特筆すべき点かと思います。さらに、上位チームには創業支援金として数十万円が支給されるほか、京都市内で登記した場合は登記費用の半分を行政が負担するなど、実際の起業を前提とした資金援助の方法もユニークなところ。

それでは、さっそく昨日の DEMO DAY に登壇した6チームを紹介しましょう。

1社目:トノムラ
『男性のトレイ使用時の尿飛沫を「泡」で抑えるプロダクト』

通常の男性は1回のトレイ使用でおよそ1,000滴の尿が飛沫する。これまでこういった尿飛沫を抑えるために便器の底にシート状のマットを敷いたり、泡を発生させる装置を便器に追加したりなどしていたが、家庭用の座るタイプの男女共用の便器では、こういったものが使えなかった。

そこで、高価な泡発生機を使わずに手軽に同じ効果を得ようと開発されたのが今回のプロダクト。「今からデモを行います!」と聞いた瞬間に、まさかパンツを下ろして本当にデモをするのではないかと一瞬ヒヤリとしたものの、事前に用意されていたジョウロによるデモでした。

1回=1袋の使い切りタイプで、用をたす前に便器の中に投入すると水と反応して泡が発生するという仕組み。泡が発生した状態で用を足すと、飛沫量が激減されるというデモが披露されました。

500 Startups の Dave McClure の言葉を借りるならば、アンセクシー (unsexy = クールではない) プロダクトに分類されるかと思いますが、審査員からは家庭用だけでなく、ホテルや共用施設などのトイレでもニーズがあるのではないかという意見も出ていました。

本プログラムに参加する前は PowerPoint という言葉すら知らなかったという彼ですが、たった2ヶ月で working prototype を披露したのは目覚ましい成長率ではないか、という声も審査員からあがっていました。

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同社の経営理念「世の中に存在しない全く新しいものを作ること」

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開発したプロダクトを使ってのデモ(ちなみにパンツは履いたまま)

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1袋あたり7円程度で製造可能、日用品として十分に価格競争力があるとアピール

2社目:Sleep Innovation
『抱きかかえ枕ではなく「抱きかかえられ枕」で睡眠にイノベーションを』

奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST) の学生チーム。カラダ全体を包み込むような大型の枕を使い、内蔵されたセンサーデバイスで枕の中にいる生身の人間を動きを計測。それをクラウドにアップしてデータ解析を行い、睡眠を改善するための様々なフィードバックを行うというプロダクト。

実際にユーザーに製品を使ってもらい、その感想を動画で紹介するなど、プレゼン自体のレベルもかなり高かったです。枕の中のセンサーデバイスは Arduino ベース。チームメンバーも、ソフトウェア・ハードウェア・データ解析の専門家で構成されていため、プロダクトの完成度も非常に高い印象を受けました。

自分もこの枕をカラダに巻きつけてみましたが、そのズッシリとした重さとフワフワの感触が、いかにも安眠を誘発しそうでした。唯一のネックは、現時点でおそらく5万円かかるという製造コスト。ただし、製造分野に詳しいプロがチームに加われば、改善されるかと思いました。

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奈良先端科学技術大学院大学から、わざわざ京都まで通ったチームメンバー

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枕の中に内蔵されている Arduino ベースのセンサーデバイス

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ソフトウェア・ハードウェア・データ解析というバランスの良いチーム構成

3社目:テレコメ
『米国発 tvtag の日本版:テレビを観ながらアプリでお喋り』

スマホのアプリを立ち上げて、いま放送されているテレビ番組の名前をタップすると、Twitter 風のマイクロメッセージングの画面が現れて、同じテレビ番組を観ているユーザー同士で会話ができるというサービス。

米国では tvtag (元 GetGlue) という同種のサービスが立ち上がっており、すでに exit している実績もある。ただし、ビッグデータやデータ販売に詳しい起業家審査員からは、「データ販売は売上として考えないほうが良い、本当に微々たるもの、基本的に自社で有効活用する前提で」といった指摘も。こういった実体験に基づいたフィードバックが得られるのも、本プログラムの特徴かと思いました。

自分個人の感想としては、過去に頓智ドットの「コレミタ」や、その他の IT 企業が何度もチャレンジしている分野だけに、なぜ今回このサービスがうまく行くのかが分かりませんでした。さらに、こういったメディア企業を相手にするサービスは、東京でやった方がよほど効率的で、京都でやるアドバンテージがほとんどない類のサービスだと感じました。

一方で、営業畑とエンジニアというチーム構成は非常にバランスが良いため、ぜひ別のアイデアで勝負してもらえばと期待しています。ここで諦めずにトライ!

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放送局ではネガティブな Twitter コメントは画面に表示することができない、とズバリ指摘

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マネタイズの部分では審査員から幾つかの課題が突きつけられるシーンも

4社目:IROTORI
『手作りアイテムをソーシャルギフトで大切な人に送る』

手作りアイテムの EC サイトで先行している Etsy に、Giftee のようなソーシャルギフトの仕組みを適用したサービス。利用者は発注時に、クリエイターにカスタムオーダーを依頼し、クリエイターはその指示に従って1品ものの「オーダーメイド品」を製作。完成後に商品が友人・家族・恋人に届くという流れ。

このチームは、リッチな表現ができる Etsy としてスタートし、クリエイターが動画などのリッチメディアを自分の商品ページに掲載できる機能をウリに他サービスとの差別化を行うことを狙っていた。しかし、途中からモデルを変えて、現在の形に至った。

個人的には、「自分が1度も観ていない商品を大切な人に送るのか?」という問いがどうしても解けず、なかなか先が見ずらいサービスの印象を受けました。しかし、一方で自分も今まさに妻の手作りアイテムを売る手伝いをしている手前、手作り品とソーシャルギフトの組み合わせの可能性については、かなり興味があります。

今後はぜひ市場のフィードバックを受けて、どんどん改善して欲しいチームだと思いました。

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あなたの思いを色あせさせない、ただ1つのオーダーメイド EC がコンセプト

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クリエイターは利用者とメッセージでやりとりしながら製作を行う

5社目:データ科学
『高齢者のための買い物代行サービス』

今回の参加者の中でも稀な、同分野で既に起業しているチーム。高齢者を介護するヘルパー人材は年々深刻な人材不足に見舞われており、介護人材の確保はもはや国全体の問題となりつつある。一方で介護の現場では、ヘルパーの資格を必要としない作業も多く、そういった作業をクラウドソーシングで仕事の「担い手」をマッチングすることで解決しようとするサービス。

