Welcome_RayV_Yahoo

今の時代における P2P の役割り

この分野は少しだけ自分の専門なので、軽く考察したいと思います。

米Yahoo、イスラエルのビデオ配信スタートアップのRayVを買収 - THE BRIDGE

2000年後半、動画配信系のスタートアップを自分でやっていたころは、動画コンテンツの配信コストが今よりも随分と高く、自社で数ギガの専用線をデータセンターに引いて、そこから各視聴者の端末にコンテンツを直接配信するということをやっていました。

そんな中、配信コストを大幅に削減することに成功したというタレコミで登場したのが、Skype の創業者である Niklas Zennström と Janus Friis によって作られた P2P 型の動画配信サービス Joost だったわけですが、結果的に言うと Joost はうまく行きませんでした。

Joost がうまく行かなかった理由は色々と考えられますが、大きなところは、1)専用クライアントアプリをダウンロードする必要があった。2)視聴者が見たいと思うコンテンツを確保できなかった。3)P2P のメリットが活かされなかった。という3点だと自分では分析しています。

1)については、その後ウェブベースに移行して専用アプリのダウンロードは不要になったものの、それにより P2P のメリットが完全になくなり、その後も状況も改善されることはなく、サービスは 2012 年にシャットダウンされました。

今回、Yahoo が買収した RayV は、細かい技術は異なるものの基本的には Joost と同じ P2P 型の動画配信プラットフォームを提供するスタートアップです。

なぜ、Yahoo が P2P 型の動画配信プラットフォームを買収するのかという話ですが、それは一重に先にアナウンスされたライブ動画配信サービスの Live Nation との協業によるもので、ここに RayV の技術を投入することで大きなメリットが得られるという公算ではないでしょうか。(事実、海外のメディアでは既にそのように今回の M&A の目的を定義している様子ですが。)

P2P 型の動画配信で最大限のメリットを得るためには、一度に大勢の視聴者が「同じ」コンテンツを視聴する必要があります。

P2P は、その仕組み上、動画コンテンツを配信サーバーからではなく、ネットワーク上の距離で近いところにある他の視聴者の端末から動画コンテンツを取得します。要するに BitTorrent などの P2P 型ファイル共有と同じ仕組みです。

なので、ある大物アーティストのライブ映像を100万人の視聴者が同時に視聴した場合、配信サーバーから送出されるオリジナルの動画コンテンツのデータ量はごくわずかで、残りは視聴者の端末(PC、スマホなど)同士で勝手に配信が行われます。

動画を配信する事業者側からすれば、P2P 技術を採用することで配信コストが低く抑えられるうえに、配信サーバーからネットワーク上で距離の遠いところに視聴者が居ても、その視聴者の近くに同じ動画コンテンツを視聴しているユーザーがいれば、少なくともそのエリア近辺では遅延なくライブ動画を配信できるという、一石二鳥のようなソリューションが手に入るわけです。

ただし、これを実現するためには、上に書いたように、一度に大勢の視聴者が「同じ」コンテンツを視聴する必要があるため、YouTube のようなストック型で、かつロングテールの動画配信サービスにはそもそも向きません。なぜなら、YouTube のようなサービスでは、100万人が一度に同じ動画コンテンツを同じ時間帯に視聴するというシチュエーションは、ほぼ発生しないためです。

なので、今回の Yahoo (Live Nation) と RayV のような、ライブ映像に限定した P2P 技術の採用は非常に賢い選択だと言えます。

前置きが長くなりましたが、ここからが今回の投稿の本題です。

一説では、2020年にはインターネットに繋がる端末の数は500億台を超えると試算されていますが、このような膨大な数の端末がネットに接続されて、端末同士でデータのやりとりを行うようになると、今で言う「ビッグデータ」の比ではない天文学的なデータ量が、毎日ネット上を飛び交うようになります。

そんな時代になると、全てのデータをクラウド(サーバー)で一旦受け取って、然るべき処理やフィルタリングを行った後に、再度別の端末に配信するという今までの仕組みは引き続き使わるものの、一方で、一部では配信コストや遅延の観点から P2P 技術が再度見直されるのではないかと考えています。

今回の RayV は、動画コンテンツに限った話ですが、今後は IoT に舞台を移して、ヘルスケアや個人情報などのセンシティブなデータに特化したセキュアな P2P、Bluetooth / NFC / Internet など通信手段を選ばない P2P、IoT に使われるロープロファイルのハードウェアで効率良く動作する P2P など、様々なバリエーションが出てくると予想され、この分野でのさらなるビジネスチャンスがあるとも考えています。

世の中、IoT 端末、IoT ガジェット、なんちゃら向け IoT 製品と、エンドユーザー向けのプロダクトばかりに注目が行きがちですが、ゴールドラッシュで儲けた人は、結局のところ「つるはし」を作って売った人だという格言がある通り、来るべく IoT 時代に向けて、必要なインフラを作って売る商売が、実が一番面白いのではないかと最近つくづく思う次第です。

というわけで、ハードウェア大国に住む関西の起業家&スタートアップのみなさん、頑張りましょう!(笑)

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