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グーグル、フェイスブックが日本で生まれないもう1つの理由

日経ビジネスにちょっと興味深い記事が出ていたので、今回はこれについて書いてみたいと思います。

日本のITエンジニアの地位はなぜ低いのか ー グーグル、フェイスブックが日本で生まれないもう1つの理由

日本、というかシリコンバレー以外のエリアで IT エンジニアの地位が低い理由として、システムインテグレーターという下請けに徹した業種の存在や、IT エンジニアを採用する側の会社が、実際のエンジニアリングスキルではなく、いわゆる「口のうまい人」を採用してしまっていることなどが挙げられていますが、自分の個人的な見方では、採用される側の IT エンジニアも採用する側の会社もまだまだ改善が必要ではないかと思っています。

ずいぶん前の話になりますが、海外の IT ベンチャー企業の採用基準に興味があり、実際に IT エンジニアとして試験を受けてみたことがあります。1つはドイツ・ベルリンに拠点を置く音楽ソフトメーカー Ableton、もう1つはアメリカ・サンフランシスコに拠点を置く写真共有サービスの Instagram です。

両方とも試験は全て英語。これは当たり前ですね。面白かったのは、両社とも実際のプロダクトに直結した試験内容だったこと。

Ableton の方は、Django (Python) + SQLite で簡単なウェブアプリを開発して、そのソースコード一式にコメントを添えて提出(納品)しました。ウェブアプリは、同社のコミュニティサイトに関連したもので、ユーザー登録からトランザクショナルメール(ユーザーのアクションをトリガーにして送信されるメール)まで、実装すべき機能がかなり具体的に決められており、UI の素材も同社のウェブサイトから引っ張ってきて Photoshop で加工して、自分のウェブアプリに組み込んで使いました。

ちなみに MySQL ではなく SQLite にした理由は、ソースコードを受け取った人が環境構築の手間をかけずに即実行できるようにするためです。試験は無事パスすることはできましたが、まさか本当にドイツに行くわけにはいかないので、辞退させて頂きました。Ableton の人事の方、すいません。

Instagram の方は、確か Hacker News に募集記事が掲載されて、そっち系のハッカー達がこぞって応募した試験だったと記憶してます。シュレッダーで縦方向にバラバラにされた写真の断片を、プログラムによって元の写真に復元するというお題です。こちらも Python を使って一晩で書き上げて Instagram に提出(納品)しました。

ちなみに、この試験をクリアするには単純にプログラムが書けるだけの IT エンジニアでは、ちょいと敷居が高く、いわゆる画像認識・画像解析の知識と経験が必要になります。写真の「切り目」を何かしらのロジックで数値化して、断片のエッジ同士を比較するという計算式を作らねばならず、さらに難しいのが、復元された写真の最も左端と右端に置かれるべき断片の判定です。つまり、それ以上左側もしくは右側に断片が存在しない、という条件をプログラムで判断する必要があります。

Instagram の方は、さすがにシリコンバレーや世界中の IT エンジニアが一斉に応募したこともあってか、試験自体はパスしたものの too many applicants (応募者多数)とのことで、Instagram 側から sorry メールが来たことを覚えています。

もうお気づきかと思いますが、世界のイケてる IT ベンチャー企業と日本の普通の企業では、IT エンジニアの採用の仕方が全く異なるわけです。実際に試験を受けてみて感じたのが、採用される側の IT エンジニアも出されたお題の内容や技術レベルを見ることで、特定分野におけるその会社の競争力を一部垣間みることができる、ということです。

逆に言えば、ネットで検索すればすぐに答えが出てくるようなレベルのお題、もしくはコンプライアンスなどという建前のもと、実際の業務に関係なさそうな超一般的な内容のお題を出しているような会社では、本当にその分野で秀でたスキルを持つ IT エンジニアは、残念ながら集まらないのではないでしょうか。

IT エンジニアの方も、年俸や勤務地、世間一般から見た会社のイメージ、などという基準で会社を選ぶのではなく、自分のスキルや経験が最大限活かせる会社を「見抜く能力」を身につけない限り、何回転職して年俸がそれなりに上がったとしても、会社に対して不平不満を言い続ける残念な IT エンジニアから脱却できないでしょう。ミスマッチが起きているのは、採用された IT エンジニアにも原因があると思うわけです。

「日本のITエンジニアの地位はなぜ低いのか」という問いに対する回答は、個人的にはもう1つあるのですが、それは IT エンジニアの起業意識の低さです。日本の IT エンジニアには、基本的に会社に採用される(=会社に使われる)前提で物事を考える人が多く、そこまで会社に対して文句を言うなら、理想郷となる会社をなぜ自分で作らないのか、と思ってしまうわけです。

Facebook, Google, その他の IT ベンチャー企業に優秀なエンジニアが集まるのは、これらの企業が “Companies built by engineers for engineers.” (エンジニアによってエンジニアのために作られた会社)であるからです。

この問題をより大きなスケールで解決するために、シリコンバレー発の起業家育成プログラムであるファウンダー・インスティテュートを京都・関西に持ち込むという取り組みを去年からやらせて頂いています。このプログラムにエンジニアの方が参加すれば、顧客開拓・収益モデル構築・法務・知財・資金調達など、いわゆるスタートアップを立ち上げて運営するノウハウを体系的に学ぶことができるため、エンジニアの理想郷を作るために「起業する」という選択肢を高い確率で成功させることが可能になります。

Founder Institute については、まもなく正式アナウンスができる予定ですので、また追ってこのブログで趣旨や意図を説明したいと思っています。

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