代表はデータ解析の専門家であるため、将来的にはマッチングデータの解析を行うことで、高齢者のニーズを見出すことが狙いとのこと。

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高齢者にターゲットを限定した買い物代行サービス

6社目:Speech Conductor
『音声認識で原稿の「ちょっと先」を機械が読み上げて教えてくれるプレゼン支援ツール』

京都大学教授からの支援を受けて、独自の音声認識技術を確立。この技術を使って、プレゼンターが話す内容をリアルタイムに解析して、いまどこを読み上げているのかを判別。その読み上げている箇所の少し先の文章を機械が音声で読み上げて、プレゼンターのイヤホンにフィードバックしてくれるツール。

予め読み上げる内容が決まっているプレゼン形式、例えば決算説明会、イベントでの商品説明などで威力を発揮する。さらに、英語のネイティブスピーカーではない日本人の教授が学会などで英文を読み上げる際にも、機械が先に英語の文章を読み上げてくれるため、その音声を追従することでスムーズに英語プレゼンができるという。

イヤホンは市販の Bluetooth ヘッドセットが使えるため、特に専用のものは必要ないこともメリット。自分の場合、プレゼンは基本的に全てアドリブですが、決まった文章を読み上げるタイプのプレゼンでは有効なツールだと思いました。

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プレゼンのサポートツール Speech Conductor、略して「スピコン」

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京都大学の知財についても紹介

以上、6チームの紹介でした。本プログラムは来年も開催されることがほぼ決まっているようなので、アナウンスされた際はぜひチャレンジされてはどうでしょうか?

運営者の視点で見た場合、こういった取り組みはとにかく続けることが大切だと思っています。プログラムを継続することで運営側の事業プロデュース力やメンタリングスキルも向上し、卒業者の数も増え、数名は資金調達や何かしらの exit に到達する可能性も出てきます。

また、いつも自分が FI 関西でも言っている通り、「あらゆるフェーズの起業家を受け入れられる」仕組みがあることが、成功するスタートアップ・エコシステムには必要だと考えています。人によっては Startup Weekend が最適な場合もあれば、今回のようなプログラムが最適な場合もあると思います。ベストは、もちろんシリコンバレーのように exit 経験のある起業家が、投資家やアクセラレーターになるまでの完結したエコシステムが関西に出来上がることです。

ということで、参加者のみんさん、卒業おめでとうございます!

「ビジネスプランコンテストにワシを呼ぶな」発言について

日本のスタートアップ界隈の方はすでにご存知かと思いますが、MOVIDA JAPAN の孫泰蔵さんの Facebook 投稿が若干話題になっています。

いつかは誰か著名な方が一石を投じるだろうと思っていましたが、自分も 120% このスタンスを支持します。

自分のようなしょーもない立場の人間でも、関西にいるからというだけで、ビジネスプランコンテストやピッチ大会の審査員依頼を受けることが、最近めっぽう増えてきました。

自分も泰蔵さんと同じスタンスで、プロダクトやサービスが見れないイベントへの審査員要請は「一切全て」お断りさせて頂いています。

逆にハッカソンや Startup Weekend など、何かしらのモノが出来上がることが前提となるイベントには喜んで参加させて頂いています。最近では、さらに一歩進んでハードウェア・スタートアップの作業場となる、ファブラボ的な場所の常駐メンター(Mentor in Residence)などを依頼されることもありますが、こちらも大変ウェルカムです。

残念ながら、近ごろは関西でも「なんちゃらピッチ大会」や「なんちゃらビジコン」という名前で、ただでさえ数少ないスタートアップや起業家を何度も同じ舞台に立たせてピッチさせて、それをもってして「自分はベンチャー育成をやっている」とおっしゃる方がかなり増えてきた印象を受けます。

一昔前であれば、VC やメディアの前でプレゼンする機会は大変貴重でしたが、今は逆に起業家やスタートアップが VC やメディアを選ぶ時代なので、ただアイデアや事業計画を披露するだけの場所は、もはや登壇する側の人間の貴重な時間を無駄にする以外の何物でもないのではと個人的に思い始めています。

今は突出したトラクションや技術、チームがあれば、自ずと VC や支援者が寄ってくるのが現実です。逆に、トラクションや中身がない状態でやたらピッチ大会やメディア(クラウドファンディングのサイト含む)に出ている起業家やスタートアップがいるとすれば、それは物凄い勢いで自身のレピュテーションを下げることになるかと思います。それくらい VC・メディアの世界は狭いです。

もちろん、シリコンバレーにもビジコンやピッチ大会は未だに多く存在していますし、大学や MBA のような座学中心の世界では、まだまだこの手のことは数多く行われている現状もあります。しかし、プロダクトやサービスがないものに幾らコメントしたところで、コメントを受けた側の方も「では再来年に起業したら、頂いたフィードバックを実行しようと思います」といったレベルにしかならないではないでしょうか。

一方で、ビジコンやピッチ大会は全く不要かと言えばそうでもなく、実際に京都の某大学内で開催されたビジコンで優勝して、そのアイデアで学生起業し、まもなく年商が5,000万円を超えることろまで会社を成長させた起業家と、つい先日話をする機会がありました。なので、ビジコンやピッチ大会からも、こういった起業家は産まれる可能性はありますが、彼のように本当に起業して、サポートなしで自力でここまで成長させられる人間はほとんどいません。

もう1つ。プロダクトやサービスがあるチームに対してコメントするにも、3分〜5分程度のデモやピッチを聞いただけでは、どんなに優れた VC や連続起業家でも核心を突いたコメントはできないと考えています。最終的にジャッジを下すのは、B2C であれば消費者、B2B であれば企業という「顧客」しかあり得ません。

最後にもう1つ。ハッカソン、Startup Weekend、アクセラレーターの運営者も、これからは日本においてもシリコンバレーのように、どんどん競争環境の中に置かれていくと思います。与えられた仕組みや時間のなかで、起業させる、プロダクト&サービスをリリースさせる、MVP を完成させる、といったアウトプットが出せない運営者は、徐々に周囲から支援が受けにくくなってくると思われます。これには、いま立ち上がり始めている大学などの教育機関での起業家育成プロフラムも含まれます。

優れた運営者や支援プログラムが出てくれば、起業家やスタートアップがそちを選ぶのは当たり前のことなので、支援する側も相当気合を入れて結果を出していかないと、誰も人が集まらない状況になってしまうのではないでしょうか。

