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スタートアップのCEOは給料を幾らにすべきか

京都はいま祇園祭の真っ最中。もう京都に住んでそれなりの期間になるので、自分は山鉾巡行(23基の山鉾を人が引っ張りまわすアレです)はほとんど見なくて、それよりも祇園祭の期間中だけ公開される各お宅の「家宝」を見て回るのがここ数年の過ごし方になってます。

上記の着物の写真も、あるお宅にお邪魔して撮影させてもらったものです。近くで見ると、かなり複雑な模様が立体的に織り込まれているのが分かります。ちなみに1着に使われている色の数は軽く100色を超えていたりするそうな。

それぞれの家主さんによる説明を聞いていると、一流のコンシェルジュがいるミュージアムさながらのライブ感が体験できるところが、自分は祇園祭の醍醐味の1つだと思ってます。それでも京都の長い歴史と文化のほんの一部なんですが。

こういう高いレベルのモノを目の当たりにすると「オマエは自分の作っている製品やサービスにどこまでこだわりを持っているのか?」と、先人に問いただされているような感覚になるのは、スタートアップCEOの性(さが)ですかね。。

さて、今日のお題はスタートアップCEOの給料についてです。これ、起業したての人からよく相談されます。先に結論だけ述べると、初回の資金調達が終わるまでは月20〜30万円、調達後は月50〜100万円。これで良いと思います。

ここからが解説。まず、当たり前ですが、上記の数字はCEOの家族構成、東京 or 地方都市、日本 or シリコンバレーで大きく変わります。なので、資金調達前だからといって、40代で養うべき家族がいて住宅ローンを抱えている東京在住のスタートアップCEOの給料が月20万円では、奥さんの稼ぎがない限りは、おそらく生活できないと思います。

ネットで “startup ceo salary” などのキーワードで検索すると、色々なスタートアップの実例を交えながら解説している記事を見かけますが、そもそも海外、特にシリコンバレーでは同じラウンドの資金調達額が日本の5〜10倍の規模なので、日本国内だけで資金調達を行うことを考えているスタートアップのCEOの給料を決める際には、これらの情報は参考になりません。

たまに学生ベンチャーのCEOで、ありえない給料を提示してくる人がいますが、それはおそらく海外の情報だけに頼っている可能性が高いです。いますぐにTechCrunchを読むのをやめましょう。

家族構成や居住している地区・国といった数値化しやすいパラメタ以外に、CEOの給料を決める際に大事なパラメタが、あと2つあります。そして、それらはあまり広く知られていなかったります。

まず1つめは、株主移動の際に自社株を買い戻すための資金が将来どれだけ必要になるかという点です。株主移動は、会社を経営していくうえで必ず起きるイベントの一種で、具体的には、ある程度のボリュームの株を持っている役員・社員が会社を辞める時、シリーズA以降の資金調達ラウンドで既存のエンジェル投資家・VCが手持ちの株を手放す時などです。

前者のケースでは、辞める役員・社員の株をプレミアを付けてCEOが買い取るのが通常です。自分も過去に役員をしていたスタートアップの経営陣から抜けるときに、株を買い取ってもらったことがあります。後者のケースでは、CEOを含めた経営陣が株を買い取るか、後で入ってくるVCが株を買い取るのが普通です。

いずれのケースでも、株を付与した時点からの時間経過にともなってプレミアがつく(=会社の評価額が上がっている)ため、例えば創業時に100万円出資して株を持ってもらったから、同じく100万円で株を買い取る、とは行かないのが現実です。事前に契約書で明記できればベストですが、共同創業者や主要株主が途中で抜けることを想定しているスタートアップは少ないので、このあたりはよく問題になったりします。

ここで重要になってくるのが、CEOの資金力です。このようなイベントに備えて、自社株を買い取るための資金を給料として先に確保しておくことができるかどうか、これもCEOとしての経営能力の1つだと思います。

実際に幾ら必要かは、株主構成や評価額によって変わってくるので、一概には計算できませんが、将来そのような資金が必要になる可能性があると知っているのと知らないのでは、いざイベントが起きてからの対処力に差が出てきます。

2つめは、CEOが自身のスタートアップを経営し続けるためのモチベーション維持という観点です。これ、CEO自身よりも、実はVCの方が気にしていることが多かったりします。VCからすると、投資したスタートアップのCEOのモチベーションが下がることによって、途中でCEOが試合放棄することは絶対に避けたい事案の1つです。

VCが意図的にCEOを入れ替えるケースは別として、普通は創業者であるCEOにはエグジットの最後まで頑張ってもらわないといけないので、やはりそれなりの給料をCEOにはとってもらいたい、という考え方です。日本ではあまり少ないかもしれませんが、シリコンバレーでは投資の際にVC側がCEOの給料を一定水準にまで引き上げることを要求したりします。

自分は過去の給料をオープンにすることはいとわない方なのでストレートに書きますが、自分の短いサラリーマン経験の中での給料の最高額は30代の頃で年間約2,000万円でした。まぁ、バイリンガルで技術と経営がそれなりに分かる人材は日本はかなり少ないので、そんなもんでしょう。自分の場合は、この数字が1つのパラメタになっています。

このような過去の給料や市場での自身の価値などを加味しながら、どの程度であればモチベーションを維持できるかを決めるのもCEOの仕事の1つです。さらに、今後入ってくるであろうCXOレベルの人材(例:CTO、COO、CFO)の年俸も合わせて考慮して、彼らよりも高い、もしくは低い給料をCEOとして受け取ることを良しとするかどうかも決めておく必要があります。

最後に、意図的にCEOの給料を低くしてバーンレートを小さく見せつつ、実際は会社の経費でCEOの生活費をやりくりするのは絶対にNGです。必要な給料はしっかりと取ったうえで、正々堂々と会社を経営すべきと思います。

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