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【書評】勝ち続ける「仕組み」を作る 獺祭の口癖

以前、カンブリア宮殿で旭酒造の桜井代表の特集を見てから、ずっと気になっていた獺祭の造り方と戦略。その内容に触れる書籍『勝ち続ける「仕組み」を作る 獺祭の口癖』が出たということで、さっそく読んでみました。

自分がいま経営しているハカルスも、もともとは食材の重さを計測するスマートスケール(はかり)を作るIoTベンチャーからスタートしていることもあって、酒造りのプロセスをIoTで可視化して、杜氏(とうじ)に頼らないデータに基づいた日本酒メーカーを実践している旭酒造には、勝手ながら共感を覚えるところがありました。

しかも、旭酒造は山口、こちらは京都ということで、同じく地方から東京や世界を目指している点でも、規模は違えど参考になる点が多いと思ったのも、本書に手を伸ばした理由の1つ。

自分は40歳を過ぎてからは、居酒屋での乾杯直後から日本酒をオーダーするほどの日本酒びいきで、最近ではめったなことがない限りビールやワインは飲まんです。そんな、なんちゃって日本酒ヲタクの自分でも、獺祭は「データで作られた日本酒である」ということぐらいは、前から知ってました。

そんなデータドリブンなイメージの獺祭ですが、本書を読めば読むほど、その酒造りのプロセスは意外にも人手がかかっているところが多く、あるプロセスにおいては100%人力で作業が行われていることが判明。これは、本当に意外やった。ちなみに、本書の中で自分的に一番刺さったフレーズがこれ。

「まちおこしのため」はお客様に関係ない

これは、「地元のまちおこしのため」「地元の酒蔵同士でスクラムを組んで」と呼ばれるものが、地元や業界という名の利害関係者の都合でしかなく、お客様にとっては全く関係のない話である、という点を要約したものです。

東京でベンチャーをやっていると、何のことかサッパリ分からんと思いますが、京都のような地方でベンチャーをやっていると「京都の経済活性化のため」「オール京都」といったフレーズを、結構頻繁に耳にします。

京都に拠点を置いて、京都のリソースを活用しながら商売をさせてもらっているので、ある程度地域への恩返しというか、社会貢献は意識すべきだと自分も思いますが、ぶっちゃけ、お客様は京都の経済活性化のために商品やサービスを購入しているわけではなく、ましてやオール京都などという完全に作り手側の都合だけの組織に対してお金を払っているわけでもないです。

お客様は、常に多数ある選択肢の中から、その商品やサービスが他よりも優れていて、かつ費用対効果が高いと思うから、それにお金を払うわけです。

しかし、地方にいると消費者の考え方がどこか遠いところにあって、なぜか地方の事情が優先されるようなところが、少なからずあります。しかも、そういう地方に限って、消費者に商品やサービスを訴求しようと一生懸命だったりするわけです。必死にアピールしているわりには、消費者の目線に立ってないという感じでしょうか。

自分も、京都で数年商売させてもらっているので、行政やら業界による色々な座組に入らないかと声をかけて頂く機会が増えてきましたが、「オール京都」みたいなフレーズが聞こえた瞬間に、本当に申し訳ないですが、その座組には入らないようにさせてもらっています。

ハカルスは、それこそ京都に本社を置いてますが、創業当時からソフトウェアの開発はフィリピン、営業は東京、最近では英語圏でのサービス提供に着手し始めているので、今さら「まちおこし」とか「オール京都」を実現するのはそもそも無理があるのと、上記の通り、それが消費者の目線に立った行動ではないと考えているのが、その手の座組には関与しない理由です。

本書でも明確に述べていますが、山口という地方で造られる獺祭が日本のみならず世界で受け入れられて、会社がいまも存在しているのは、そういった「業界のために」「地元のために」という酒造りをしなかったからに他ならんです。

ということで、東京以外の地方でベンチャーを経営する方には、この『勝ち続ける「仕組み」を作る 獺祭の口癖』は、間違いなくオススメの一冊だと思いました。

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