以上、自分のケツを叩く意図も含めて書きました。

大規模ハッカソンの審査員をやって気づいたこ

昨日、TechCrunch Tokyo 2014 ハッカソン に審査員として参加させて頂きました。

自分自身 200人という大規模なハッカソンの審査員をさせて頂くのは初めての体験でしたが、おかげさまで非常に濃い時間を過ごすことができました。結果的に140人が残り、32チームがプレゼンを行うことになりました。

まずは、お声がけ頂いた TechCrunch Japan 西村さんにお礼と、このような大規模なハッカソンを時間通りに進行された Mashup Award (リクルート) の伴野さんに賞賛の言葉を贈りたいと思います。

東の伴野さん、西の角さん(Osaka Innovation Hub / 大阪市)。この2人はおそらく日本で数少ない「ハッカソン職人」ではないかと思っています。ぶっちゃけ、プレゼン終了後の審査員会議でも、このレベルの人たちであれば独立してハッカソン請負スタートアップとして食っていけるのでは、という話も出たくらいです。

今回のハッカソンは Intel の IoT プラットフォーム「Edison / Galileo」、ソフトバンクの感情認識ロボ「Pepper」が3台も支給されるなどもあって、積極的にハードウェアを使ったハッキングを試みるチームがたくさんありました。

なかには、あり得ないテーマであり得ない API の組み合わせを実現し、会場を爆笑と驚きで完全に rock したチームもあり、もはやテクロノジーを使った高レベルな漫才を見ているかのような雰囲気でした。ハッカソンの上位5チームは明日火曜日から開催される TechCrunch Tokyo 2014 の本編にて、LT (ライトニング・トーク) で出場するとのことなので、ぜひお楽しみに。

さて、そんな濃いイベントを通じて1つ気づいたことがあります。それは、ハードウェアを扱っているがゆえに発生する数々のトラブルの多さです。

今回は発表するチームの数が多いため、1チームあたり3分という短いプレゼン時間だけが与えられ、その内容もデモをメインにすることとなっていました。セットアップの時間も短かったこともあってか、特に Edison や Pepper を使ったチームのデモはなかなか思うように動作していなかったようでした。

そのようなシーンに直面した時に、自分はプレゼンターの対処法を注意深く見るようにしているのですが、今回はほぼ全員、アドリブのトークや事前に撮影しておいた動画などで見事に切り抜けて、うまく対処していました。これは、参加者の半数以上がエンジニアというハッカソンの属性を考えても、あまり見ない光景で、今回自分が一番印象を受けたのが、まさにこの部分でした。

ビジネスを立ち上げて起業すると、想定外のことや逆境が常に降りかかって来ますが、いわゆる成功する起業家というのは共通して、これらに瞬間的にかつクールに対応するスキルと度胸を持ち合わせています。

自分も過去にデモで持参したハードウェアがうまく動かなかったり、前日まで問題なく動作していた製品が客先への納品直後からトラブルを起こしたりと、そういったことは何度も経験してきましたが、そこで慌てふためくとかえって問題が大きくなることもあったように思います。

スタートアップの起業家の中でも、銀行口座の残高があと数ヶ月分という状態で VC から資金調達をクローズした、という話を希に聞きますが、そういったある種の「面の皮の厚さ」みたいなものは厳しい生存環境の中で生き延びていくために絶対に必要なスキルだと考えています。

今回、トラブルに見舞われたチームのプレゼンターの方々は、その点見事にクリアされていたので、イベント終了後の交流会で彼らを捕まえては「あなたには経営者の資質があるのではないか」と直接ご本人にも伝えさせて頂きました。

日本人のプレゼン力の低さは以前から指摘されていましたが、こういったハッカソンに毎回参加することで、半ば強制的にプレゼン力が磨かれるため、自分はもっと多くの人に参加して頂きたいと思っています。

一時期、ハッカソン自体が下火になったころは「結局ハッカソンって企業の API / SDK の宣伝でしょ?」という風潮があったことも確かですが、長い目でみてハッカソンにはテック系人材の『人間力』の向上という業界全体・日本全体の底上げにつながっているのではないかと最近考えるようになりました。

これからは、さらに分野を限定した「農業 x IT ハッカソン」なんてのも面白いかもしれません。土まみれになりながら最新のハードウェア・IT を駆使して、世の中の問題解決にチャレンジするのも、そろそろ時代の流れにマッチしてくるのではないでしょうか。

最後に運営スタッフ&審査員のみなさま、140名の参加者の方々、お疲れさまでした!

シリコンバレーや東京にできない「地方スタートアップ」の戦い方とは

本記事は TechCrunch Japan に寄稿させて頂いたものです。

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スタートアップにおける地方創生

「地方創生」というキーワードを新聞やテレビで最近よく目にするようになりましたが、スタートアップにおける地方創生と聞いて、みなさん何を想像するでしょうか?

人によっては、地方に移住して起業することを想像される方もいるでしょう。モノ作りや農業など、地方の強みを後押しする助成金のことを想像される方もいるでしょう。すでに地方でスタートアップされている方は、地元での雇用創出がそれにあたるかもしれません。

京都という地方都市で、ベンチャー・キャピタルの仕事に携わらせて頂いて1年余りが経過しました。そんな短い経験ながら自分が見てきた「地方でスタートアップする現実と可能性」について、今回は触れてみたいと思います。

まず始めに簡単な自己紹介から。

京都のお隣、滋賀の高校を卒業後、18歳で単身渡米。カリフォルニア州立大学でコンピューター科学を専攻し、卒業後は株式会社ソニー・コンピューターエンタテインメントに入社。エンジニアとしてゲーム機PlayStationの開発に3年ほど携わりました。

その後、アメリカ留学時代の仲間たちと一緒にITとハードウェアを扱うベンチャー企業を東京で数社創業。そこではいずれもCTOという肩書きでした。30代後半に差し掛かるタイミングで、生まれ育った関西に戻ることを決意。結婚を経て家族を持ち、京都に根をおろすことになりました。

そんな折、京都大学のベンチャーファンド(2号ファンド)の立ち上げの話を頂いたのが、今から2年前の2012年の冬。それ以来、自分がいま所属するベンチャー・キャピタルである、みやこキャピタルに籍を置かせて頂いています。

実は関西に戻った当初は、現在のような活動をやろうとは考えておらず、ましてやVCの仕事をするとは想像もしていませんでした。一方で、関西のスタートアップを取り巻く環境に対する理解が深まるにつれて、アメリカ西海岸や東京にあって、関西に足りないものが明確に見えてくるようになりました。

関西には尖った人材や優れた技術がたくさん存在しているにも関わらず、それらがベンチャー企業の創出や強みに十分に活かされていない。この現状をなんとか改善したいという想いが、今の自分のモチベーションになっています。

