kyoto-startup-college

京都スタートアップカレッジ2014:2ヶ月間の育成プログラムを終えて

昨日は審査員として 京都スタートアップカレッジ2014 の卒業式 DEMO DAY に参加しました。

京都スタートアップカレッジは、ASTEM (京都高度技術研究所)と京都市が主催している、いわゆる行政によるハンズオン型の起業家育成プログラム。今年が初めての開催となり、10月にオープニングイベントがザ・リッツ・カールトン京都で行われました。

本プログラムでは、チームビルディングからプロダクト開発、ファイナンスなどのコンセプトを2ヶ月かけて学び、最後に DEMO DAY (ピッチイベント) という形で成果を披露します。本格的なアクセラレーターではないため、あくまで入門編的な位置づけになっていますが、自分は今回メンター兼審査員という形でプログラムに携わりました。

行政にありがちな助成金による起業促進ではなく、京都ローカルな起業家や投資家を講師として招いて、できるだけ「実践的な」トレーニングを提供しようとしているところが、特筆すべき点かと思います。さらに、上位チームには創業支援金として数十万円が支給されるほか、京都市内で登記した場合は登記費用の半分を行政が負担するなど、実際の起業を前提とした資金援助の方法もユニークなところ。

それでは、さっそく昨日の DEMO DAY に登壇した6チームを紹介しましょう。

1社目:トノムラ
『男性のトレイ使用時の尿飛沫を「泡」で抑えるプロダクト』

通常の男性は1回のトレイ使用でおよそ1,000滴の尿が飛沫する。これまでこういった尿飛沫を抑えるために便器の底にシート状のマットを敷いたり、泡を発生させる装置を便器に追加したりなどしていたが、家庭用の座るタイプの男女共用の便器では、こういったものが使えなかった。

そこで、高価な泡発生機を使わずに手軽に同じ効果を得ようと開発されたのが今回のプロダクト。「今からデモを行います!」と聞いた瞬間に、まさかパンツを下ろして本当にデモをするのではないかと一瞬ヒヤリとしたものの、事前に用意されていたジョウロによるデモでした。

1回=1袋の使い切りタイプで、用をたす前に便器の中に投入すると水と反応して泡が発生するという仕組み。泡が発生した状態で用を足すと、飛沫量が激減されるというデモが披露されました。

500 Startups の Dave McClure の言葉を借りるならば、アンセクシー (unsexy = クールではない) プロダクトに分類されるかと思いますが、審査員からは家庭用だけでなく、ホテルや共用施設などのトイレでもニーズがあるのではないかという意見も出ていました。

本プログラムに参加する前は PowerPoint という言葉すら知らなかったという彼ですが、たった2ヶ月で working prototype を披露したのは目覚ましい成長率ではないか、という声も審査員からあがっていました。

tomomura1
同社の経営理念「世の中に存在しない全く新しいものを作ること」

tomomura2
開発したプロダクトを使ってのデモ(ちなみにパンツは履いたまま)

tomomura3
1袋あたり7円程度で製造可能、日用品として十分に価格競争力があるとアピール

2社目:Sleep Innovation
『抱きかかえ枕ではなく「抱きかかえられ枕」で睡眠にイノベーションを』

奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST) の学生チーム。カラダ全体を包み込むような大型の枕を使い、内蔵されたセンサーデバイスで枕の中にいる生身の人間を動きを計測。それをクラウドにアップしてデータ解析を行い、睡眠を改善するための様々なフィードバックを行うというプロダクト。

実際にユーザーに製品を使ってもらい、その感想を動画で紹介するなど、プレゼン自体のレベルもかなり高かったです。枕の中のセンサーデバイスは Arduino ベース。チームメンバーも、ソフトウェア・ハードウェア・データ解析の専門家で構成されていため、プロダクトの完成度も非常に高い印象を受けました。

自分もこの枕をカラダに巻きつけてみましたが、そのズッシリとした重さとフワフワの感触が、いかにも安眠を誘発しそうでした。唯一のネックは、現時点でおそらく5万円かかるという製造コスト。ただし、製造分野に詳しいプロがチームに加われば、改善されるかと思いました。

sleep-innovation1
奈良先端科学技術大学院大学から、わざわざ京都まで通ったチームメンバー

sleep-innovation2
枕の中に内蔵されている Arduino ベースのセンサーデバイス

sleep-innovation3
ソフトウェア・ハードウェア・データ解析というバランスの良いチーム構成

3社目:テレコメ
『米国発 tvtag の日本版:テレビを観ながらアプリでお喋り』

スマホのアプリを立ち上げて、いま放送されているテレビ番組の名前をタップすると、Twitter 風のマイクロメッセージングの画面が現れて、同じテレビ番組を観ているユーザー同士で会話ができるというサービス。

米国では tvtag (元 GetGlue) という同種のサービスが立ち上がっており、すでに exit している実績もある。ただし、ビッグデータやデータ販売に詳しい起業家審査員からは、「データ販売は売上として考えないほうが良い、本当に微々たるもの、基本的に自社で有効活用する前提で」といった指摘も。こういった実体験に基づいたフィードバックが得られるのも、本プログラムの特徴かと思いました。

