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ポケモンGOこそ枯れた技術の水平思考

枯れた技術の水平思考、任天堂でゲーム&ウォッチ、ゲームボーイ、バーチャルボーイ(!)の開発を部長として牽引した、あの横井軍平さんの有名な言葉ですね。

自分が任天堂でお世話になっていたのはごく短い期間でしたが、自分が京都に根を下ろして本気で世界に打って出ようと思うようになったのは、実は任天堂で働いたことが少なからず影響してます。

今でもよく思い出すのが、故岩田社長の思考ロジック。「その○○という考え方、止めませんか?」とか「その○○という呼び方、止めませんか?」と、いつも口にされていたような気がします。

在籍中の後半は、ほんの少しだけですが岩田さんが出席される会議に同席する機会があり、経営企画や役員の方々によるディスカッションに入らせてもらうことがありました。

シリコンバレーを含めた最先端の業界事情やテクノロジーをまとめた資料を用意して、「いま業界はこういう動きになっているので、弊社(任天堂)もこういうものを検討してみてはどうでしょうか?」的な発言をすると、ほぼ100%こういう返答でした。

『それはうちらしくない。』

「うち」は京都弁でいうとろの自分で、要するに任天堂がやるべきことではない、という趣旨です。

あとマネタイズとか ARPU のような、IT業界にいたら1日100回くらい使ってしまいそうなテック用語も「その呼び方、止めませんか?」と、よく注意された記憶があります。

最初のうちは、なんでもかんでも否定しているようで、なかなか理解できなかったのが正直なところでしたが、1年くらい経つと、発言の裏にある真意というか、同社の哲学みたいなものがだいぶ感じとれるようになってきました。

そして、さらにしばらくすると、そのような考え方は同社に特有のものではなく、老舗と呼ばれる京都のあらゆる企業で、似たような考え方が存在するということに気付きました。

枯れた技術の水平思考とは、直訳すると「最先端の技術に頼らなくとも面白い製品は作れる」という意味ですが、これを京都の老舗企業的に解釈すると「長いものに巻かれたアカン」という意味だと思います。

テック系の業界に身を置いていると、ついつい最先端の事例なり技術を取り入れることが自社の差別化につながると考えがちです。最近だと、IoT・人工知能・ディープラーニングあたりでしょうか。

ただし、今の時代、情報や技術なんてものは全員が同じタイミングで平等に取得できるものなので、自分がそれに気づいているということは他社もそれに気づいているということ。つまり、最先端を走ると決めた瞬間、すでに長いものに巻かれてしまっている、要するにユニークではない、ということです。

ポケモンGOについては、あちこちのメディアで「あれはゲーム、AR、それとも位置情報サービスなのか?」といった議論がされていますが、多少なり内情を知る自分としては、そんな表面的なディスカッションはどうでもよい気がしてます。

大事なことは、同社にとってポケモンGOは、スマホを使った初の本格的な試みであるにもかかわらず、やはりそれも「枯れた技術の水平思考」の延長線上にあることではないでしょうか。

ポケモンというIP、、、じゃなくて知的資産、AR、、、なじゃくて拡張現実、さらにスマホ自体も今となっては枯れた技術です。ぶっちゃけ、やろうと思ったら数年前でもポケモンGOは実現できたはずです。

ポケモンGOがいま投入された理由をあえて探るなら、スマホの普及台数と経営環境の変化くらいしか思いつきません。決して○○という技術があったからとか、○○という時流に乗るためとか、そういう理由ではないのは明らかです。

しいて言うならば、ポケモンGOの根底部分ですら、Ingressやコロプラで実証済みのものを流用しているだけで、極端な言い方をすれば意図的に新しいものを取り入れないようにした結果、こういう形になったとも考えられます。

この「枯れた技術の水平思考」は、限られたリソースで先行するグローバル企業と戦わなければ行けない日本のスタートアップこそ、取り入れるべき考え方なのではないかと思ったりします。

最先端をあえて追わず、どうすれば「うちらしい」戦い方ができるのか、どうすればユーザーにアッと驚いてもらえるのか。純粋にそれだけを考え続けることは、情報があふれかえってしまっている今では、よほど経営者がそれを意識しない限り、実はかなり困難であると考えます。

うちの会社でも、あえてディープラーニングだけに頼らない人工知能・機械学習を実現すべく日々奮闘していますが、京都に拠点を置くベンチャー企業として、長いものに巻かれない考え方はこれからも大切にしていきたいところです。

そんなことを考えさせられた、今回のポケモンでした。

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