地方でしか出来ない戦い方を実践する

さて、今回のタイトルである「地方でスタートアップする現実と可能性」ですが、いわゆる「地方都市に第2のシリコンバレーを作ろう」といった類いの話ではありません。むしろ、その逆で「シリコンバレーや東京に出来ない戦い方を地方で実践しよう」といった内容に近いかもしれません。

色々な戦い方がある中で、自分がいま最も注目しているのが、大学で産まれた技術を使って事業を立ち上げる大学発シーズの活用です。同じような言葉に「大学発ベンチャー」というものがありますが、こちらは大学に所属している研究者や学生が会社を作るというイメージが強いため、あえて自分は「大学発シーズの活用」という言い方をするようにしています。

ご存知の通り、関西を含む地方には多くの大学や教育機関が存在していますが、日本では大学発シーズを使ったベンチャー企業の成功事例は、海外に比べてまだまだ少ないように思います。

海外ではスタンフォード大学の教授自らが出資して学生に起業させたGoogleなど、自分たちの生活の身近なところに、その成功事例の影響が及んできています。なぜ、日本ではこういった成功事例が少ないのでしょうか。

投資先に見る「大学発シーズ」の活用事例

現在弊社で投資・支援させて頂いているベンチャー企業に、京都大学のiPS細胞技術を使ったiHeart Japanという会社があります。みなさんもご存知のiPS細胞ですが、その中でも特に心臓疾患に対する次世代医療を実現しようとしているバイオ系ベンチャー企業です。

バイオ系ベンチャー企業はR&Dにかかる時間や費用が、通常のベンチャー企業のそれよりもかなり大きいことから、大学発シーズの活用事例としてよく挙げられます。同社もまさに京大発のシーズを活用することで、他のベンチャー企業にはない強みを得て事業化を試みています。

では、バイオの専門家でないと大学発シーズは活用できないのかと言えば、そうでもありません。同じく先日、東京大学のベンチャー・キャピタルであるUTECを含むVC3社で共同投資させて頂いたお金のデザインは、ITx金融という分野で大学発シーズを活用しようとしています。

moneydesign

FinanceとTechnologyをあわせてFinTech系ベンチャー企業などと呼んだりしますが、同社は京都大学教授で資産運用研究者の第一人者である加藤康之先生の協力を得て、これもまた他のベンチャー企業にはない強みを自社サービスに取り入れようとしています。

さらにもう1社、弊社で支援させて頂いているIT系ベンチャー企業のNOTAも京都大学の石田・松原研究室との共同研究や協業を行っています。同社はGyazoという静止画・動画の瞬間共有サービスを運営しており、現在世界中で800万人のユーザーを抱えています。Gyazoの開発メンバーの多くは現役京大生や京大卒業生で構成されていて、コアメンバーとして慶應義塾大学の増井俊之教授も参画されています。

gyazo

上記の3社は、弊社の支援先ということで今回紹介させて頂きましたが、共通しているのは何かしらの形で大学発のシーズや大学の人材を活用して自社の強みにしている、ということです。と、ここまで言うと「優れた技術を大学で見つけて事業化すれば強みにつながるのか」と安易に結論づけされる方もいますが、それでは一昔前の技術・知財先行型大学発ベンチャーのムーブメントと何ら変わりありません。

お金を払ってくれる人がどれだけいるのか

大切なのは、その技術を使って産み出されるプロダクト・サービスに対して、お金を払ってくれる人がどれだけいるのか、という視点で大学発シーズを見るということだと思います。逆にお金を払ってくれる人がいなければ、どんなに優れた技術も事業としては継続できなくなり、結果、世の中にインパクトを与えることもできません。

スタートアップの世界ではProduct-Market Fit(顧客が抱える問題を正しく解決して、顧客から対価が得られている状態)の是非が非常に重要ですが、大学発シーズを利用したベンチャー企業においても、今後はこの考え方が日本でも当たり前になるのではないでしょうか。

では翻って、こういった顧客目線でのプロダクト・サービス開発を今まで散々実践してきたのは誰かと言えば、それはやはり起業家であって、スタートアップであるわけです。そして起業家とスタートアップは、アメリカ西海岸や東京だけでなく、当然地方にもたくさんいます。しかし、地方にいる起業家やスタートアップの中には、なぜかアメリカ西海岸や東京と「同じような戦い方」をされる方が意外に多いのも事実です。

これが今回のタイトルである「地方でスタートアップする現実と可能性」の『現実』の部分です。つまり、自分の住んでいる土地の強みを最大限活かせていないのではないか、という主張です。

地方のスタートアップは観光ビジネスと同じ

地方でスタートアップするということは、観光ビジネスを立ち上げることと似ていて、その土地でしか得られないリソースを使って差別化なり勝負するということだと考えています。

人口たった150万人の地方都市である京都に、なぜ年間5,000万人もの観光客が訪れるのかといえば、それは京都にしかないものがそこにあるから来るわけです。それと同じ考え方を地方のベンチャー企業にも当てはめれば、他社がマネできない『圧倒的な』強みを取り入れられるのではないでしょうか。

これまで1年に渡って多くの研究者の方々や、起業検討中の学生の方々とディスカッションさせて頂きましたが、おおむね彼らの課題は共通していたように思います。それは「事業化を支援してくれるベンチャー経験者が身近にいない」というものです。

一方で、地方のスタートアップの方々に話を聞くと「大きな事業につながりそうなネタがない」「ネットだけで実現できるサービスにはそろそろ限界を感じている」「ビジネスも人材も東京一極集中で地方は不利」といった声が多くあったように思います。

これが、後半の『可能性』につながる話になります。この可能性とは、地方におけるアカデミアとスタートアップの間のギャップのことを指しており、これを埋めることが地方にしかできない戦い方の1つになるのではないかと考えています。

これまで、地方のスタートアップはあくまで自前主義で、大学との共同研究などというものは大企業がやるもの、と考えていた節があったように思います。自分が話をさせて頂いた研究者の方々の中には、「自分は気象学の専門家だが、ビッグデータが得意なIT専門家がいれば事業化の可能性がさらに高まるのに」といった声もあり、なぜスタートアップはこういう所にもっと積極的に出て行かないのかと思うことが多々ありました。

