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Hack U x 京都大学 2014 レポート

Yahoo! JAPAN と教育機関が共同開催している、学生のためのモノづくりイベント Hack U (ハックユー)。Hack U は単なるハッカソンではなく、現役の Yahoo! JAPAN エンジニアから様々な技術指導を受けられる点がユニークで、学生は最先端の技術に触れながら、それぞれの作品を作ります。

11月から12月にかけて京都大学で開催された「Hack U x 京都大学」では、当初からイベントに関わらせて頂き、最終日には審査員を務めさせて頂きました。今回はそのレポートを書きたいと思います。

まず、11月21日に京大の吉田キャンパス内にあるファブリケーション施設(モノ作りのための作業スペース)で初回の説明会が開催されました。学園祭の時期と重なったため、学生の参加人数が心配されましたが、2回目の説明会では会場がほぼ満席になる盛況ぶり。Yahoo! JAPAN 大阪支社の方から、過去の Hack U 事例や参加条件などについて説明がありました。

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初回の説明会、京大デザインスクールと Yahoo! JAPAN による共同開催

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2階まで吹き抜けた開放感のある京大ファブリケーション施設、3D プリンターやレーザーカッターなどを常備する

続いて、12月6日のチュートリアル。Yahoo! JAPAN が提供する各種 WebAPI の説明や、それらの WebAPI を使った実装事例などを同社のエンジニアが解説。参加者の学生も、ここで一気にハッカーモードに切り替わり、熱心に最新技術の使い方について聞き入っていました。

Hack U では、必ずしも Yahoo! JAPAN の WebAPI を使用する必要はありませんが、こうやって現場の開発者から指導を受けながら使い方をマスターできる点は、やはりこのハッカソンの特徴かと思います。ちなみに、最終日の発表会では実際に Yahoo! の地図 API を使っていたチームが幾つかありました。

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WebAPI の基本概念について、参加者の大半は情報学系の学生なので、ここは楽勝

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WebAPI の実装事例として最近同社がリリースしたカーナビアプリを紹介

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実装事例の紹介だけでなく、WebAPI を実際に使ったライブコーディングも披露された

チュートリアルが終わると、各チームは開発期間に突入。与えられた時間は12月6日〜20日までの2週間。ハッカソンとしてはちょうど良い長さの開発期間だと思います。この期間中は、各チームは Yahoo! JAPAN 大阪支社を自由に訪問することができ、WebAPI の使い方などの技術指導をエンジニアから直接受けることができます。

あとで聞いた話では、Yahoo! 地図 API のテストを行うために、Yahoo! JAPAN 大阪支社のビルの周りを相当ウロウロしていたチームもあったとのこと。こういった距離感で現場のエンジニアと一緒にモノ作りができる仕組みは、本当に素晴らしいと思います。

そして迎えた12月20日の発表会。最終的に13チームが残りました。場所は京都リサーチパーク内にある京大デザインスクールのワークスペースにて。こちらの施設は、よりソフトウェアとコラボレーションに寄った場所で、オープンな空間でディスカッションしながらモノ作りが行えるようになっています。

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京都リサーチパーク内にある京大デザインスクール、Hack U x 京都大学もバッチリ宣伝

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京都市内が一望できる京都リサーチパークからの眺め

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大学というよりは、IT ベンチャーのオフィスそのものの雰囲気

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ディスカッションのためのスペースも充実

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五山送り火の時は、ここから全て一望できるという好環境、海外からの留学生にも人気がでそう

発表会の当日は Yahoo! JAPAN 執行役員 CMO (兼 YJキャピタル パートナー) の村上さんも参加され、京大の教授陣らも含めて合計6人で審査させて頂きました。それでは各チームの作品を一気に紹介しましょう。

1チーム目:bowmore (バウモア) 『ノリッパ 〜「ノれる」スリッパ〜』
加速度センサーつきのスリッパでリズムを刻み、エンジニアの運動不足を解消

スリッパに取り付けられた加速度センサーで足の動きを検知、音楽にあわせてビートを刻むことでビジュアライザが反応し、心地よい視覚効果と共にエンジニアが運動不足を解消できるという。実際にハードウェアが動作するところも披露。

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マイコンが組み込まれたセンサーをテープで固定した「ノれる」スリッパ、題して「ノリッパ」

2チーム目:最適化数理分野研究室 『こみゅりょ君』
イベントで「独りぼっち」にならないための相手探しツール

人が集まる場所で話し相手がないという状況を解決するために作られたツール。興味のあるキーワードなどを指定することで、相手を見つけやすくする。チーム名が「最適化数理分野研究室」ということで、さぞ高度なアルゴリズムを使っているのかと思いきや、そうでもないということで会場は爆笑。

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キーワード指定による相手探し以外にも、Twitter API 経由で話題を提供してくれる機能も

