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それでもシリコンバレーを目指すわけ

ソチオリンピックが近づいているということで、テレビで出場選手の紹介やインタビュー映像をよく見かける今日ころ頃。

そん中、こんなコメントをスノーボードの竹内智香さんが言っていたので、今回はこれについて書いてみたいと思います。

「スイスから五輪に出場していた頃は、(日本のファンのひとたちが)心のどこかで自分の失敗を願っているように感じられることがあった。」

「五輪で本当に勝ちたいなら、応援してくれる周りの人たちに協力してもらうことが大切だ。」

日本での恵まれない環境に嫌気がさして、スノーボード大国のスイスに移住したという竹内さんですが、5年に渡る現地での生活にも関わらず、2010年のバンクーバー五輪は残念ながら13位。なかなか結果が伴わない日々が続いていたようです。

そんな竹内さんが日本に帰国したのが2012年。スイスの恵まれた環境とはうって変わって、日本ではゲレンデでのトレーニング回数もかなり減ったそうですが、日本人としてサポートしてくれる周囲からの熱意と協力が全然違うようで、今回のソチでは万全の体制で出場できるとコメントされていました。

この話を聞いた瞬間、シリコンバレーを目指す日本の起業家のことが頭をよぎりました。

自分はシリコンバレーを目指すこと自体は全く悪いことではないと思ってます。向こうで活躍されている起業家の方々もたくさん知ってますし、今でも彼らを応援・支援させて頂いています。西海岸で IT を学んだ者として、アメリカとシリコンバレーの優位性は身をもって十分に理解しているつもりです。

ただし、どうしてもいまだに1つだけひっかかるのが、結局のところ、なんぼアメリカで会社を登記して、シリコンバレーで成功したところで、豊かになるのはアメリカであって、現地で雇用された社員であって、YC や 500 や現地の VC である点です。つまり、シリコンバレーを目指したところで、自分の両親・兄弟・親戚・地元の友達の暮らしは「全く変わらない」という点です。

当然、これには異論・反論があると思います。

例えば、シリコンバレー屈指の VC である DCM で10年活躍された伊佐山元さんなどは、シリコンバレーでの経験をもって日本に帰国され、現在では WiL という300億円規模のファンドを扱う VC を立ち上げられています。伊佐山さんのように、最前線のノウハウと経験を持ち帰って、日本を元気にしたいと活動されている方がいるのも事実です。

しかし一方で、シリコンバレーを安易に目指す起業家が未だに多いのも事実です。国内のインキュベータ&アクセラレータが若い起業家をはやし立てて、シリコンバレーに半ば無理矢理送り込んだ一昔前の時期よりは、起業家の意識も今はだいぶ変わっていますが、それでもやはり資金調達や人材確保の面で、日本よりもシリコンバレーを起業の地として希望する起業家は多いです。これは日本に限った話ではありません。

地方で創業したスタートアップがある程度のステージに達すると、あっという間に東京へ本社移転してしまう現在の日本のスタートアップシーンにも同じことが言えるかと思います。要するに、効率重視の考え方です。スタートアップの生存率と成長速度を上げるという点においては、東京への移転は正しい選択かもしれませんが、どうもその先にある日本の姿に明るいものを見出せません。

シリコンバレーに渡って成功した日本のスタートアップがあるとすれば、ほとんどの日本人からは応援・賞賛されるでしょう。スノーボードの竹内さんのように別の国からオリンピックに出場したことで「心のどこかで自分の失敗を願っているように感じられる」と思うことは、少なくとも IT 業界においてはないと思います。

日の丸を背負って、メダルをとったら君が代が流れるオリンピックと違い、スタートアップはあくまで資本主義に則った会社組織の話なので、同じ物差しで計ることはできないかもしれません。さらに、スタートアップも大企業も今ではグローバル化は当たり前の話で、そもそも企業の物理的場所や国籍などを気にする必要があるのは、法律と税務面だけの話になりつつあるのも一部正論です。

しかし、同じ夢を実現するなら、やはり自分が生まれた土地や場所にこだわりを持って、自分を育ててくれた人達やコミュニティから支援・応援されながらやった方が、背負い込む責任は増えるかもしれませんが、その方が人間甲斐があるのではないでしょうか。

それでもシリコンバレーを目指す理由、それでも東京を目指す理由について、そろそろここら辺で一度立ち返って、長期的な視点で考える起業家やスタートアップが多く出てきて欲しいと思いつつ。

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