あえて語弊を恐れずに言えば、ウェブブラウザやスマホの中だけで起こせるイノベーションは、もうほぼ限界に達していると自分は考えています。実際問題、現在リリースされているIT系サービスはどんどんニッチなってきており、コンシューマー向けサービスに至っては、もはや広告費をどれだけ投入できるかという勝負に集約されているところもあります。最近のIoTムーブメントは、そういった「ネットサービスの行き詰まり感」を反映しているところもあるのではないでしょうか。

アカデミアとスタートアップが一緒になる方法

ズバリ、次の3つだと考えています。

1、アカデミアでの起業家教育
2、起業を志す人が集まる場所
3、成功事例

1番目の起業家教育については、例えば京都大学ではGlobal Technology Entrepreneurship Program(GTEP)という名前で今年の秋から本格的な起業家教育プログラムを開始しています。いわゆるMBAのような座学ではなく、プロトタイプ(試作品)を作り、実際の市場で仮説検証と顧客開発を行い、最後のデモデーで成果を披露するというGTEPのやり方は、民間のスタートアップ・アクセラレーターのそれに近いものがあります。

gtep

GTEPは、文部科学省のEDGEプログラムの一環で、京都大学の他にも大阪大学、立命館大学、奈良先端科学技術大学院大学、滋賀医科大学、大阪府立大学などの地方大学でも同様のプログラムが開催されることになっています。

2番目の人が集まる場所は、関西で言えば2013年4月に開業したグランフロント大阪と同時に開設された大阪イノベーションハブ(通称OIH)が間違いなくそれにあたるかと思います。OIHでは、ほぼ毎日ハッカソンや起業に関するイベントが開催されています。福岡で言えば、最近オープンしたスタートアップカフェが、その機能を担うものと期待されています。

ということで、1番目と2番目はどの地方でも意識の高い人がトップダウンでやれば実現できる類いのものですが、3番目の成功事例だけは、これは関係者全員でゼロから作り出すしかありません。自分が拠点にしている関西は、すでに1番目と2番目はクリアしているため、いよいよ3番目の成功事例をこれから作り出すフェーズに入りつつあります。

大学発のシーズや大学の人材を活用して、世の中に大きなインパクトを与えるベンチャー企業が1社創出されれば、冒頭で述べた日本での成功事例の少なさはおのずと解消されてくると考えています。そして、そう遠くない時期にそれが達成されると感じています。

いかがでしたでしょうか。もちろん大学発シーズを活用することだけが、地方での唯一の戦い方ではありませんが、その土地にしかないリソースを使って差別化を行うという意味では、参考になったのではないかと思います。

日本の活力は地方から。ぜひ実現していきましょう。

[原文へ]

関西で米国式のアクセラレータを立ち上げみて学んだこと

先日、ファウンダー・インスティテュート関西の第一期生が無事に卒業を迎えることができました。

記事:徹底した育成プログラムで次世代の起業家を輩出する:ファウンダーインスティテュート関西第一期デモデイ – The Bridge

学期中にレクチャーして頂いたメンターの方々、資金面などでご協力頂いたスポンサー企業様、これらの方からのお力添えがなければ到底達成できませんでした。この場を借りてお礼を申し上げます。来学期以降も、引き続きよろしくお願いします。

いま思い返すと、関西でのアクセラレータの立ち上げを模索し始めたのは、2013年8月に このスライド資料 を書いた辺りからでした。

communities-book

米国 Boulder の VC で TechStars の創業にも深く関与している Brad Feld の著書 Startup Communities を読んだのがそもそもの始まりでしたが、当時は FI のような本格的なアクセラレータではなく、General Assembly のようなコミュニティレベルのワークショップの仕組みを米国から輸入して、起業やスタートアップに関するノウハウを地域のメンバー間で共有するところから始めようと考えていました。

シンガポールに滞在していた時に、TechStars 傘下の JFDI Asia を何度か訪問していたので、アジアでも米国型の本格的なアクセラレータを展開できることは知っていました。一方で、いきなり TechStars のような 1st tier のアクセラレータを日本に、ましてや関西に持ち込んだところで、参加できるレベルの起業家やスタートアップは、残念ながら相当少ないだろうということも事前に分かっていました。

なので、まずは 2nd/3rd tier あたりの仕組みを探してきて、関西に輸入しようというのが当時の目論みでした。関西には Startup Weekend のようなコミュニティレベルの起業イベントと、極少数の VC しか存在しない。まずはこの現実を直視して、その間のギャップを埋めるための仕組みを作れないかと模索していました。

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FI 説明資料からの抜粋(全文は こちら

そんな折に、関西で FI の立ち上げを模索している方々がいると聞いたのが昨年の12月。自分がチームに加わって、立ち上げの活動を開始したのが今年の2月。5月のオープンから逆算すると、たった3ヶ月で運営の体制作り(メンター&スポンサー集め、教材の翻訳、契約書の作成など)と集客をやったことになります。

3ヶ月間の告知期間では100名以上の方々に説明会イベントにお越し頂き、その中から実際に50名の起業家から FI への参加申し込みがありました。春学期は厳選された20名の起業家で開始し、その結果、5名の起業家が先日卒業を迎えました。

振り返ると、スピードとコミットメントが重要だったのではないかと思っています。スタートアップを育成する組織である以上、スタートアップよりも多い運動量と速いスピードで活動しなければ、スタートアップの育成なんて出来ないのではないか、というのが自身の結論です。

ふざけた言い方かもしれませんが、自分は2月に FI の立ち上げが決まってからは、ドラゴンボールで言うところの 界王拳 をずっとオンにした状態だったように思います。おそらく普段の 200% 〜 300% くらいのエネルギーを注ぎ込んでいました。

関西でアクセラレータを立ち上げる経験を通じて学んだことは、米国式にしろ、日本式にしろ、あらゆる組織は「全身全霊」で取り組まなければ立ち上がらないし、結果を出せない、というごく当たり前のことでした。これは、今まで自分が立ち上げてきたスタートアップにも全く通じるところがあります。

全身全霊で取り組んでいると、どこからか支援してくれる仲間が現れ、さらにその仲間が別の仲間を呼んでくるという、人間関係のポジティブなループが生まれてきます。自分は今回、幸いにしてこのループの中に入れたような気がします。

手を抜かずに全力でやっていれば、その熱量は必ず他人に伝播するということです。人によっては、これを「ホットスポット」と表現される方もいます。スタートアップを含むあらゆる組織やコミュニティにおいて、このホットスポットの有無が、実は成功の大きな要因の1つだと思っています。

逆に、組織の立ち上げメンバーの中にフルコミットできない人や、投入する時間と費用対効果を最初から天秤にかけているような人がいれば、即刻チームから外した方が良いと思います。そのような考え方を持つ人は、短期間で組織を立ち上げるチームのメンバーにはふさわしくありません。残念ながら、経験豊かなビジネスマンやスマートな人材ほど、こういった傾向が強く見られます。

