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関西で米国式のアクセラレータを立ち上げみて学んだこと

先日、ファウンダー・インスティテュート関西の第一期生が無事に卒業を迎えることができました。

記事:徹底した育成プログラムで次世代の起業家を輩出する:ファウンダーインスティテュート関西第一期デモデイ - The Bridge

学期中にレクチャーして頂いたメンターの方々、資金面などでご協力頂いたスポンサー企業様、これらの方からのお力添えがなければ到底達成できませんでした。この場を借りてお礼を申し上げます。来学期以降も、引き続きよろしくお願いします。

いま思い返すと、関西でのアクセラレータの立ち上げを模索し始めたのは、2013年8月に このスライド資料 を書いた辺りからでした。

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米国 Boulder の VC で TechStars の創業にも深く関与している Brad Feld の著書 Startup Communities を読んだのがそもそもの始まりでしたが、当時は FI のような本格的なアクセラレータではなく、General Assembly のようなコミュニティレベルのワークショップの仕組みを米国から輸入して、起業やスタートアップに関するノウハウを地域のメンバー間で共有するところから始めようと考えていました。

シンガポールに滞在していた時に、TechStars 傘下の JFDI Asia を何度か訪問していたので、アジアでも米国型の本格的なアクセラレータを展開できることは知っていました。一方で、いきなり TechStars のような 1st tier のアクセラレータを日本に、ましてや関西に持ち込んだところで、参加できるレベルの起業家やスタートアップは、残念ながら相当少ないだろうということも事前に分かっていました。

なので、まずは 2nd/3rd tier あたりの仕組みを探してきて、関西に輸入しようというのが当時の目論みでした。関西には Startup Weekend のようなコミュニティレベルの起業イベントと、極少数の VC しか存在しない。まずはこの現実を直視して、その間のギャップを埋めるための仕組みを作れないかと模索していました。

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FI 説明資料からの抜粋(全文は こちら

そんな折に、関西で FI の立ち上げを模索している方々がいると聞いたのが昨年の12月。自分がチームに加わって、立ち上げの活動を開始したのが今年の2月。5月のオープンから逆算すると、たった3ヶ月で運営の体制作り(メンター&スポンサー集め、教材の翻訳、契約書の作成など)と集客をやったことになります。

3ヶ月間の告知期間では100名以上の方々に説明会イベントにお越し頂き、その中から実際に50名の起業家から FI への参加申し込みがありました。春学期は厳選された20名の起業家で開始し、その結果、5名の起業家が先日卒業を迎えました。

振り返ると、スピードとコミットメントが重要だったのではないかと思っています。スタートアップを育成する組織である以上、スタートアップよりも多い運動量と速いスピードで活動しなければ、スタートアップの育成なんて出来ないのではないか、というのが自身の結論です。

ふざけた言い方かもしれませんが、自分は2月に FI の立ち上げが決まってからは、ドラゴンボールで言うところの 界王拳 をずっとオンにした状態だったように思います。おそらく普段の 200% 〜 300% くらいのエネルギーを注ぎ込んでいました。

関西でアクセラレータを立ち上げる経験を通じて学んだことは、米国式にしろ、日本式にしろ、あらゆる組織は「全身全霊」で取り組まなければ立ち上がらないし、結果を出せない、というごく当たり前のことでした。これは、今まで自分が立ち上げてきたスタートアップにも全く通じるところがあります。

全身全霊で取り組んでいると、どこからか支援してくれる仲間が現れ、さらにその仲間が別の仲間を呼んでくるという、人間関係のポジティブなループが生まれてきます。自分は今回、幸いにしてこのループの中に入れたような気がします。

手を抜かずに全力でやっていれば、その熱量は必ず他人に伝播するということです。人によっては、これを「ホットスポット」と表現される方もいます。スタートアップを含むあらゆる組織やコミュニティにおいて、このホットスポットの有無が、実は成功の大きな要因の1つだと思っています。

逆に、組織の立ち上げメンバーの中にフルコミットできない人や、投入する時間と費用対効果を最初から天秤にかけているような人がいれば、即刻チームから外した方が良いと思います。そのような考え方を持つ人は、短期間で組織を立ち上げるチームのメンバーにはふさわしくありません。残念ながら、経験豊かなビジネスマンやスマートな人材ほど、こういった傾向が強く見られます。