自分個人の感想としては、過去に頓智ドットの「コレミタ」や、その他の IT 企業が何度もチャレンジしている分野だけに、なぜ今回このサービスがうまく行くのかが分かりませんでした。さらに、こういったメディア企業を相手にするサービスは、東京でやった方がよほど効率的で、京都でやるアドバンテージがほとんどない類のサービスだと感じました。

一方で、営業畑とエンジニアというチーム構成は非常にバランスが良いため、ぜひ別のアイデアで勝負してもらえばと期待しています。ここで諦めずにトライ!

terecome1
放送局ではネガティブな Twitter コメントは画面に表示することができない、とズバリ指摘

terecome2
マネタイズの部分では審査員から幾つかの課題が突きつけられるシーンも

4社目:IROTORI
『手作りアイテムをソーシャルギフトで大切な人に送る』

手作りアイテムの EC サイトで先行している Etsy に、Giftee のようなソーシャルギフトの仕組みを適用したサービス。利用者は発注時に、クリエイターにカスタムオーダーを依頼し、クリエイターはその指示に従って1品ものの「オーダーメイド品」を製作。完成後に商品が友人・家族・恋人に届くという流れ。

このチームは、リッチな表現ができる Etsy としてスタートし、クリエイターが動画などのリッチメディアを自分の商品ページに掲載できる機能をウリに他サービスとの差別化を行うことを狙っていた。しかし、途中からモデルを変えて、現在の形に至った。

個人的には、「自分が1度も観ていない商品を大切な人に送るのか?」という問いがどうしても解けず、なかなか先が見ずらいサービスの印象を受けました。しかし、一方で自分も今まさに妻の手作りアイテムを売る手伝いをしている手前、手作り品とソーシャルギフトの組み合わせの可能性については、かなり興味があります。

今後はぜひ市場のフィードバックを受けて、どんどん改善して欲しいチームだと思いました。

irotori1
あなたの思いを色あせさせない、ただ1つのオーダーメイド EC がコンセプト

irotori2
クリエイターは利用者とメッセージでやりとりしながら製作を行う

5社目:データ科学
『高齢者のための買い物代行サービス』

今回の参加者の中でも稀な、同分野で既に起業しているチーム。高齢者を介護するヘルパー人材は年々深刻な人材不足に見舞われており、介護人材の確保はもはや国全体の問題となりつつある。一方で介護の現場では、ヘルパーの資格を必要としない作業も多く、そういった作業をクラウドソーシングで仕事の「担い手」をマッチングすることで解決しようとするサービス。

代表はデータ解析の専門家であるため、将来的にはマッチングデータの解析を行うことで、高齢者のニーズを見出すことが狙いとのこと。

data-science1
高齢者にターゲットを限定した買い物代行サービス

6社目:Speech Conductor
『音声認識で原稿の「ちょっと先」を機械が読み上げて教えてくれるプレゼン支援ツール』

京都大学教授からの支援を受けて、独自の音声認識技術を確立。この技術を使って、プレゼンターが話す内容をリアルタイムに解析して、いまどこを読み上げているのかを判別。その読み上げている箇所の少し先の文章を機械が音声で読み上げて、プレゼンターのイヤホンにフィードバックしてくれるツール。

予め読み上げる内容が決まっているプレゼン形式、例えば決算説明会、イベントでの商品説明などで威力を発揮する。さらに、英語のネイティブスピーカーではない日本人の教授が学会などで英文を読み上げる際にも、機械が先に英語の文章を読み上げてくれるため、その音声を追従することでスムーズに英語プレゼンができるという。

イヤホンは市販の Bluetooth ヘッドセットが使えるため、特に専用のものは必要ないこともメリット。自分の場合、プレゼンは基本的に全てアドリブですが、決まった文章を読み上げるタイプのプレゼンでは有効なツールだと思いました。

speech-conductor1
プレゼンのサポートツール Speech Conductor、略して「スピコン」

speech-conductor2
京都大学の知財についても紹介

以上、6チームの紹介でした。本プログラムは来年も開催されることがほぼ決まっているようなので、アナウンスされた際はぜひチャレンジされてはどうでしょうか?

運営者の視点で見た場合、こういった取り組みはとにかく続けることが大切だと思っています。プログラムを継続することで運営側の事業プロデュース力やメンタリングスキルも向上し、卒業者の数も増え、数名は資金調達や何かしらの exit に到達する可能性も出てきます。

また、いつも自分が FI 関西でも言っている通り、「あらゆるフェーズの起業家を受け入れられる」仕組みがあることが、成功するスタートアップ・エコシステムには必要だと考えています。人によっては Startup Weekend が最適な場合もあれば、今回のようなプログラムが最適な場合もあると思います。ベストは、もちろんシリコンバレーのように exit 経験のある起業家が、投資家やアクセラレーターになるまでの完結したエコシステムが関西に出来上がることです。

ということで、参加者のみんさん、卒業おめでとうございます!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加