そのような人がメンバーにいると、ホットスポットを作るどころの話ではなく、チーム全体が常に後ろ向きなディスカッションを繰り返す状態に陥ります。なので、どれだけ経験豊富で即戦力な人材であっても、こういった人は絶対にチームに加えるべきではありません。

関西の FI から第一期生を輩出して、それなりの結果は残せましたが、当然ながら課題も見つかりました。それは、関西にあったスキームの模索です。個人的な考えではありますが、関西ではいわゆる 100% IT 銘柄のスタートアップの立ち上げは、土地としてあまり向いていないと思っています。

もちろん、関西にはすでに上場している企業も含めて素晴らしい IT 企業やベンチャーがたくさんありますが、現実問題として、東京や東南アジアと関西の IT 人材の差は年々大きくなるばかりです。自分は、関西が本来強みとする分野で勝負すべきと常々考えていて、これを FI のセッションでも繰り返し述べてきました。

それは、ハードウェアを含むモノ作り、食・観光・文化、そして大学などの教育機関との連携。この3点です。

それぞれの強みを説明すると長くなるので、これはまた別の機会に譲るとして、個人的には最後の教育機関との連携が、最も大きなインパクトを出せると考えています。今回の春学期でも、現役の京大生と社会人が FI で出会ってチームが産まれ、一緒にスタートアップするという事例を1つ作ることが出来ましたが、こういった事例を半ば意図的に今後は産み出したいと思っています。

大学側は必ずしも学生である必要はないです。教授や研究者であってもよく、さらに言えば、スタートアップでは取れないような大きなリスクを取って R&D を経たユニークな技術や知財を所有している人物、もしくはチームが望ましいです。そういったアカデミアの人材と、起業家精神を持つ外部の社会人が FI で出会ってスタートアップを形成、そして実際に起業するという流れが理想型です。

現在の VC の仕事をさせて頂くようになってから、大学の研究機関に出入りすることが多くなり、いわゆる大学内に眠るシーズ(事業のネタ、先進的な技術、知財など)を拝見させて頂く機会が徐々に増えてきました。一方で、これらを世の中に出すためには、アカデミア単体の努力だけでは難しく、外部の人材や知恵を入れて、それぞれのビジネスにあった会社組織をゼロから作らなければ、せっかくのシーズも眠ったままになるケースが多いことも見えてきました。

さらに、アカデミアに関連するところでは学生発ベンチャーの視野の狭さ、という問題があります。学生主体のビジネスプランコンテンストやピッチコンテストを聞いていても、そのほとんどがソーシャル系(何かを共有する系)、マッチング系(出会い系含む)、ビジネスとして成立しなさそうな超ニッチ系のいずれかに分類されます。

これは無理もなく、社会に出ていない学生だけのチームでは、世の中の大きな問題や課題に気づけていない、もしくはそれが問題や課題であると実感できないので、おのずと自分の身近な(小さな)問題に対する解決というところに収まりがちです。ここに、いわゆる「大人」が参画することで、Facebook のザッカバーグのように学生仲間を遥かに超えた大きなスケールに挑む事ができるのではないかと思っています。

そういったアカデミア周辺の課題に対する解決策の1つとして、FI 関西を積極的に活用できればと考えています。もちろん、教育機関との連携以外でも、先の2つの強みにあたる、モノ作りと食・観光・文化に関するスタートアップは、FI 関西でも特に注力していきます。

さて、最後に告知です。FI 関西では年2回の学期開催を予定しています。関西での FI 運営に携わってみたいと思われる方は、ぜひこちらの ディレクター募集の記事 をご覧ください。さらに、学生インターンも 引き続き募集 しています。学生インターンは、現在京大、立命館、阪大、神戸大、神戸外大などの関西の主要大学から来て頂いています。

組織を立ち上げるというフェーズはひとまず終わったので、あとはひたすら改善を繰り返しながら、一人でも多くの優れた起業家の輩出に注力するというフェーズに今後は移行します。大学との連携といった作業も今後は想定されます。そして、世の中にインパクトを与えて、かつ沢山の雇用を創出する、いわゆるメガベンチャーを最低1社、数年以内に関西から輩出します。舞台はもちろん世界です。関西でもなければ、日本でもないです。

我こそはと思った方は、ぜひご連絡ください。

今の時代における P2P の役割り

この分野は少しだけ自分の専門なので、軽く考察したいと思います。

米Yahoo、イスラエルのビデオ配信スタートアップのRayVを買収 – THE BRIDGE

2000年後半、動画配信系のスタートアップを自分でやっていたころは、動画コンテンツの配信コストが今よりも随分と高く、自社で数ギガの専用線をデータセンターに引いて、そこから各視聴者の端末にコンテンツを直接配信するということをやっていました。

そんな中、配信コストを大幅に削減することに成功したというタレコミで登場したのが、Skype の創業者である Niklas Zennström と Janus Friis によって作られた P2P 型の動画配信サービス Joost だったわけですが、結果的に言うと Joost はうまく行きませんでした。

Joost がうまく行かなかった理由は色々と考えられますが、大きなところは、1)専用クライアントアプリをダウンロードする必要があった。2)視聴者が見たいと思うコンテンツを確保できなかった。3)P2P のメリットが活かされなかった。という3点だと自分では分析しています。

1)については、その後ウェブベースに移行して専用アプリのダウンロードは不要になったものの、それにより P2P のメリットが完全になくなり、その後も状況も改善されることはなく、サービスは 2012 年にシャットダウンされました。

今回、Yahoo が買収した RayV は、細かい技術は異なるものの基本的には Joost と同じ P2P 型の動画配信プラットフォームを提供するスタートアップです。

なぜ、Yahoo が P2P 型の動画配信プラットフォームを買収するのかという話ですが、それは一重に先にアナウンスされたライブ動画配信サービスの Live Nation との協業によるもので、ここに RayV の技術を投入することで大きなメリットが得られるという公算ではないでしょうか。(事実、海外のメディアでは既にそのように今回の M&A の目的を定義している様子ですが。)

P2P 型の動画配信で最大限のメリットを得るためには、一度に大勢の視聴者が「同じ」コンテンツを視聴する必要があります。

P2P は、その仕組み上、動画コンテンツを配信サーバーからではなく、ネットワーク上の距離で近いところにある他の視聴者の端末から動画コンテンツを取得します。要するに BitTorrent などの P2P 型ファイル共有と同じ仕組みです。

