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インセンティブ経営 vs 年功序列・終身雇用経営

Image by Frits Ahlefeldt-Laurvig on Flickr

今朝の日経産業新聞は全く異なる価値観の経営理念が両方同時に見れるという意味で結構面白かったです。それぞれ記事の表題はこんな感じでした。

『ウィリアム氏と明日を読み解く(75)社員が主体性を持つには―公正・透明なインセンティブを。』
『山男流経営学(9)モンベル創業会長辰野勇氏―年功序列・終身雇用貫く(仕事人秘録)』

前者は社員にオーナーシップ(主体性)を持ってもらうためには、奨励金やリーダーポジションへの昇格など分かりやすいインセンティブを提示することが重要であるという主張。後者は能力を持った人の給料を増やしたり出世させたりしてあげられない代わりに、年功序列・終身雇用は平均的に時間とお金をかけて社員を教育することができるため、その結果として経験豊かな人材が多く育つという主張です。

自分はもともとアメリカの大学で学んだこともあり、20代・30代の頃はどちらかと言えば前者の考え方に近く、ストックオプションや高い年俸といった分かりやすいインセンティブさえ提示すれば社員は主体性を持ってどんどん仕事をやってくれるだろうと思い込んでいました。そして事実「短期的な視点では」それはうまく機能していたように思います。

ただし、生まれ育った関西に戻って京都を拠点に活動しはじめて40歳を目前にした今、自分の考えは明らかに後者に寄っています。

前者の考え方はアメリカのように優秀な人材が世界中から集まってきていて被雇用者の流動性も高く、いろいろな価値観をもった多民族からなる社員を束ねる場合には最も有効かと思います。さらに失敗しても他でやり直せるというアメリカ人のあっけらかんとした国民性も大いに関係していると思います。極端に言えば、成果が出ない社員を抱えることは会社の競争力が落ちるうえに本人のためにも良くないという価値観です。

一方でモンベル創業者の辰野さんが記事の中で主張される通り、島国である日本ではそういうわけにもいかず、落ちこぼれの人も国や企業や地域が支えなくてはならないという独特の感性や文化があります。この価値観を理解できない米国人経営者に対して「自分の子どもが学校の成績が良くないとクビにするのですか」という辰野さん質問はなかなか的を得ている気がします。これこそが、日本とアメリカの価値観の違いそのものだと思います。

アメリカ型も日本型もどちらも間違っていないですが、自分はやはり日本という国に根付いているのは日本型だと考えます。しかし、昨今の日本の経済状況下では企業が年功序列・終身雇用をうたうのはそう簡単ではないという現実があるのも事実です。昔のように能力のある人もない人も平等に企業が抱え込んで、みんなでゆるやかに成長していくということは、それ自体がなかなか実現困難な時代になってきています。

だからこそ、自分はいま一度この日本型の経営のあり方を見つめ直して、日本という国と日本人が本来持つ強みを再確認しながら世界との戦い方を考える必要があると強く思います。スタートアップは大企業や競合他社がやれないことをあえてやることで自社の強みや特徴を出す必要がありますが、アメリカのスタートアップと同じやり方を日本でやってもうまく行きません。これは国という単位でも同じで、それぞれの国にはそれぞれの国あったやり方があると思います。

さらに言えば、東京と地方においても同じことが言えると思います。我々はいま自分がおかれている状況を本当によく吟味して、それぞれの土地・人が持つ強みや特徴をしっかりと活かす形で行動をとらないと、もの凄い勢いで押し寄せてくるグローバル化や東京一極集中という波に一気に飲み込まれてしまう気がしています。またそういう目線で普段生活していると、自分が住んでいる環境もちょっと違って見えてくるものです。

ちなみに今回のようなトピックに興味がある方には下記の本がオススメです。同志社大学で京都企業の研究とMBAの講師をされている村山先生の著書です。自分も仕事のことで迷った時はこの本を時々読み返すようにしています。従業員のモチベーションを高める独特のマネジメントから付加価値の高い製品を生み出す開発力、事業継続のために行う革新まで京都企業のユニークな手法について書かれています。ゴールデンウィークのお出かけの際のお供にどうぞ。

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