そのような人がメンバーにいると、ホットスポットを作るどころの話ではなく、チーム全体が常に後ろ向きなディスカッションを繰り返す状態に陥ります。なので、どれだけ経験豊富で即戦力な人材であっても、こういった人は絶対にチームに加えるべきではありません。

関西の FI から第一期生を輩出して、それなりの結果は残せましたが、当然ながら課題も見つかりました。それは、関西にあったスキームの模索です。個人的な考えではありますが、関西ではいわゆる 100% IT 銘柄のスタートアップの立ち上げは、土地としてあまり向いていないと思っています。

もちろん、関西にはすでに上場している企業も含めて素晴らしい IT 企業やベンチャーがたくさんありますが、現実問題として、東京や東南アジアと関西の IT 人材の差は年々大きくなるばかりです。自分は、関西が本来強みとする分野で勝負すべきと常々考えていて、これを FI のセッションでも繰り返し述べてきました。

それは、ハードウェアを含むモノ作り、食・観光・文化、そして大学などの教育機関との連携。この3点です。

それぞれの強みを説明すると長くなるので、これはまた別の機会に譲るとして、個人的には最後の教育機関との連携が、最も大きなインパクトを出せると考えています。今回の春学期でも、現役の京大生と社会人が FI で出会ってチームが産まれ、一緒にスタートアップするという事例を1つ作ることが出来ましたが、こういった事例を半ば意図的に今後は産み出したいと思っています。

大学側は必ずしも学生である必要はないです。教授や研究者であってもよく、さらに言えば、スタートアップでは取れないような大きなリスクを取って R&D を経たユニークな技術や知財を所有している人物、もしくはチームが望ましいです。そういったアカデミアの人材と、起業家精神を持つ外部の社会人が FI で出会ってスタートアップを形成、そして実際に起業するという流れが理想型です。

現在の VC の仕事をさせて頂くようになってから、大学の研究機関に出入りすることが多くなり、いわゆる大学内に眠るシーズ(事業のネタ、先進的な技術、知財など)を拝見させて頂く機会が徐々に増えてきました。一方で、これらを世の中に出すためには、アカデミア単体の努力だけでは難しく、外部の人材や知恵を入れて、それぞれのビジネスにあった会社組織をゼロから作らなければ、せっかくのシーズも眠ったままになるケースが多いことも見えてきました。

さらに、アカデミアに関連するところでは学生発ベンチャーの視野の狭さ、という問題があります。学生主体のビジネスプランコンテンストやピッチコンテストを聞いていても、そのほとんどがソーシャル系(何かを共有する系)、マッチング系(出会い系含む)、ビジネスとして成立しなさそうな超ニッチ系のいずれかに分類されます。

これは無理もなく、社会に出ていない学生だけのチームでは、世の中の大きな問題や課題に気づけていない、もしくはそれが問題や課題であると実感できないので、おのずと自分の身近な(小さな)問題に対する解決というところに収まりがちです。ここに、いわゆる「大人」が参画することで、Facebook のザッカバーグのように学生仲間を遥かに超えた大きなスケールに挑む事ができるのではないかと思っています。

そういったアカデミア周辺の課題に対する解決策の1つとして、FI 関西を積極的に活用できればと考えています。もちろん、教育機関との連携以外でも、先の2つの強みにあたる、モノ作りと食・観光・文化に関するスタートアップは、FI 関西でも特に注力していきます。

さて、最後に告知です。FI 関西では年2回の学期開催を予定しています。関西での FI 運営に携わってみたいと思われる方は、ぜひこちらの ディレクター募集の記事 をご覧ください。さらに、学生インターンも 引き続き募集 しています。学生インターンは、現在京大、立命館、阪大、神戸大、神戸外大などの関西の主要大学から来て頂いています。

組織を立ち上げるというフェーズはひとまず終わったので、あとはひたすら改善を繰り返しながら、一人でも多くの優れた起業家の輩出に注力するというフェーズに今後は移行します。大学との連携といった作業も今後は想定されます。そして、世の中にインパクトを与えて、かつ沢山の雇用を創出する、いわゆるメガベンチャーを最低1社、数年以内に関西から輩出します。舞台はもちろん世界です。関西でもなければ、日本でもないです。

我こそはと思った方は、ぜひご連絡ください。

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