なので、ある大物アーティストのライブ映像を100万人の視聴者が同時に視聴した場合、配信サーバーから送出されるオリジナルの動画コンテンツのデータ量はごくわずかで、残りは視聴者の端末(PC、スマホなど)同士で勝手に配信が行われます。

動画を配信する事業者側からすれば、P2P 技術を採用することで配信コストが低く抑えられるうえに、配信サーバーからネットワーク上で距離の遠いところに視聴者が居ても、その視聴者の近くに同じ動画コンテンツを視聴しているユーザーがいれば、少なくともそのエリア近辺では遅延なくライブ動画を配信できるという、一石二鳥のようなソリューションが手に入るわけです。

ただし、これを実現するためには、上に書いたように、一度に大勢の視聴者が「同じ」コンテンツを視聴する必要があるため、YouTube のようなストック型で、かつロングテールの動画配信サービスにはそもそも向きません。なぜなら、YouTube のようなサービスでは、100万人が一度に同じ動画コンテンツを同じ時間帯に視聴するというシチュエーションは、ほぼ発生しないためです。

なので、今回の Yahoo (Live Nation) と RayV のような、ライブ映像に限定した P2P 技術の採用は非常に賢い選択だと言えます。

前置きが長くなりましたが、ここからが今回の投稿の本題です。

一説では、2020年にはインターネットに繋がる端末の数は500億台を超えると試算されていますが、このような膨大な数の端末がネットに接続されて、端末同士でデータのやりとりを行うようになると、今で言う「ビッグデータ」の比ではない天文学的なデータ量が、毎日ネット上を飛び交うようになります。

そんな時代になると、全てのデータをクラウド(サーバー)で一旦受け取って、然るべき処理やフィルタリングを行った後に、再度別の端末に配信するという今までの仕組みは引き続き使わるものの、一方で、一部では配信コストや遅延の観点から P2P 技術が再度見直されるのではないかと考えています。

今回の RayV は、動画コンテンツに限った話ですが、今後は IoT に舞台を移して、ヘルスケアや個人情報などのセンシティブなデータに特化したセキュアな P2P、Bluetooth / NFC / Internet など通信手段を選ばない P2P、IoT に使われるロープロファイルのハードウェアで効率良く動作する P2P など、様々なバリエーションが出てくると予想され、この分野でのさらなるビジネスチャンスがあるとも考えています。

世の中、IoT 端末、IoT ガジェット、なんちゃら向け IoT 製品と、エンドユーザー向けのプロダクトばかりに注目が行きがちですが、ゴールドラッシュで儲けた人は、結局のところ「つるはし」を作って売った人だという格言がある通り、来るべく IoT 時代に向けて、必要なインフラを作って売る商売が、実が一番面白いのではないかと最近つくづく思う次第です。

というわけで、ハードウェア大国に住む関西の起業家&スタートアップのみなさん、頑張りましょう!(笑)

スタートアップにみられる3つの誤解

1、起業家精神とは幸せへの近道である

現実:そうとは限らない。自身の会社や自分のやっていることに対して、100% 情熱を持っている起業家にとってはスタートアップは幸せへの近道になる。ただし、スタートアップ人生には困難がつきもの。出来たばかりの会社に見られるあらゆるリスクや不安定要因によって、日中の業務はストレスで一杯になり、そのストレスは仕事が終わっても消えることがない。

「スタートアップをやる時は、あらゆるものをリスクにさらすことになる。夜な夜な目が覚めて、自分の会社のことを考え続ける。もし自分の会社が失敗したら、自分の人生・家族・評判に対していったい何が起きるのか考え続けることになるだろう。」

2、いつどんな時間でも働くことができる

現実:テクニカルに言えば、イエス。起業家は、活動可能な時間の中から実際に活動する時間を「自分で」決める。以下は、Everonote の CEO (FI のメンターでもある) Phil Libin によるフレーズ。

「起業家は、いつでも好きな時に1日20時間働くことができる。」
(このジョークをどう受け取るかは起業家次第。)

シリコンバレーで管理職コンサルティングを手掛ける Invisor Consulting の Managing Partner である Steve Tobak によるフレーズ。

「起業すると、あらゆる職務を自分一人でこなし、長い期間に渡って1日24時間・週7日働き続ける状況に直面するだろう。それ自体はまったく悪いことではない、ただし、そういった状況下では全ての人が自由とコントロールを感じるとは限らない。」
(つまり起業して何でも自分でこなすようになったからといって、それが完全なる自由とコントロールを意味するわけではない。)

3、個人の時間がたくさん持てるようになる

現実:絶対にそんなことにはならない。なんちゃって起業家(英語で “Wantrepreneurs”) は、起業することによって家族・友人・楽しいこと・「そしてさらに」成功するベンチャー企業を一度に手にする事ができると信じている。しかし、犠牲は常に起業家自身の個人的なもので払われることになる。

連続起業家であり、テクノロジー起業家の教育者でもある Peter Hinssen によるフレーズ。

「スタートアップするということは、家族に対してわずかな時間しか持てず、ソーシャルライフや祝日・祭日に対して全く時間が持てなくなるということ。あらゆる時間は自分のスタートアップのことを考える時間に捧げることになる。」

なので、Forbes 誌のカバーを飾っている CEO 達に想いを馳せる前に、自分は全てを手に入れることはないことを自覚して欲しい。成功した起業家の多くは、実はワークライフ・バランスが上手く出来ていない。絶対に不可能ではないにしろ、ワークライフ・バランスは仕事のためにねじ曲げられることになるだろう。

最後に、この諺(ことわざ)は正しい。

「愛する仕事を選びなさい。そうすれば人生で一日たりとも働く必要はなくなる。」

転載元:ファウンダー・インスティテュート関西 Facebook ページ

あらゆるスタートアップがコピーすべき Google で学んだ7つのこと

全米3位のアクセラレータ AngelPad の創業者 Thomas Korte による、「あらゆるスタートアップがコピーすべき Google で学んだ7つのこと」について。

1. Ask “why not”? … not “why!”

「なぜ?」ではなく、「なぜそうでないのか?」を問うこと。例えば、セルゲイ(Google の創業者)はいつも「なぜもっとやれないのか?」「なぜもっと速くならないのか?」「なぜ既存のルールを壊す事ができないのか?」と問い続けていた。

2. No Opinions, just Data!

Google では会議に出席して “I think … (私の考えは …)” と発言することは許されない。A/B テストの結果などのデータが全て。データが無い状態で会議に挑むと、意見だけが先行して、結局一番声の大きい人の意見が通る。

