81MqG3xgRWL

【書評】最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか

最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか、読了。日経ビッグデータの記事で、著者である河本薫さんの存在を知り、年末休暇の間に一気読み。

関西で長年スタートアップをやっている自分ですら、大阪ガスにデータサイエンスの専門部署があることは知らんかったです。。すんません。

本書は大阪ガスという大企業において、10人程度のチームを統括するサラリーマンの立場で書かれているので、良くも悪くも、大阪ガスの事業への貢献が全ての意思決定の前提になってます。なので、データサイエンスやAIを使ったビジネスの立ち上げ方や収益化、人材の獲得方法といった超生臭い経験・ノウハウを期待するスタートアップ関係者には、本書はあまりおススメできないかもです。

データ分析に使われる最新の解析技術についても、あまり述べられていないというか、解析の手法についてはそもそも本書では重きが置かれていないので、そういう情報を期待する人は、そっち系の専門書を買うか、ネット検索の方が早いと思います。

一方で、データサイエンスという言葉が生まれる前から、18年間もデータ分析を実践されてきたというだけあって、大阪ガスという想像に容易い「お堅い会社」の中で、完全にオマケ的な部署の存在に対する周囲からの理解が得られなかった当初の苦労話には、よう諦めへんかったなと、感銘を受けました。

ただし、本書の中でも何度か「サラリーマンとして」というキーワードが登場する通り、同じデータサイエンスを語るにしても目線やインパクトを考える範囲が経営者のそれではなく、毎月の安定した収入が約束されているサラリーマンのレベルに留まっているところは、まぁ、致し方なしといった感じでした。

大阪ガスの中の色々な事業部からの依頼を受けて、データ分析を始める際にスポンサーシップ制度というものを使って、予算を仮想的に取得するらしいですが、要は大企業の部署間で経理上の数字をシフトさせているだけなので、スタートアップでいうところの売上には相当しないです。

データ分析・AIといったテクノロジーを使って(大阪ガスといった一企業ではなく)世の中をどう良くするか、競合他社との価格競争に巻き込まれずにいかに高い利益を確保するか、日本国内だけでも数百社ものデータ分析・AIスタートアップがひしめく中でどの分野で自社の専門性を築くか、まったく無名のスタートアップで優秀な人材をどうやって確保するか、来月の従業員の給与をどうやって支払うか、そういう地球レベルの視点と明日生きるか死ぬかの瀬戸際でデータ分析・AIビジネスをやっている経営者からすると、言葉は辛口やけど、「なんか、ぬるいなぁ」といった印象は、本書を通じて感じてしまいました。正直な感想で、すんません。

去年あたりから、ぼちぼちいわゆる本物のデータ分析・AIスタートアップが上場し始めているので、そういう企業の経営者が書いたリアル本が出たら、ぜひ読んでみたいです。

さて、酷評はこれくらいにして、本書の中で気になったフレーズは以下の通り。

 

”分析者の仕事はデータ分析と意思決定プロセスの自由度の中で、最も望ましい組み合わせを見出すこと”
(要するに、分析だけやっている人は、仕事してることにならへんよ)

 

”プロトタイプはプログラミング言語で簡単なアプリケーションを作る場合もあれば、エクセルのマクロ機能などでより簡易的に作る場合もある”
(自分もCTOやってた頃、エクセルのPowerPivot(当時はMS SQL Serverの1機能)を使ってデータ分析・BIアプリ作ってたけど、ほとんどの場合、これで十分やった)

 

”メディアに掲載される他者のデータ分析事例を読むときは、あたかも実用化に成功したかのように思わせるフレーズには惑わされずに、データ分析の成功と実用化の成功のどちらの段階にあるのかを自分なりに見極める”
(これ、ホンマに重要。いまのメディア記事の9割は実用化に達してへんと思ってます)

 

”日本企業には理系的なセンスとシーズから発想する力は十分に足りていると思っています。逆にニーズから発想する力とビジネスセンスは不足している。それよりも新しいサービスのアイデアを考える時に消費者視点に立ってサービスを考えるニーズ思考や、起業家が持つひらめきのようなビジネスセンス、これらをいかに取り入れるかが課題”
(多少なり、アメリカで教育を受けた人間からすると、これは日本の教育システムの根本的な問題。日本でしか教育を受けていない人は、たいがい考える力(発想する力)が著しく低い、弱い)

 

”学生が私のチームに配属され、解くだけを任されると、学生時代の延長のようになってしまう。これでは「仕事とは何か」という、社会人としての根本的な価値観を誤って形成しかねません”
(うちに来る学生もデータ解析を行うこと「だけ」に興味があって、お客さんの所に通いつめることが仕事だと思ってない子がたまにいる。絶対に許しまへん)

 

それでは、今年もどうぞ、よろしくお願いしますm(_ _)m
現在、ハカルスで募集中のデータサイエンティスト職はこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

comments powered by Disqus