3チーム目:くわがた 『やる気ボタン』
モチベーションを上げるためにボタン1発で気合を入れてくれるアプリ

楽器の練習を続けるためにはモチベーションの維持が大変だという課題を解決。スマホのアプリを起動してタップすると、気合を入れてくれる YouTube 動画が再生されるという仕組み。動画はユーザーが自由に設定できるが、デフォルトは松岡修造氏。お約束だ。

完全にネタ系のアプリだが、プログラミングの知識が全く無い2人によって、たった2週間で作られたアプリとしては評価したい。

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ボタン1発で松岡修造氏のアツすぎる応援メッセージが動画で流れる

4チーム目:ELEPHANT 『buta』
GPS と連動した家計簿アプリ

出先でお金を払った際に、その金額と内容だけでなく GPS による位置情報も一緒に記録してくれるアプリ。これにより、いつ、どこで、いくら使ったかが視覚的に分かるという。GPS と連動した家計簿アプリは他にもあるが、場所に応じて入力内容をリコメンド(支援)してくれるアプリはこれまでに無かったとのこと。

アプリの完成度が非常に高く、Yahoo! JAPAN の地図 API も完全に実装済み。今回のアプリでなくとも、簡単なアプリであればサクッと作れてしまいそうなチームとして、審査員からも高い評価を得ていました。

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自分の行動パターンが可視化される新しい家計簿アプリ

5チーム目:白湯(さゆ) 『やさしいクリスマス』
カップルのイチャイチャを見えなくするクリスマス専用 AR メガネ

今回のチームの中で「才能の無駄遣い」という言葉が最もしっくりくるチーム。エプソンのスマートグラス製品 MOVERIO と顔認識技術を組み合わせ、街中でカップルらしき2人組を見つけるとリアルタイムでサンタクロースの画像に差し替える。クリスマスを安全に過ごしたい非リア充向けのソリューションだ。

人が3人並んだ映像のうち、右側の2人をカップルと認識して、リアルタイムにサンタクロースの画像に差し替えるデモが実際に披露された。ちなみに現在のバージョンでは、性別までは判別できないため、男が2人でいても「カップル」と認識されるという。Yahoo! JAPAN の村上さんからは、「ぶっちゃけ、人が多い街中では歩けないのでは?」という、もっともらしい意見が出された。

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内容はともかく実装力は高いチーム、流行りのスマートグラスで挑戦

6チーム目:NAGA’+'MINE 『京都大学学生のための熱意ある講義出席管理システム』
出席した講義ではなく「休んだ」講義を管理して単位を落とさなくするツール

すごい時間割 など、講義の出席を管理するツールはすでに存在するが、これは逆に出席しなかった講義を管理するツール。講義を休みすぎて単位を落としかけたという学生本人による、切実なニーズとソリューションを披露。大学の教授からは「もっと出席を促すような作りにしてはどうか」という意見も。優秀すぎて講義に出て来ない学生が多い(?)、京大ならではの事情か。

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Zealous lEcture-attendance maNagement system for KYoto University student から文字をとって、Zenkyu (全休?) と名付けられた疑惑のツール

7チーム目:NEXT VANGUARD 『ARound グルメ』
AR を使って周囲の飲食店の情報をその場でゲット

ぐるなび API を使用して、近隣の飲食店の住所を入手し、スマホカメラを通じて映し出される現実世界に飲食店の情報を投影するアプリ。仕組みとしては一昔前のセカイカメラと同じだが、飲食店のコチコミ情報なども一緒に表示される点が新しいという。ARToolKit を使うことで、こういった AR (拡張現実) アプリも今では比較的簡単に作れるとのこと。

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現実世界に投影された飲食店の情報をデモで披露

8チーム目:8 x 9 = 72 『VicNi』
自分の代わりに「オナラ」をしてくれる身代わり端末

大昔の日本には、身分のある人がオラナをした瞬間に、身代わりとなってオナラをしてくれる比丘尼(びくに)という職務があった。それを現在のテクノロジーで再現しようという試み。硫黄系化合物を検出するセンサーデバイスを使い、匂いを察知すると無線通信で身代わりとなる人の端末からオナラの音が出るという仕組み。

端末の設定により「連帯責任モード」など、様々なシチュエーションにも対応できるとのこと。まさに日本の現代社会を考慮した設計になっている。ちなみに、ベースの端末は Arduino、無線通信は ZigBee、匂いセンサーは TGS2450ということで、結構本格的な実装になっている。デモでは、2台の端末が色々なモードで動作する様子が披露された。

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現代のテクノロジーで比丘尼(びくに)に蘇らせる野心的なプロジェクト

