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ABCハッカソンのメンターをさせて頂いて

朝日放送が主催する関西発のITxモノづくりハッカソン ABC Hackathon にメンターとして昨日参加させて頂きました。

この手のハッカソンでは審査員として参加させて頂くことが普段多いですが、今回はメンターということで発表前の各チームに対して割と丁寧にヒアリング&フィードバックさせて頂くことができました。

審査員として参加すると事前のバイアスがない状態でブラッシュアップされたプレゼンとデモが見られるというメリットはありますが、裏を返せばイベントの最終日に今から何を言ってもフィードバックを反映する時間が各チームにないため、「ああ、ここはもっとこうした方がいいのにな」という思いがあってもコメントを控えてしまうことが時々あります。そういう意味では今回は参加者の方々と密なコミュニケーションが持てたようでとても良かったです。

ちなみに1日目のアイデアソンでは160名程の参加者が集まり、予選を通過したのは3分の1にあたる50〜60人だったそうです。それらをチーム分けした合計8チームに2時間余りの時間をかけてメンタリングさせて頂きました。

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1日目のアイデアソン懇親会の様子 ABC ハッカソン公式 Twitter から

今回のハッカソンでは「イベントに関するモノづくり」というお題目が設定されているため、イベント当日に配布する販促グッズやイベント参加者同士のコミュニケーションを促進するデバイスが全体を通して多かったように思います。

販促やコミュニケーションに関するものは「あったらいいですね」という類のものに該当することが多く、例えば治療法が見つかっていない病気を治すための薬や難易度が高い手術を支援するための医療機器などといった「絶対に必要」といった類のものと比べると相対的にニーズが弱い、という前提がまずあります。

ニーズが弱いから世の中に必要とされていないというわけではなく、イベントの運営に関わる企業は新規ファンの獲得や既存ファンのロイヤルティ向上のためのグッズやコミュニケーション手段を常に探し求めているのは事実ですので、規模は違えどニーズは確実に存在しています。

しかし、この手の「あったらいいですね」に属するものを本当に事業にする場合は、総じてコストが最大かつ唯一の懸念事項になることが多いです。提案された販促グッズがどれだけ最新のテクノロジーを使っていても1個あたり3,000円と言われると、ほとんどのイベント運営会社は買ってくれないはずです。

逆にテクノロジーを使わない普通の販促グッズに比べて1個あたり100円くらいのコスト増でまかなえるのであれば、あらゆる顧客が興味をもってくれます。つまるところ、どれだけ安く作って高い費用対効果=お買い得感を出せるかに集約されます。

各チームともアデイアの部分について色々と熱弁されていましたが、自分としてはどのアイデアも100円で実現できるならアリ、そうでなければナシ。これに自分のフィードバックが終始していたように思います。

これはハッカソンの段階で言っても仕方がないことではありますが、1つだけ気になったのはどのチームも提案するデバイス(モノ)が1個1,000〜3,000円で量産できると見積もっている点でした。そもそもそのコストでは商売にはならないうえに、残念ながら現実的にはどのデバイスもそういったコストでは量産できません。

投資家的な目線でみるとハードウェアを扱う事業・ベンチャーを支えるには、モノにもよりますがだいたい5〜6億円くらいの資金が必要になるというのが一般的な相場です。その理由は最初の1個の量産品を工場で作るにも、まず金型代で数百万、部品代で数百万〜数千万、ラインの確保に同じく数百万〜数千万という費用がかかり、さらに顧客の要望を反映した改善版や品質に到達するまでに同じ金額の出費を2〜3回くらい繰り返す必要があるからです。

電池を内蔵していて屋外で使うタイプのデバイスは耐水試験や強度試験など量産前に外部に委託してやってもらう各種検査費用も発生してきます。ウェアラブルで人体に直接影響がでる可能性があるものは、そちらの検査も必要です。販促グッズやコミュニケーションデバイスとはいえ、実際に人間が使うものなので事故が起こらないような作りにはしておく必要があります。

よく Arduino や mbed などのプロトタイプ用プラットフォームを使って作った試作品を持ってきて、量産にかかるコストは幾らですという言う人がいますが、そのような技術試作の設計と部品では工場は量産を受け付けてくれません。また工場に発注する際にも工場側は1個単位ではラインを確保してくれないので1,000個単位、場合によっては1万個単位で発注する必要があります。なので、最初の1個の量産品を作るだけでも発注側には相当な資金力が求められます。最終的にそれらの初期コストが初回出荷分の製品の値段に反映されることも忘れてはいけません。

こういった現実的なコスト要素を考えると、販促グッズやコミュニケーションデバイスをいわゆる IoT 化する際には、よほどこのあたりのことを入念に考えて設計と部品選定を行ったうえで製造現場ともすり合わせをしておかないと、そもそも出荷不可能ということになります。

さてここまで我田引水をやったうえでの紹介で大変恐縮ですが、このようなハードウェア事業に参入するうえでの障壁を下げるためのプログラム Makers Boot Camp (鋭意リニューアル中)について最後に書いておきます。

Makers Boot Camp ウェブサイト
Makers Boot Camp ウェブサイト

このプログラムはハードウェア・IoT分野への進出を検討しているソフトウェア技術者や既存企業(特に新規事業部の人材)を対象にしたハードウェアスタートアップ育成プログラムで、この夏から京都での開催を予定しています。自分も共同運営者の1人として立ち上げに関わっています。

このプログラムの特徴はいわゆるメンタリング中心ではなく、京都工芸繊維大学が提供する機械工学・電気工学の基礎コースがカリキュラムに含まれている点です。これによりハードウェアの知識が一切ない人でもプログラム受講後には一通りの基礎知識が身につくという仕組みになっています。

もう1つの特徴は量産化試作のプロフェッショナルである京都試作ネット(KSN)との提携により、KSN 会員企業の製造現場の第一線で活躍する技術者からのアドバイスが受けられる点です。プログラム参加者は最初から量産化を前提としたプロトタイプを KSN と共同で製作することができます。

Makers Boot Camp についての詳細は今後ウェブサイトや告知イベントを通じで徐々に発信していく予定ですが、この時点で興味がある方はウェブサイトからエントリーして頂ければ幸いです。

みなさんの参加を待ちしています。

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