テック起業家は10回これを観た方がいい

スタートアップあるあるが満載のテレビドラマSilicon Valley。自分の周りでも観てる人けっこう多いです。自分は日本版Huluで観てます。

最新エピソード「箱にはペア入り」(原題:Two in Box)の内容が、自分の個人的な経験にモロ重なりだったので、ちょっと書いておこうかと。

ネタバレしない程度にエピソードの概要を説明すると、投資を受けたVCからの要請で送られてきた経験豊富なプロ経営者によって、創業者はCEOの座を奪われCTOに降格。

新たなプロ経営者によって、スタートアップの方向性が「フリーミアム万歳〜!利益は後からついてくるさ♪」的なものから、「いやいや利益を出すなら営業体制の強化とB2Bへのシフトでしょ」という方へと急速に変わっていく、という話。リアルの世界でも、まぁよくある話です。

自分が『これだ!』と思ったのは、次のシーン。ビジネスライクなカルチャーに変わっていくスタートアップにあれこれ文句を言い始める創業者(元CEO/現CTO)に対して、経験豊富なプロ経営者が言います。

『この会社のプロダクトは何だと思う?それは株だ。株価を上げるものがプロダクトなんだ。』

1人のエンジニアとしてキャリアをスタートして、CTO→CEOとキャリアを重ねてきた自分の意見も、実は全く同じです。少なくともVCからの資金を得ている間は、という前提ですが。

会社は株主のものか、それとも従業員のものか、という議論は今でもしょっちゅうされてますが、今回はそういう話ではなくて、VCから資金提供を受けている間のスタートアップにおけるプロダクトの定義とは何ぞや、という話です。

ちなみに、どんな企業においてもプロダクト(またはサービス)は必ず顧客が抱える何かしらの課題を解決する必要があります。

これが出来ていない企業は、どれだけ資金調達に成功しても最終的に立ち行かなくなるのは、過去のスタートアップの歴史が証明済みです。

ただし、VCから資金提供を受けているスタートアップにおいては、企業存続の是非が次の資金調達ラウンドを達成することが出来るかどうかにかかっていることが多く、そのためプロダクトの定義が「株価を上げるもの=次の資金調達ラウンドの達成に貢献するもの」ということになります。

わざわざ言うまでもないですが、会社の資金が尽きれば、どんなに優れたプロダクトも作り続けることができません。なので、self-sustainable(自社の利益だけで事業を継続できる)状態でない限り、プロダクトの定義は上記の通りである必要があります。

この考え方、自分がCTOをやっている頃はなかなか理解できないというか、ぶっちゃけ受け入れ拒否に近い状態でした。まさに、ドラマのSilicon Valleyで言うところのCTOに降格させられた創業者と同じロジックです。

実際に、あの頃は「うちはテクノロジー・ドリブンだ。営業はプロダクト自身がやってくれる。」というアホなセリフを自分は連発していた記憶があります。

当時の自分の考え方が正しかったかどうかは売上を見れば一目瞭然で、ちゃんとした営業をしないプロダクトなど売れるはずもなく、自分の給料もまともに払えない日々が続いていました。

そんななか、経営方針の転換とチーム構成の見直しを経て、営業体制の強化とB2Bへのシフトを行ったところ、みるみると売上が立ち、方向転換後の翌年度末には数億円の売上を出すスタートアップになっていました。

プロダクトの作り方も、今で言うところの PMF (Product-Market Fit) 重視で、自分自身が顧客の所に足を運んで提案やヒアリングを行い、得られたフィードバックをプロダクトに反映させることで、それぞれの顧客が抱える課題を順番に解決する、という形に切り替えました。

稀に disruptive (破壊的イノベーション) という言葉を履き違えて、顧客や営業というものを一切見ないで突き進もうとする、経験の浅い起業家に出会うことがありますが、自分自身の経験に照らし合わせても、そういう考え方を持っている人に外部から何を言っても腹の底では理解してもらえないので、なるだけ早くに失敗してそこから学んでくれることを願いつつ、最近はそっと見守るようにしています。

人間、やっぱり自分自身で失敗を経験しないと、事の真意がわからず、行動を正せません。ただし、見守るだけではスタートアップのエコシステムには何も貢献しないので、自分自身の失敗経験や成長過程をブログや講演などで共有することで、若い起業家の成長を促す手助けになればとはいつも思ってますが。

最後に。上記のような考え方はVCからの資金調達に頼らず、自己利益と銀行融資だけで事業運営と成長を考えている起業家には、おそらく当てはまらない、というか参考にすべきではないと一言添えておきます。

VCからの資金を一切入れずに上場するスタートアップは当然存在しますし、シカゴの37signals(現Basecamp)のように上記の考え方を真っ向から否定しつつも、素晴らしいプロダクトを送り出しているスタートアップもあります。

結局は起業家の人生観や価値観に依存するわけですが、VCからの資金調達を考えているにも関わらず、相反する考え方を持つことはくれぐれも避けたほうが良いと考えます。その先に待つものはSilicon Valleyのエピソードの世界そのままです。

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