9チーム目:チームチンパン 『大盛り注意報』
AR マーカーで食べ物の大きさを実物大で表示、食べ過ぎを防ぐアプリ

二郎系ラーメンなど、世の中にはそのサイズを知らずに注文すると後で痛い目にあう食べ物が多々存在する。それを AR マーカーを使うことで、スマホ上に実物大の大きさを表示して、事前に食べ物のボリュームを知ろうというアプリ。

表示される食べ物は、実はちゃんと 3D になっていて、スマホカメラをかざす角度を変えると食べ物の見える位置が変わるようになっている。これには、写真から 3D モデルを作ることができる、Autodesk 社の 123D Catch というアプリを使っているとのこと。AR マーカーなしで、それこそ食券機にカメラをかざすだけで食べ物の大きさが分かれば、かなり便利そう。

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スマホ上で食べ物をスムーズに 3D 表示するためにポリゴン数には気を遣ったとのコメント

10チーム目:Makers 『Telepresence Robot「Branch」』
外出先でスマホを操作して、自分の代わりに荷物を受け取ってくれるロボット

結果から先に言えば、今回のハッカソンで優勝を勝ち取ったチーム。出先で宅配便などが受け取れないときに、自分の代わりにサインをして荷物を受け取ってくれるロボット。何はともあれ、まずは実際にロボットが動作する様子を動画でご覧頂きたい。

スマホからの遠隔操作によってロボットがサインをするところ、「山田」という文字を書いている

荷物を受け取ったあとは自分で移動することもできる

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ロボットのベース部分、ありものの組み合わせっぽいが、ちゃんと動作している

ちなみに、このロボットを作ったコアメンバーの2人はすでに就職先が決まっており、それぞれ大手自動車メーカーの T 社と H 社とのこと。さすが京大生。スマホで操作するところが今風。ソフトウェアとロボティクスの融合という観点でも完成度が高く、審査員ほぼ全員が最優秀賞の票を投じました。

11チーム目:きょうも研究やすみます 『KineticBooklog』
自分が読んだ本を記録するログを作る

文字だけでなく、様々な視覚要素と一緒に自分が読んだ本を記録するアプリ。世の中にはすでに様々なブックログ系アプリが存在するが、そういったものと今後どう差別化するのかがポイントになりそう。

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きょうも研究やすみます、という意味深なチーム名

 12チーム目:ラ王 『ひまじろう』
ヒマな人同士をマッチングさせる出会い系アプリ

大学生が参加するハッカソン、Startup Weekend、ビジネスコンテストで必ずといってよいほど出てくる「ヒマな人同士をマッチングさせる」サービス。今回もやはり出てきたという感じ。これだけ何度も登場するということは、よほどのニーズがあるに違いない。ユーザーである学生に徹底的にヒアリングして、今度こそデファクトスタンダードの地位を獲得して欲しい。

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学生向けのイベントで審査員をさせて頂いて、これまで何度も聞いたアイデア、またもや登場

13チーム目:おにぐんそー 『熱血教師系指導アプリ「それでいいのか君の勉強!」』
統計学を用いて勉強時間の効率化を実現

センター試験と2次試験において、限りある勉強時間をどのような科目に割り振るか、それを統計学の視点で最適化してくれるサービス。チームメンバーには京大思修館 の現役生が2名含まれる。プレゼンがとても上手く、聞いていて納得感があった。

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「いつやるか?今でしょ」ではないが、某予備校の先生かと思うほど納得感のあるプレゼン

以上、13チームの紹介でした。

ハッカソンは、いわゆるビジネスコンテストではないため、事業性の面での判断は行われないのが普通。どちらかと言えば、お祭り的な要素の方が強い。なので、参加者が作りたいモノを作るのが基本。そういったフリーな条件にも関わらず、センサーデバイスやスマートグラス、ロボットを使用した作品が多かったのは、やはり時代の流れでしょうか。

イベント終了後に参加者の学生さんと話す機会がありましたが、就職が決まっている人は、やはり関東が勤務地という人がメインでした。これだけの作品を自力で作れる高い能力があるにも関わらず、京大生が関東の会社のための人材供給源になってしまっている感は正直否めませんでした。せっかく京都で学んだ彼らが、就職のために県外に出てしまう現実をここでも目の当たりに。

自分は、いわゆる学生ベンチャーには若干悲観的で、少なくとも数年は社会人経験を積んで起業家としての視野を広げてからスタートアップすることをお勧めしています。今回の参加者の学生さんの中にも就職後に将来起業を考えている人が数名いましたが、たとえ就職先が関東であっても、いつか京都に戻って起業してもらいたいと思っています。それに必要なものは成功事例とサポート体制。彼らが戻ってくるまでには、絶対に環境を改善させます。

最後に、年末の忙しいなかイベントを運営された京大関係者のみなさま、Yahoo! JAPAN 社員のみなさま、お疲れさまでした。審査員に呼んで頂いて、ありがとうございました。来年も楽しみにしています!

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