ハードウェアスタートアップやるなら京都と関西

前置きをさせて頂くと、この記事にはバイアスがかかっています。

京都で自身のスタートアップを運営しながら、地元のスタートアップを支援する活動を行っている関係上、物事の良い面だけを強調している可能性がありますので、それを踏まえて読んで頂ければと。

前回の投稿でも少し触れた Nest ですが、同社の CEO で初代 iPod の発案者でもある Tony Fadell の Kevin Rose によるインタビューについて少し書きたいと思います。インタビューの中で、Kickstarter に代表されるクラウドファンディングで数々のハードウェアプロジェクトが成功をおさめている現状について、Tony はこのように話しています。

ほとんどのハードウェアプロジェクトの問題は、製品がバージョン3になるまで利益を生まないことだ。最初2つのバージョンで色々と試行錯誤して、運が良ければなんとかブレークイーブン。それでも、それぞれのバージョンに2億円から5億円を投資しているはずだ。なので、実際に利益が出始めるまでには7億円から10億円もの資金が必要になる。

(Kickstarter から)バージョン2やバージョン3に達した製品を多くみかけることはないだろう。自分だったらバージョン1を一回だけやって、それでおしまい。自分がどだれだけクレイジーなところに突っ込もうとしているかを知ることになるからね。

自分も過去に自社ブランドのハードウェアを OEM 生産して販売するスタートアップを一度やったことがあるので、多いに理解できる部分があります。つまることろ、たとえファブレス経営であっても自社だけでハードウェアを設計・販売・保守するには相当な体力が要るという話ですね。

一方で「ひとり家電メーカー」として知られる Bsize の八木さんのように、製造部分をアウトソースすることで、個人としてハードウェアビジネスをスタートした方がいらっしゃるのも事実です。ただし、Nest の場合、その洗練されたデザインのハードウェアもさることながら、同社の真の強みはインターネット経由で各家庭からアップロードされる膨大なデータとその解析技術であって、Google が買収したのもまさにその部分の技術資産と人材です。

いわゆるビッグデータをコアとする場合、相当な数のハードウェアを普及させる必要があるため、やはりかなりの資金が必要になります。たとえハードウェアそのもの安価に製造できたとしても、普通のハードウェアメーカーという存在だけでは、Google のような大手 IT 企業の買収ターゲットにはなりにくいでしょう。それこそ、Motorola Mobility のように大量の特許と知財を持っているとか、SCHAFT のように高度なロボット制御技術を持っているとか、そういう価値が必要になってきます。

では、ハードウェアスタートアップで大規模な資金調達を行わずにマス市場を狙うことは不可能であるかと言えば、自分はノーだと考えています。そして、それに対する回答の1つが京都と関西にあると思っています。

ご存知の通り、いま日本のメーカーはグローバル市場で苦戦を強いられています。理由は各社様々ですが、クルマのような既得権益にかなり守られたハードウェア製品であっても今後 IT 化が進むことは明白で、Google のような IT 企業が Android や超大規模なコンピューティングリソースを武器にハードウェア市場にますます浸食することが確実視されています。これは家電製品や企業で使われるオフィス製品であっても同じだと思っています。

このような変化を受けて、日本国内のメーカーが危機感を募らせていないかと言えば、少なくとも自分が話をさせて頂く若手の現場の方々は、ちゃんと危機感を持っているように感じられます。「なにかせえへんと、うちの会社ほんまにヤバイぞ」と。

なのに、メーカーがなぜアクションがとれないかと言えば、それはやはり社内に人材がいないから、という話になります。「餅は餅屋」ではないですが、本来であれば IT を最も得意とする IT スタートアップにソフトウェア&インフラ開発を任せれば、かなりスピーディに解決できる問題も、なぜか日本国内ではそのようなコラボレーション事例をほとんど耳にしません。自分の大学の後輩でもある伊地知くんが経営している Creww は、そういう意味で日本の大手企業のマインドセットにブレクスルーを起こし得るスタートアップとして、応援したくなります。

京都には、京セラ・ローム・オムロン・村田製作所・日本電産などグローバルな舞台で活動している大手企業や、モノ作りに長けた中小零細企業がたくさんあります。すでに水面下では、鋭い洞察力をもった少数の IT 起業家が京都に移り住んで、こういったメーカーと組む形で IT x ハードウェアの分野で革命を起こそうと動き始めています。

いずれ、そのような動きはサプライズとして世の中にデビューすることになるかと思いますが、起業家のみなさんには、ぜひそれを待たずに、自ら革命を起こす側としてどんどん京都と関西に乗り込んできて頂ければと願っています。微力ではありますが、自分も力になれると思います。

京都のハードウェアメーカーが持つノウハウ・製造施設・流通・保守体制をお互いにメリットがある形で利用することができれば、Tony が言うような膨大な資金を用意せずとも、IT 化されたハードウェアで世界と戦えます。

「ハードウェアスタートアップやるなら京都と関西」と、言われるのが当たり前になる日はそう遠くないです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加