エンジニアのためのグロースハッキング:その理由

前回のブログ でグロースハッキングの入門編について書きましたが、さらに突っ込んだ話に入る前に、そもそもなぜこのトピックでブログを書こうと思ったのか、その理由について軽く触れておきたいと思います。

スタートアップへの投資という仕事に携わるようになってから、まだまだ日が浅い自分ではあるものの、最近気づいたことがあります。

それは、スタートアップにあれこれ指示を出す VC・アクセラレータ達が本当に「分かっていない」ということです。VC としてのキャリアが少ない自分が言うのも若干気が引けますが、それでも彼らの分かってないレベルはなかなかのものです。

その中でも「グロースハッキング」は最近のバズワードであるということも手伝ってか、投資家とスタートアップの間で頻繁に交わされるトピックの1つになってます。

前回のブログで書いた通り、グロースハッキングは本来マーケターとプログラマの両方のスキルがない限り実行不可能なタスクで、ましてそれを他人に対して教える(=指示する)ということは、相当な実務経験がないと出来ません。

投資経験のない人から投資のノウハウを学びたいと思わないのと同じく、コードが書けない人からプログラミングを学びたいとも思いません。

なのにグロースハッキングの経験がない人がなぜか至る所でその手法をスタートアップに伝授しようとしている現状だったりします。そしてそれは「優秀なグロースハッカーを確保するのに幾らかかる?」とか、「XXX 社が Slideshare にアップしたグロースハキングの資料は見たか?」という単純な話では決してありません。

グロースハッキングはマーケティングな観点で見れば定番タスクも多いですが、プロダクト毎にカスタマイズされるエンジニアリング的な部分も相当あります。500 Startups のように専門のグロースハッキングチームを設置しているならまだしも、そうでないアクセラレータや VC が、この分野を語れるスキルと経験があるのか正直なところ疑わしいというのが自分の考えです。

ちょうど先日、上杉周作さんのブログ を読んで同じことを思ったのですが、競争の激しいシリコンバレーにおいてポール・グレアムが運営する(運営していた) Y Combinator が最も成功しているのは、ポール自身が優れたプログラマーで、かつ文才に優れており、YC に参加するスタートアップに「彼らの言葉で」アドバイスできていたからこそだと自分も思っています。

自分がスタートアップをやっていたから分かるのですが、そもそも anti establishment(反骨精神)の強い IT 系の起業家は、グレーヘアーな人達が集まるところに行きたがりませんし、たとえそれが資金調達のためであっても彼らと話をしたいと思ってません。

そもそも2つの人種には大きな隔たりがあって、資金調達の選択肢が増えつつある昨今においては、スタートアップが寄って来ない(付加価値を与えられない、意思決定が遅いなどの)VC・アクセラレータにはなかなか厳しい時代がやって来ようとしています。

その中において、自身のエッセイで List 言語やエンジニアリング用語を連発するポール・グレアムは、シリコンバレーの中においてもやはり特異な存在で、だからこそ世界中の天才ハッカーや disruptive なスタートアップ創業者が YC の門を叩いているのだと考えています。

アメリカ西海岸でコンピューターサイエンスの学位を取得し、IT 系スタートアップ数社を CTO として起業し、最近になって投資活動を始めた自分としては、それこそポール・グレアムのようにエンジニアに対して「刺さる」人物になることこそが、自分自身の差別化という意味で最も効果的なのではないかと、最近になってようやく気づきました。

言い換えれば、日本でポール・グレアムにあたる人物はまだいないので、そのポジションを目指せばユニークな存在になれるのではないかと思った次第です。

グローソハッキングというありきたりなトピックではあるものの、タイトルに「エンジニアのための」と銘打っているのもそのためで、自分としては今後そっちの方向で差別化を図っていきたいと思っています。

それでは、また次回のブログで。

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