3. There is no such things as over-communication

コミュニケーションの取り過ぎなんてことはありえない。Google では MoMA という社員向けのイントラネットがあって、IPO の前までは、社内のあらゆる情報がイントラネットで共有されていた。あらゆる情報が共有されて、over communication (コミュニケーションの取り過ぎ)とも言える状態になると、会社が完全に透明化されて、社員は会社を「信用」するようになる。

4. Ask for forgiveness, not for permission

Google では本をスキャンしてオンラインに載せたことで、問題になったことがあった。結果的にそれが Google Books につながったが。タクシー配送サービスの UBER は、ビジネスを始める際に政府やタクシー業界に permission (許可) を事前に得たわけではない。とにかくビジネスを作り出して実践しただけ。後から forgiveness (許し) を請う形で良い。このカルチャーはシリコンバレーでは他の土地よりも根付いているが、もっと根付かさなければいけない。

5. Hire for the company, not for the job

Google が成功した理由の1つは明らかに hiring (雇用) だった。スタートアップでは、job (職種) に合わせて人材を雇用しては絶対にいけない。例えば、UX デザイナーという職種だけで人材を採用した場合、その人材は数ヶ月後には必要なくなるかもしれない。それは会社で必要とされるスキルやテクノロジーが常に変わり続けるため。代わりに、会社のカルチャーにフィットする人材を雇用する。Google では “Do they solve problems?” (彼らは問題を解決することができるか?)、そして “We hire people lile us.” (我々は自分たちに似た人材を雇用する) というルールがあった。

6. Give a license to dream

Google では仕事に全く関係ないプロジェクトに自分の 20% の時間を使うことが許された。とてもスマートな人材に、会社が定義した業務範囲以外の自由な枠を与えると、とんでもなくクールなものを作ることが分かった。昔、マリッサ (元 Google 副社長) が調査したところ、2005 年にローンチされたプロダクトは半分が、実は 20% の自由時間によって作られたものだと分かった。

7. Think money last and users first

ユーザーを優先させ、利益は最後に考える。今はアプリの削除なんて一瞬で出来てしまうので、ユーザーに対して正しいことを行わなければ、あっという間にユーザーを失うことになる。逆に、ユーザーに対して正しいことをやり続ければ、利益は後から自ずとついてくる。ただし、これは利益のことを全く考えなくて良いということではない。
Google はクールなテクノロジーだけを作って、利益のことを考えていない会社だと言われることが良くあるが、実際はそうでない。Google では “Build cash register early.” (収益源をできるだけ早く作れ) という格言がある。

転載元:ファウンダー・インスティテュート関西 Facebook Page

スタートアップアクセラレーターは実践的であるべき

MOVIDA さんの体制変更の記事を受けて、たまにはタイムリーな話題について書いてみようと思います。

スタートアップをアクセラレート(自分は「支援」という言葉があまりしっくりこないので成長を加速させるという意味で「アクセラレート」と呼ぶようにしています)する側の立場としては、この MOVIDA さんの体制変更はちょっとしたインパクトがあるのではないかと思っています。

というのも、これまでスタートアップアクセラレータといえば、

1)受け入れと同時に小額出資を実施(強制)
2)3〜6ヶ月間をかけて集中育成
3)育成内容は講義が中心、またはメンター経由で各スタートアップ個別メニュー

といった感じでした。

しかし、ここに来て日本国内においてプレゼンスの高い MOVIDA さんが、500万円の出資を強制からオプションに、育成内容を講義中心から実践的なブートキャンプ形式に、育成期間を6ヶ月から4ヶ月に変更するということは、ぶっちゃけ我々がやっている ファウンダー・インスティテュート関西 にかなり近い内容になってきていると率直に思いました。

自分は、講義や座学では厳しいベンチャー世界を生き抜くノウハウは絶対に身に付かないと思っているタイプなので、こういった実践的なアクセラレータが日本に増えることはとても喜ばしいことだと考えています。

一方で、ファウンダー・インスティテュート(以下、FI)は 2009 年の設立から一環して、超実践的なブートキャンプ形式だけをストイックに採用し続けていて、自分はこの点に惹かれて日本(関西)への輸入に協力したいと思ったのが、今に至る経緯だったりします。

実際問題、FI では卒業に辿り着く起業家&スタートアップは半数にも満たない状況で、ブートキャンプの内容について行けない者はバンバン落とされる仕組みになっています。その代わりに、卒業生の 42% が資金調達に成功しているという、業界でも屈指のパフォーマンスを誇っています。

これは、FI が本当にベンチャー世界で生き抜くノウハウを身につけた者だけを輩出する仕組みになっているということだと思っています。

企業秘密なので、詳しいことは言及できませんが、自分自身、この FI の運営をしていて、そのブートキャンプの実践レベルの高さに驚かされることが多いです。それは起業経験者の視点であってもです。

例えば、つい先日もプロダクト・サービスのランディングページを作るセッションで、使用する具体的なツール名がカリキュラムで指定されおり、それらのツールの提供会社と FI  が提携を結んでいるため、FI 参加者はディスカウント価格もしくは無料でスタートアップに必要なツール群が使えるという具合です。

また別のセッションでは、起業前後に関わらず外部に委託した制作物(ロゴ、プログラムなど)の権利所在を全て見直して、VC によるデューディリジェンスの際にリーガルや IP 関係でボトルネックが発生しないよう、弁護士を交えてチェックする内容になっています。

他にも、シリコンバレーの最前線で磨き上げられた実践ノウハウで、全ての FI のブートキャンプ内容は構成されています。自分自身、海外のスタートアップや 500 Startups などのアクセラレータで実践されている内容については普通の人よりはだいぶ詳しいと思っていたクチですが、それでも「ここまでやるか」というレベルの内容が FI には詰まっていることに、日々驚かされます。

これをリアルタイムに期限までに滞り無くこなしていく必要がある起業家&スタートアップの方は本当に大変だと思うこともありますが、逆に自分が20代で最初のベンチャー企業を創業した時に FI に参加していれば、おそらく大部分の失敗は避けることが出来ただろうとも思います。むしろ、FI に参加していたら、もっと成功していたかもしれません。

そんなわけで、日本に少しでも実践的なアクセラレータが増える事を願いつつ、まずは関西からグローバルで活躍できるスタートアップを産み出すことに引き続き注力します。

PS.
FI Kansai 春学期に参加している起業家のみなさん、あと1ヶ月半ですが頑張りましょう!